40才頃のまさに脂がのりきったディジュリドゥ・マスター「デビッド・ブラナシ」とTom Yorkdjanki(おそらくトム・ケリー)の演奏を聞くことができる7インチEP。
■ライナーの翻訳
■各曲の解説
■DAVID BLANASI ディスコグラフィ
カセットと7インチ・レコードで発売され、現在廃盤だが、『TRADITIONAL
ABORIGINAL MUSIC -Sounds from the Bush』(CD 1998 : ARC)では、このカセットに収録されている合計9曲中の6曲を聞くことができる。残念ながらこのCDも廃盤です。
ブラナシのディジュリドゥ・ソロとして有名なワライカワセミ、ブロルガ、ディンゴの3曲以外にも、ここでだけ聞くことができるハトの歌「Lumbuk(Top Knot Pigeon)のディジュリドゥ・ソロがトラック1に収録されているており、コールが全く使われないドローンだけのディジュリドゥ・ソロで非常に貴重!ディジュリドゥ・ソロはいずれも、超絶のパワーとスピードだが、特にトラック6のブロルガは、まるで転がるようなコールがすさまじい演奏で、 そのタイトでダイナミックな演奏能力を惜しむことなく発揮している。
下記は7インチ・レコードのバックジャケットに掲載されていた文章の翻訳です。
■ライナーの翻訳
Bamyiliはノーザン・テリトリー州の州都ダーウィンから430km南に位置する小さな町です。Bamyiliには、主にアーネム・ランドのDjauan、Maiali、Rembarrnga、Ngalkbunなどの言語グループ出身の人々が住んでいる。
この地域はMargu(ディジュリドゥ)の鼓動するかのようなサウンドで有名で、この録音ではDavid BlanatjiとTom Yorkdjankiがディジュリドゥを演奏しており、歌をTjoli Laiwangka、そしてすばらしいダンスは、Tjoli LaiwangkaとDavid Gulpililに率いられたダンス・グループで演じられている。このBamyiliのダンス・グループはイギリス、カナダ、メキシコ、日本、マレーシア、フィジー、そして最近ではニュージー・ランドで行われた「South Pacific Festival」にも参加している。
昔から続いている彼等の音楽は3万年以上もオーストラリアの自然環境と関係しており、今回Aboriginal Arts Boardの要請を受けてAboriginal Artists AgencyとAustralian Broadcasting Commissionが協力してはじめてステレオ録音という手段で録音されました。
■各曲の解説
SIDE A : 1. Didjeridu Solo(Lumbuk / The Top Knot
Pigeon、Goro-Goro / The Kookaburra)|2. Lumbuk(The
Top Knot Pigeon)|3. Gun-Ngwaral(The White Cloud)|4.
Waiyara(The Shadow)
SIDE B : 5. Didjeridu Solo(Bordoh / The Brolga、Djamu
/ The Dingo)|6. Bungalin Bungalin(A Love Song)|7.
Dalubun(A Love Song)
※曲名をクリックするとその曲の解説へ飛びます。
ここで紹介されている内容は、このカセットのライナーやその解説には直接関係はなく、今までにリリースされたブラナシの他の音源との比較や、ディジュリドゥのサウンド、楽曲などについての感想と解説が紹介されています。 またその内容は推測の域を超えないものであることをご了承下さい。
SIDE A :
1. Didjeridu Solo(Lumbuk / The Top Knot Pigeon)
ほとばしるかのように鮮烈な倍音と、ダイナミックに押し出すような低音が聞かれ、空気がもれないタイトな唇のホールを感じさせる。50秒程の短い演奏だが、サウンドの全体像から、充実した気力とテクニックに裏付けられたこの時期のブラナシのまさに「ディジュリドゥー・マスター」たる由縁をひしひしと感じる演奏です。曲目はこのアルバムのトラック3で聞くことができる「Lumbuk」で、5拍子のシンプルな伴奏用のリズムを演奏している。
2. Lumbuk(The Top Knot Pigeon)
トラック1でディジュリドゥ・ソロで演奏されている「Lumbuk」を、偉大なるソングマンDjoli Laiwangaの歌と共に聞くことができます。ブレイクとエンディングは他の曲でも使われている定型のパターンで、4/4拍子の最初の3小節ではディジュリドゥとクラップスティックがユニゾンして2分(音符)で演奏され、次の1小節をクラップスティックが4分全てを演奏し、そして最後の小節ではシンコペーションしたリズムで演奏されている。つまり4/4拍子5小節のパターンになっている。それ以外はソングマンの歌もディジュリドゥも5拍子で演奏されている。
3. Gun-Ngwaral(The White Cloud)
ディジュリドゥは歌の伴奏部分では3/4拍子で演奏し、歌は3/4拍子2小節で進行している。クラップスティックはエンディング / ブレイク部分以外は全ての4分をたたいている。エンディング / ブレイク部分ではトラック3と同じパターンが使われている。導入部分では、ディジュリドゥの演奏に即興的な要素が見られるが、それ以外の部分ではより伴奏的な演奏をしている。
4. Waiyara(The Shadow)
おそらく他のアルバムで「Dance of Shadow」という名前で紹介されている曲と同一のものと思われる。この曲は、低い音程のディープなサウンドのディジュリドゥで少しゆっくりめのテンポで演奏されている。クラップスティックが入っている部分では、ディジュリドゥは2分を感じさせるリズムの伴奏をし、 クラップスティックの演奏がなくなり、歌とディジュリドゥだけになるブレイク / エンディング前のパートでは、ディジュリドゥはクラップスティックの代わりを果たすかのように2倍の4分を感じさせるリズムを演奏している。それによってこの部分にクラップスティックが入っていないのに曲にダイナミズムを与えている。ディジュリドゥ奏者はTom Yorkdjankiとライナーに記述されており、おそらくトム・ケリーの事だと思われる。
SIDE B :
5. Didjeridu Solo(Bordoh / The Brolga、Djamu / The Dingo)
転げ落ちるかのようにスムーズでスピーディーなコール部分が凄まじい。ブラナシの最盛期のソロの中でも最も激しいソロではないだろうか。万華鏡のように様々な倍音が同時に聞こえるドローンにコールが入ることでさらにうねったサウンドになっている。このブロルガの曲は、ディンゴやワライカワセミと違ってコールの入らないドローン部分で決まった拍子でループさせずひたすら4分の「Lidumo-」といったリズムのみを繰り返している。
ワライカワセミと同様5拍子のドローンをきざみ、コール部分は拍子にとらわれずにディンゴの吠える声を模倣していると思われる長めの独特のコールが聞かれる。
6. Bungalin Bungalin(A Love Song)
Tom Yorkdjankiによる演奏。トラック5で使われているのと同じ低い音程のディジュリドゥに切り替えて演奏している。この曲ではクラップスティックのみにブレイクがあり、ディジュリドゥはブレイクに入っても5拍子の決まったフレーズを変わることなく演奏している。通常のパートを4分でたたいていたクラップスティックは、ブレイク部分では5拍子周期の中で5拍目の裏拍以外をすべて8分でたたいている。また曲の最後ではすさまじいリズム・チェンジが聞かれる。
この「Bungalin Bungalin」ソングは、このアルバム以外ではDjoli LaiwangaとDavid Blanasiの最も古い音源と思われる『ARNHEM
LAND POPULAR CLASSICS』(CD-R from LP 1961-62 : Wattle Ethnic Series)のトラック1に同じ曲が収録されているが、曲のテンポ、歌のメロディーともに随分と異なっている。
「Niida Malarainmanda」というタイトルをつけられた中央アーネム・ランドのGUNBORGスタイルの「Big Dance」ソングの「Bungalin-Bungalin」ソングサイクルの歌で、Joli Laiwangaによる作曲。」
-『Arnhem Land Popular Classics』のライナーより抜粋- |
7. Dalubun(A Love Song)
Tom Yorkdjankiによる演奏。ディジュリドゥもクラップスティックも4分をひたすらきざんでいるので、ただ聞いただけではこの曲の構成は不明だが、2/4拍子で演奏しているのではないかと思われる。歌の伴奏をしている時のディジュリドゥは、トラック5と8で使われている低い音程のディジュリドゥを使用したかなりミニマルな演奏だが、歌と歌の間の部分では自由に即興演奏をしている。
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