伝統曲が4曲収録されていて、いずれもリズミックでキレのよい軽快なMilkaynguらしい演奏を聞くことができます。特にDjatpangarri Gapuは入門曲としておすすめ。
■ライナーの翻訳と解説
全豪トップチャートに常に顔を出す有名な北東アーネム・ランドのアボリジナル・ロック・グループ「Yothu Yindi」の2ndアルバム。全16曲中、完全なトラディショナルの曲を4曲収録しており、現在Djapuクラン(Dhuwa半族)の若きリーダーであるMilkayngu Munungurr(Milkay)によるイダキの伴奏に、Gumatjクラン(Yirritja半族)とRirratjinguクラン(Dhuwa半族)の歌が歌われている。その他のトラックにもYidaki(ディジュリドゥ)がロック・チューンに合せて演奏されている。
『SONGS FROM THE NORTHERN TERRITORY』(5CD
1962-63/1996 : AIATSIS)に収録されたり、ヨス・インディ基金からリリースされている『Contemporary
Master Series vol. 1 : GOBURU』(CD 2001 : YYF)などで知られるGumatjクランのリーダーであるソングマンGalarrwuy
Yunupingu、Rirratjinguクランの曲はWitiyana Marikaによってそれぞれ歌われており、どれも、エネルギッシュでタイトなリズムで非常に聞き易い。
北東アーネム・ランドのイダキの演奏スタイルを目指すノン・アボリジナルのプレーヤーに聞くと、必ず「あこがれるイダキ演奏家」の一人としてあげられるMilkayのタイトでリズミックな演奏が聞けるのがたまらない。
下記には音の響きから感じた聴感上の主観的な感想と、各曲に特徴的な音楽的構造や、楽器の特徴などのレビューが掲載されています。レビューの部分で書かれている内容はライナーとは全く関係がありません。また、レビュー部分でなされている言及は推測の域を超えるものではないという事をご了承下さい。
■ライナーの翻訳と解説
1. Gapu|6. Dhum Dhum|10.
Yinydjapana|14. Beyarrmak
※曲名をクリックするとその曲の解説へ飛びます。
1. Gapu
Gumatjクラン(Yirritja半族)の海水についての歌。最初にソングマンであるGalarrwuy Yunupingu(Gumatjクランのリーダー)がイダキのリズムを「Ditu Dhereiro-」と歌っており、ブレイクの所以外は、シンプルにこの3連のリズムをイダキが演奏しているため、最初に練習するには最適の曲です。シンコペーションして「Daru Da-ru Daru Da-ru」といった激しいコールが入ってからブレイクに入る点など、いわゆるジャッパンガリ的な基本構成になっており、ヨォルングの曲の構成感覚を理解するのによい。また曲のテンポがゆったりしているので、舌の動きを知るにも良いという初心者の人にはとっくみやすいトラックだ。
荘重な雰囲気の漂う歌にタイトに伴奏をしているMilkayのクールな演奏、特にブレイク部分のコールとトゥーツ(ホーン・サウンド)がすばらしい。
6. Dhum Dhum
Rirratjinguクラン(Dhuwa半族)のBush Wallabyの曲。ヨォルングの儀式のためにワラビーがブッシュの中で神聖なる場所を準備しているというストーリーをRirratjinguクランのソングマンWitiyana
Marikaが歌っている。ドローンの演奏では、すさまじくスピーディな舌の動きとともに、トゥーツが連続して、軽快に小刻みに入っているこのアルバムの中でも最も激しいトラックである。軽やかに舌でリズムをきざむMilkayの演奏スタイルの真骨頂を聞く事ができる。
10. Yinydjapana
Rirratji\uクラン(Dhuwa半族)のDholphineソング。Witiyana Marikaの歌にMilkayのイダキ。イントロ部分のイダキの演奏は、リズムを複雑に演奏しており、かなりクール。中盤で力強いコールでブレイクを指し示したり、そのしばらく後にドローンとトゥーツをスムーズに切り返したリズムは圧巻である。後半部分で聞かれるMilkayのトゥーツの軽快さと音の美しさを聞いて欲しい1曲です。
14. Beyarrmak
GumatjクランのComicについての歌。第二次世界大戦の時に、Goveに駐留していた空軍総員によってはじめて演じられたコメディの舞台を見た時について歌われている。Galarrwuyの歌にMilkayのイダキ。おそらく最も有名なジャッパンガリだと思われる「Djatpangarri
Comic」を演奏している。トゥーツが一度も使われないタイプの曲で、ドローンのリズムの割りに注目したい。インプロで基本のリズムから離れ過ぎないように様々なリズムを演奏しているのがわかる。またこの曲でもっとも渋い部分は、ブレイクを抜けた後のクラップスティックが入らない部分で、ブレイクからの一連の流れは、この曲特有で『TRIBAL
MUSIC OF AUSTRALIA』(CD-R from LP 1949 : Folkways)などにも同様のものがジャッパンガリとして収録されている。
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