Kunbjorrk(GUNBORG)スタイルの天才的Mago(ディジュリドゥ)奏者デビッド・ブラナシの大地をひきずるような倍音に溢れた、全世界必聴の一枚!
■DAVID BLANASI プロフィール
■ライナーの翻訳と解説
■DAVID BLANASI ディスコグラフィー
言わずと知れた西アーネム・ランド南部のKunbjorrkスタイルの唯一無二の天才デビッド・ブラナシの個人名義でのアルバム。アボリジナルの音源でディジュリドゥ奏者の名義で発売されたはじめての音源で、タイトルの通り「ディジュリドゥ・マスター」の超絶なサウンドを余す所無く収録しており、全世界ディジュリドゥ・プレーヤー必聴の一枚です!
惜しむらくも、2001年に姿を消し、現在行方不明だという。フリー・ジャズに例えられる程に自由にリズムをあやつり、60代後半とされるこの録音でもパワフルな演奏が聞くことができる。1960・70年代の録音にくらべるとよりルーズな感じになった唇での演奏感覚が逆にたまらない。ソングマンに比べてディジュリドゥは若い人が担う楽器という面が強いが、この年齢までディジュリドゥを吹き続けるのは本当に限られた人物だと思われる。年を重ねるごとにきちがいじみたすさまじさをかもし出してきている!僕の文章がここにきて支離滅裂になるくらいに感涙&レジェンド!!!
下記はライナーに紹介されているデビッド・ブラナシのプロフィールの翻訳です。
■DAVID BLANASI プロフィール
デビッド・ブラナシは1930年代(詳細は不明)に中央アーネム・ランドのKindirriにて生まれ、若い時代をKindirriで過ごす。儀式において伴奏する際のディジュリドゥの演奏技術、幅広いレパートリーにおいて評判が高いために、アーネム・ランド中を駆け回ることに彼の人生が費やされた。60年代から90年代後半まで世界中をツアーで回り、その時のライヴ音源もCD化されている『Les Aborigenes Chantes & Danses de l'Australie du Nord』(CD 1979 : Arion)。彼の盟友であるソングマンDjoli
Laiwanga亡き後、98〜'01年の間彼自身のバンド 「The White Cockatoo Band」を中心に活動。
『子供の時、父がよくディジュリドゥを作ってくれ、聞かせてくれた。時にはKindirriからアーネム・ランドを旅し、その時にはディジュリドゥを持たされたもんだ。もしディジュリドゥをなくしたら、わしが取りにもどらなきゃいけなかったろう。』
ブラナシはMiaili言語グループからのWugularrの長老の1人であり、卓越したディジュリドゥの演奏家、ディジュリドゥの名工というマルチな才能を持つ人物だった。
下記にはライナーの短い解説文の翻訳に加えて、「上記はライナーの翻訳」という文章ではじまる段落には、音の響きから感じた聴感上の主観的な感想と、各曲に特徴的な音楽的構造などのレビューが掲載されています。レビューの部分で書かれている内容はライナーとは全く関係がありません。また、レビュー部分でなされている言及は推測の域を超えるものではないという事をご了承下さい。
■ライナーの翻訳と解説
1. Gorro Gorro The Kookaburra|2. White Cockatoo|3. Waking up Song and A Worry Song|4. Bidgurdurr 1|5. Bidgurdurr 2 I 6. The Big Shadow. The Spirit.(White Cockatoo Part B)|7. Kunkurra|8. Big Storm|9. Worry Song 1.(White Cockatoo Part C)|10. Worry Song 2.(White Cockatoo Part D)|11. Dingo Lonely for its Mate|12. Gurrubeh(In the Miaili Language) Short Argument Song|13. Wurrarl 1. Spirit|14. Wurrarl 2.|15. The Brolga|16. Manngalinj(Bush Potato)|17. Two Days Sleep
※曲名をクリックするとその曲の解説へ飛びます。
1. Gorro Gorro The Kookaburra
ディジュリドゥ・ソロ。曲の頭の自然音にも収録されているワライカワセミの鳴き声を模倣した曲で、ブラナシが必ず演奏する曲目の一つです。彼独特のコール、特にピッチの自然な上げかたはドローンの倍音と混ざってすさまじい。晩年のソロのため、よりこなれたやわらかなサウンドになっている。全てのアルバムに収録されていおり、60年代の録音特に『SONGS
OF BAMYILI』では、転がり落ちるようなスピーディーで滑らかなコールを聞くことができる。
2. White Cockatoo
「一匹のWhite Cockatooが木にとまっている。友達を呼ぶために鳴く。たぶんみんながそれに答えて鳴き、そして皆が集まる。」
上記はライナーの翻訳。冒頭での自然音でギャーギャーと鳴いているのがこの地域で「Ngaratj」と呼ばれる黄色のトサカを持つ大きな白いオウムWhite
Cockatooの鳴き声で、群れになって行動する。『SONGS OF BAMYILI』以外の全ての録音で演奏している名曲で、ここでの録音は5分もの長いトラックになっている。トラック6、9、10にはこの曲のバリエーションが収録されている。ルーズな唇と喉の開放で生まれていると思われる高い倍音が常に聴かれる。
3. Waking up Song and A Worry Song
「おい起きろ!もう行くぞ!誰かいないかもしれない!」というおもしろいコメントがライナーにあるゆっくりなテンポの曲だが、ディジュリドゥがきざんでいる2ビートはすばやく滑らかな舌の動きで演奏されている。特に、冒頭のディジュリドゥとクラップスティックだけの部分では、舌の場所を変えて同じリズムを演奏したり、舌をカールバックさせたりして様々なヴァリエーションを演奏しているのがわかる。
またソングマンのしゃがれた声で歌う曲のテーマ的なメロディー部分は、ディジュリドゥのサウンドとうまくからみ合っている。ディジュリドゥの演奏の終わった時に空気が漏れる音が聞こえる。この感じが伝統的なアボリジナルの演奏方法のポイントだと思える。
4. Bidgurdurr 1
うずまく風「Willy Willy」の歌。『BAMYILI CORROBOREE -Songs of Djoli Laiwanga』(LP 1976 : Grevillea)にも収録されているまさにブラナシの演奏と曲のイメージがガッチリとあったドローンがグニャグニャにうずまく名曲。リズムもさることながら、舌もこの曲ではよく動いている。クラップスティックが16分(音符)で演奏されている部分は、この渦巻く風「Willy
Willy」のイメージが情景的に表現されている。またクラップスティックに合せたディジュリドゥのリズム・チェンジがものすごい。
5. Bidgurdurr 2
「Willy Willyが段々大きくなっていき、早くなっていく。そして、火が燃えている所から大きな煙りが立ち上るかのように上がっていく。」
上記はライナーの翻訳。トラック4よりもさらに激しく「Willy Willy」が吹き荒れる感じがよく表わされている。スロー・パートでの頭の吹き込みの舌の動きがブラナシらしいヘビーなサウンド作りになっている。またこの曲はライヴ盤の『Les Aborigene』にも高いピッチのディジュリドゥでの演奏が収録されている。
6. The Big Shadow. The Spirit.(White Cockatoo Part B)
Kunwork語で歌われている。White Cockatooは自分の大地に帰ってきたが、そこには誰もいなかった。「彼は今精霊で大きな影Wurrarlだ。人が死んだ時、その霊はその人が生まれた大地へと帰らなければいけない。」
上記はライナ−の翻訳。トラック2の「Ngaratj(ホワイト・カカトゥ)」ソングのバリエーション。歌が4/4構成になっていてもディジュリドゥの基本パートは2/4周期で演奏されることが多いが、この曲では「Lidumo- Lido- Lido-」といった4/4周期のものを中心に曲を組み立てている。クラップスティックのリズム割り、リズム・チェンジが渋い。
7. Kunkurra
強風。「大きく強い一陣の風が吹く。葉っぱが木から離れとばされる。」曲のイメージに合わせて、非常に力強く演奏している。
上記はライナーの翻訳。声が随所に自然に混じっている感じがたまらない。この録音の中でも最もパワフルに演奏しているトラック。喉の動きを強調的に多用している。ディジュリドゥのソロ的なスローな部分では、ドローンの引きを丁寧に行っているのがわかる。曲が終わった後に、傍で聴いている人達からの拍手とかけ声が沸き起こっている。
8. Big Storm
「稲光りが光り、風と雨が降り注ぎ、稲妻の音が聞こえる。」トラック7と非常に似た曲。
9. Worry Song 1.(White Cockatoo Part C)
「仲間のWhite Cockatoo達は洞窟に描いてあるあのWhite Cockatooを見つけたが、彼自身をみつけることができなかった。彼は去り、仲間達は心配している。」
上記はライナーの翻訳。アボリジナルの音楽的題材の中には、擬人化された動植物達の世界が多い。どこかへ姿を消し去ったデビッド・ブラナシ自身の事を思わせるようなストーリーだ。トラック2と6にも「Ngaratj(White Cockatoo)」ソングのバリエーションが収録されている。
10. Worry Song 2.(White Cockatoo Part D)
「あのWhite Cockatooは今精霊になっていて、この世界から去ってしまった。以前は彼は実際の人間だったが今は精霊になっている。」
上記はライナーの翻訳。ライナーに『人はデビッドをBomb(爆弾)と呼ぶ。』という表現がよくわかる、前に押し出す舌と唇のコントロールから生まれるパワーのあるダイナミックなサウンドが特徴的。
11. Dingo Lonely for its Mate
ブラナシの定番ディジュリドゥ・ソロの曲。オーストラリアの野生の犬ディンゴ(ほ乳類でオーストラリア原産ではない)の曲。コール以外のドローン部分の割りのセンスがクールだが、何か決まった周期やリズムで演奏しているのではなく、自由に気のむくままに演奏しているように思える。
12. Gurrubeh(In the Miaili Language)
Short Argument Song
二人の兄弟が口論している。「おまえがその歌を作れ、俺は帰る。それじゃぁな。」このライナーからは内容ははかり知ることが難しい...ブラナシのクランの言葉Miailiで歌われている歌。『David
Blanasi Tribute Album 1998-2001』のトラック14にも同じ曲が収録されている。
13. Wurrarl 1. Spirit
「この精霊はDevil Devilのようなもので、人をおどかす。」
上記はライナーの翻訳。リズムがブレイク毎にジャンプしていくという最も楽曲的におもしろい曲で、残念ながらこの時期のブラナシ完全にこの曲をフォローしていないようだ。『Bamyili Corroboree Songs of Djoli Laiwanga』(LP 1976 : Grevillea)のトラック9のMimiは同じ曲と思われるが、スピードも早くタイトな演奏をしている。
14. Wurrarl 2.
「あたりがすっかり暗くなり、ドキっとしたら、それはWurrarlが現れているのかもしれない。」
上記はライナーの翻訳。トラック13よりもタイトにふきこなしていて、ダンサーの掛け声も録音されており、良い録音になっている。伝説のソングマンDjoli
Laiwangaが作ったGUNBORGの名曲。『David Blanasi Tribute Album 1998-2001』のトラック11にも同じタイトルの曲が収録されているが、テンポがかなりゆっくりで違うバージョンの「Wurral(Devil
Devil)」ソングを聞くことができる。
15. The Brolga
ディジュリドゥ・ソロ。ブラナシがソロの時に必ず演奏する曲でKookaburra(ワライカワセミ)よりもコールが低めの声で演奏されている。Brolga(Bordoh)は灰色のツル。
16. Manngalinj(Bush Potato)
「ブッシュ・ヤムは人にも動物にも皆にとって良い食べ物だ。」
上記はライナーの翻訳。ブラナシが作るディジュリドゥにも頻繁に描かれるヤムイモについての歌。この曲構成の歌が多い。『David Blanasi Tribute Album 1998-2001』のトラック5にも同じ曲のライヴ音源を収録している。
17. Two Days Sleep
「二日眠り、もう一日眠るかもしれない。」
上記はライナーの翻訳。ディジュリドゥはこの曲のベース部分を「Lido-Lidu-mo-」といった[3+3+2]の割りで演奏していて、シンプルなリズムだが他の曲ではあまり見られないリズムでの演奏をしている。またその単純なリズムの2ビートの繰返しの中でも、舌が奥にカール・バックする時に出る音を時折印象的に使っている。
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