ソングマン、イダキ奏者、ダンサー全てがGalpuクランのメンバーで録音された内陸の道「Diltjimurru」ソング・サイクル。Djaluのドイツ録音。
■G畦pu'クランの人々の儀式的な歌と踊りについて(Guan Y. Lim著)
■Rripangu Yirdakiのメンバー
■ライナーの翻訳
■DJALU GURRUWIWI ディスコグラフィー
稲妻を意味するDjaluのエンタープライズ『Rripangu Yirdaki』が2002年にドイツ・ツアーをした際にスタジオ録音されたCDで、全べての曲にソングマン、クラップスティック、イダキ、ダンサーのかけ声が入っており、今まで発売されたDjaluの音源の中でも最も臨場感溢れる内容になっている。
全ての曲がメドレーで1曲となっているため、曲をスキップできないという点と、Djalu、Larry、Sylvesterの3人のイダキ奏者それぞれがどの曲で演奏しているかがライナーノーツに掲載されていないという点のみ残念だが、実際聞いてみるとその違いは明確だし、何よりもファミリー・メンバーでのびのびと録音している感じに心奪われる。
歌、イダキ、ダンスという北東アーネム・ランドのBunggul(Ceremony:儀式)形式でのすばらしいサウンド・クオリティの録音。また、今後このような豪華な顔ぶれでツアーをすることは無いのではないかと思える程のGalpu'クランの面々である。
イダキを右チャンネル、ボーカルを左チャンネルに振ってるので自分でバランスを調製して聞くことができるという点がイダキの演奏を学ぶ人にとってはたまらない。
また当サイトのために、G畦pu'クランの文化に精通しているGuan Lim氏から特別に『G畦pu'クランの人々の儀式的な歌と踊りについて』というこのCDのための解説を提供していただいた。アボリジナル文化を日本で知ってもらうためという事で無償で文章を提供していただいたGuan氏にここで謝辞を送りたい。
■G畦pu'クランの人々の儀式的な歌と踊りについて(Guan Y. Lim著)
伝統的なG畦pu'の人々の「Bunggul」は、「Bilma(クラップスティック)」と「Yirdaki(ディジュリドゥ)」の伴奏を伴った歌からなる。ダンスの動きはクラップスティックが定めたペースで、歌のリズムとビートに合せて振り付けされている。
「Bunggul」の演奏では、男性のダンスの動きは、女性のそれとは異なっている。それぞれの歌ごとに、特有な腕と足の特別な動きが男女共にあり、ダンサー個人はその歌に適切な動きのレパートリーから自分が使う動きを選んで踊りを踊るのである。
少なくとも一人のシンガーが「Bunggul」の演奏には必要で、儀式の場合には、たいていそれぞれの手にクラップスティックを持った3、4人のシンガーと一人のイダキ奏者がいる。
シンガーの歌詞は、歌われるテーマから引き出され、歌われる場所と先祖の神々の行動が含まれている。この心像から、大地を旅してきた先祖の神々の振るまいと、その土地に関して特有な言葉が歌われる。しかしながら、それぞれのシンガーは、自分の歌う歌詞について同じ歌を歌う他のシンガーと同じである必要がないという事は、注目すべき点だろう。対照的に、それぞれの歌のビート、ペース、クラップスティックのパターン、そしてヴォーカルのメロディは変わることは無い。
葬式の儀式やイニシエーション(通過儀礼)の儀式のための伝統的な「Bunggul」の演奏では、ある特定の小道、もしくは「ソング・ライン」がその場合によって象徴的に選ばれる。
このCDに収録されている演奏では、内陸の道「Diltjimurru」が選ばれている。ソング・シリーズ「Manikay」は下記の通りで、儀式の時に伝統的に演奏されるのと同様に、それぞれの歌が3回演奏される中で、それぞれの歌のテーマは2度繰り返されている。
■Rripangu Yirdakiのメンバー
Djalu Wulumbuyku Gurruwiwi : Vocals, Yirdaki
Gurritjiri(Alfred) Gurruwiwi : Vocals
Winiwini(Larry) Gurruwiwi : Vocals, Yirdaki, Dancing
Minyapa(Andrew) Gurruwiwi : Vocals, Dancing
Liyangkerrirr(Sylvester) Gurruwiwi : vocals, Yirdaki, Dancing
■ライナーの翻訳
1.Wukun(Cloud)1|2.Waluka(Rain)1|3.Gukguk(Pidgeon)1|4.Wuluyma(Ancestral Being)|5.Gukguk(Pigeon) 2 I 6.Mulnymuluy(Ancestral Being)|7.Gukguk(Pigeon) 3|8.Yolngu(People)|9.Wukun(Cloud)2|10.Waluka(Rain)2|11.Wata(Wind)1|12.Gitja(Particular Step used in Dance)|13.Baarra(West Wind)|14.Wukkun(Cloud)3|15.Wata(Wind) 2|16.Walirr(Sun)
※曲名をクリックするとその曲の解説へ飛びます。
1. Wukun(Cloud)1 / 3:02
雲は増えていき、進むべき方角を見定めながらある場所の方を指さしている。そしてどんどん増え続け、そしてGarul Gadapaltjiという場所に向かって動きはじめる。雨を降らす準備ができた時、雲はNgalarra Dhawunyilnyilという名の力強い前線を築きながら、東の空で雲の形成をする。
2. Waluka(Rain)1 / 2:51
Garngaに雨が降る。その雨はGanguri(Yam:ヤムイモ)の上にも降り注ぎ、ヤムイモはある決まった場所で雨に手を降る。雨は東の空からやってくる。
3. Gukguk(Pidgeon)1 / 3:20
雨が上がり、Gukguk(Pidgeon:ハト)が表に出て来て歌を歌う。雨の降った後、ハトは嬉しそうに歌を歌っている。
4. Wuluyma(Ancestral Being) / 4:03
雨が大地を通り過ぎて、Garulという土地からやってきたGawukiという名の人が現れる。彼は大地を放浪している。午後の間に日影の方向が変わっている。
5. Gukguk(Pigeon) 2 / 3:18
G畦pu'クランの人々が座り、休む特別な日影を作るMunuruluという木の元でハトはまた歌っている。
6. Mulnymuluy(Ancestral Being) / 2:27
雲がそれぞれ違った方向に向かおうとしている時、WuluwanaはWaku-midiという名の神聖なる砂場で休んでいる。
7. Gukguk(Pigeon) 3 / 2:29
Wurrumba(サメ)が旅する時、Gukguk(鳥)はヤムイモについて話し、歌い、その歌声をある場所へと発している。
8. Yolngu(People) / 2:52
葉っぱをまとったYolngu(人々)が大地を歩き回っている。Namal(Stingray:エイ)を探して、小川に沿って海にむかって歩いている。
9. Wukun(Cloud)2 / 3:10
雲はヤリ(Djenggana)の形になり、そのヤリを違う方向へ向きをかえている。雲(Wukun)はヤリを象徴している。
10. Waluka(Rain)2 / 1:17
再び、雨が降りはじめ、木々や草花に降り注ぐ。新芽(Bitbit)が出て来るように特にヤムイモに雨が降り注がれる。
11. Wata(Wind)1 / 1:38
西風が吹きはじめ、Maawi、Goulburn島でより強大になっている。風がふけば葉がゆれる。そして今、風は大地を横切っていく。
12. Gitja(Particular Step used in Dance) / 2:47
Yolngu(人々)は大地を踊りながら歩いている。Yolngu DhawilinguはWarrarri(ヤリ)をまっすぐMaawiに向けて伸ばしている。
13. Baarra(West Wind) / 2:37
ヤリを向け、大地を歩き、どこへ向かうか決め、そして今西風が吹く時、子供達は貝殻を拾いながら歩いていく。
14. Wukkun(Cloud)3 / 5:06
Buku damala。雲は、何ものも打ち勝つことができない楯、もしくは境界を作り上げながら、形作ってきている。
15. Wata(Wind) 2 / 3:22
そして、楯を形作った雲が大地を通りすぎるとき、風が吹きはじめる。そしてYulminyという土地へやってきた時、風は速度を弱め、次第に消え去ってしまう。
16. Walirr(Sun) / 7:03
太陽が沈む時、太陽の光がある場所、特にDhumaraと呼ばれる場所に当たる。人が自分がやってきた場所に思いを馳せるように、そのドリーミングがある場所に光が届く。太陽が沈んでいくにつれて、その人の心に自分の故郷を映し出す。
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