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SONGS OF ARNHEM LAND
SONGS OF ARNHEM LAND
NO AIAS-6
Artist/Collecter Lester & Betty Hiatt(Recorders)
Media Type LP
Area 北西/中央/北東アーネム・ランド
Recorded Year 1958-60年
Label AIAS
Total Time 41:18
Price 廃盤
Related Works ART OF THE DIDJERIDU

 

SIDE A :
1.
Djambidj song cycle by Angabarabara(Dua)
(a-c).North-west Monsoon(Bara)
(d-e).White Cockatoo(Ngalilag)
(f).Crow(Maralgara)

2.Gabangora song cycle by Gamboa(Jiridja)
(a-c).Catfish(Gandjal) and Herring(Njalg-njalg)
(d).Large Egret(Gomola)

3.Gojulan song cycle by Mundrug-mundrug(Dua)
(a).Blue Blowfly
(b).Ibis(Garala)
(c).String(Mundun)
(d).Unidentified Fish(Walabur)

4.Gada song cycle by Gangalara(Dua)
(a-b).Wallaby(Gonobolo)
(d).White Butterfly(Bunba)
(e).Brolga(Manugudog)

5.Badaidja song cycle by Anawudjara(Dua)
(a).Lightning(Anmalbai)
(b).Tree-Platform(Bela-bela)
(c-d).Diamond Dove(Gulodog)

6.Wulumunga song cycle by Djuliga(Jiridja)
(a).Mangrove(Gunabara)
(b).Sandfly(Mingga)
(c).Barramundi(Raidjara)
(d-e).Crocodile(Maridjula)

SIDE B :
7.
Borg(Gunborg) song
8.Borg(Gunborg) song
9.Borg(Gunborg) song
10.Borg(Gunborg) song
11.Mandinda ceremony
12.Djanggawon ceremony
中央アーネム・ランドで58-60年の間にHiatt夫妻がフィールド録音した音源。

■ライナーの翻訳
■SIDE A : 東アーネム・ランド Blyth River地域のキャンプ・ミュージック
■SIDE B : 西アーネム・ランド Liverpool River Area地域のキャンプ・ミュージック

レコードのみで販売された非常に貴重なアルバムで、残念ながら手元に音源はなく、オリジナル盤に付属していたライナー・ノーツのみが手に入ったため、ライナーの翻訳のみを詳細ページで掲載しています。

録音地域は、Blyth RiverとLiverpool Riverで、ライナーではBlyth Riverが北東アーネム・ランドの影響を受けており、Liver Pool Riverはいわゆる中央アーネム・ランドのダンス・ソングGUNBORG[BORG]の最東端の領域であると説明されている。北東アーネム・ランドの演奏スタイルとGUNBORGなどで知られる中央アーネム・ランドの演奏スタイルのミーティング・ポイントになっている地域の録音とその比較が非常に興味深い。

■ライナーの翻訳
このレコードは、主に社会学的方針で行われた調査の最中に収集された最新の素材を、音楽学者が利用できるようにする目的で作製されています。1958〜60年の間、私と妻は北アーネム・ランドのLiverpool Riverの河口付近にある政府が設立したアボリジナル居住地であるManingridaに20ヶ月滞在した。Maningridaに居住していた主なグループは、Gunavidji、Nagara、そしてBuraraで、Gunbalang、Gunwinggu、Gungoragoni、Janjango、そしてDjinangも居住していた。これらの部族の以前の分布状態は付属の地図に示されています。

民族学者達は、かなり前から東アーネム・ランドと西アーネム・ランドの文化的相違に気付いていた。東のNagara族の人々はBurara族と関係する傾向があり、西のNagara族の人々はGunavidji族と関係を持つという傾向があるという推移がある。私はこのレコードに東西アーネム・ランド両方の文化の音楽を収録したので、後に互いの相違が区別できる特徴を簡単に述べることとします。しかし、私の研究は地域的なバリエーションの研究というよりはむしろ、一つの部族の中での詳細に渡った調査を目指すものである。私が思う最高の音楽として「Burara」ソング・サイクルをここに選んで紹介しています。それが私の主な研究と関係が直接的には関係がないようであるという点はあえてここではほうっておく。

後に各面の最初の曲は一風変わった曲であると説明してあるのだが、A面には東アーネム・ランドのBlyth River地域のキャンプ・ミュージックを、そしてB面には西アーネム・ランドのLiverpool River地域のキャンプ・ミュージックを収録してあります。B面の最後には男性の秘儀の音楽のいくつかの例が収録されています。

■SIDE A : 東アーネム・ランド Blyth River地域のキャンプ・ミュージック
SIDE A : 1. Djambidj song cycle by Angabarabara(Dua) 1(a-c). North-west Monsoon(Bara)(1d-e). White Cockatoo(Ngalilag)1(f). Crow(Maralgara)|2. Gabangora song cycle by Gamboa(Jiridja) 2(a-c). Catfish(Gandjal) and Herring(Njalg-njalg)2(d). Large Egret(Gomola) |3. Gojulan song cycle by Mundrug-mundrug(Dua)|3(a). Blue Blowfly 3(b). Ibis(Garala) 3(c). String(Mundun) 3(d). Unidentified Fish(Walabur)|4. Gada song cycle by Gangalara(Dua) 4(a-b). Wallaby(Gonobolo) 4(d). White Butterfly(Bunba) 4(e). Brolga(Manugudog)|5. Badaidja song cycle by Anawudjara(Dua) 5(a). Lightning(Anmalbai) 5(b). Tree-Platform(Bela-bela) 5(c-d). Diamond Dove(Gulodog)|6. Wulumunga song cycle by Djuliga(Jiridja) 6(a). Mangrove(Gunabara) 6(b). Sandfly(Mingga) 6(c). Barramundi(Raidjara) 6(d-e). Crocodile(Maridjula)
※曲名をクリックするとその曲の解説へ飛びます。

「Burara」は元々GidjingaliとGunadbaと呼ばれる東アーネム・ランドのグループの人々が使う言葉で、埋葬の儀式の時に演奏するために死者の霊が作曲したと信じられている7つのソング・サイクル「Manigai」から成る。それぞれのソング・サイクルには違う名前、曲の組合せ、そしてメロディ構造がある。このような歌は、眠っている人の霊が自分の亡くなった親者の霊を訪ねる夢の中で学ばれ、それがどこで起きるのかは誰も知らないのだと人々は言う。北東アーネム・ランドの「Bunggal」の一種である「Manigai」は、おそらく友愛の意思表示として西側の隣人へその歌の共有権をクランを通じて拡大しながら西側へと広がってきた。

すべての「Burara」の父系クランは7つのソング・サイクルのたった一つをある他のクランと共有している。共有している所有者達は同じ半族に属し、全ての場合において「Burara」以外の人々も含んでいる。つまり、Dua半族の5つの「Burara」クランは、特定のDjinangクラン、そしておそらく、はるか東のその他のクランと「Gada」ソング・サイクルを共有している。歌の共有権を持つ所有者達は、自分達が共通のきずなを持っているのだと考えており(「manngadaba manigai arabirawo」とは「我々は一つの埋葬の歌を共有している」という意味)、彼等は互いに交易のパートナーであることが多い。

それぞれの歌は、それぞれのトーテムについて20〜40節ある。一握りのトーテムが共有者達(ホワイト・カカトゥ、クロコダイルなど)のいくつかの土地に場所を創造したが、そのほとんどがその土地とは全く関係が無い(モンスーンの北西の風、宵の明星など)。同じ半族の異なる歌の中にあるいくつかの節では、同じトーテムについて述べられているが、違う言葉が使われている。

歌詞には3つの種類があり、(a)「Djirimula(Seagull : カモメ)」のような日常会話で使われる言葉がその一つで、歌詞にはめったに使われない。(b)日常会話の類似語。日常会話で「モンスーンの北西の風が吹こうとしている」という意味の「bara aboiboidjinga」の代わりに「Boiboi」という歌詞が使われる。また「Crow(カラス)」ソング・シリーズで発せられる「Wonggo」という歌詞は、「スピーチ」という意味だが、日常会話でスピーチを表わす言葉は「Wengga」となっている。(c)死者の特別な言葉に属すると信じられている言葉。歌詞の中でもっとも多く使われるが、日常会話では使われず、その言葉に意味は無い。その主要な機能はリズム的なものだと思われる。私の初期の調査では、私が一語一語正確に翻訳を聞き出そうとしていた男性の我慢の限界を越えて、10分程して、彼はタバコをパイプで吸い、煙を吹いて言った「ほら見てごらん。こういった言葉が死者の霊に属しているんだよ。たぶん祖父か、曾祖父ならどういう意味なのかわかったんだろうがな、わしは知らん。」

演奏には、一人のディジュリドゥ奏者と一人のシンガーは必ず必要だが、たいていリーダーにユニゾンして歌う数人の男性シンガー達がいる。人々は、一個人をそれぞれのソング・サイクルの一番の演奏者であると認識し、たとえその人物が離れたコミュニティに属していても彼が歌う機会を捜し求める。しかしながら、彼にとって代わる人が他にもおり、ほとんどの男性がサポートをするのに十分な自分達の歌についての知識を持っているのである。自分には音楽的才能が少ししかないと思っている人達は、リズムをきざんだり、たんに聞き手に好んでまわるのである。

この1960年における傑出した7人のソング・リーダー達は、みなすばらしい声をした老人で、彼等は歌のメロディ、歌詞、そしてリズムを完璧に学ぶという課業を自分達にずっと課して来たのだ。その内の数人が「Burara」の出身で、それ以外の残りの人達は、はるか東の出身である。彼等が他のコミュニティを訪れた時には、そのコミュニティの若いリーダー達は彼等に従っていた。ソング・リーダーの地位というのは世襲制ではなく、歌の連続的な占有者が同じクランに属している必要はない。

「Burara」の人々は死者の処理を2度執り行う。まず最初に浅く掘った墓に死骸を埋めるか、木の祭壇に死体をかかげる。2〜3時間後に近親の男達が死体を葉っぱでみがくのである。その1週間ほど後に、死者のコミュニティの人々は、死者の持ち物を燃やし、近親の者達に水をかける。数カ月後、人々は乾燥した骨を取り出し、コミュニティにその骨を持ち帰り、近親者達がその骨を数年間保存しておく。最終的に、「Log Coffin」と呼ばれる中が空洞になった木を使った棺桶にその骨を安置し、それは埋められるか、もしくは地面に立てた状態で放置される。

儀式の間中、人々は死者のソング・サイクルを歌い、それぞれの局面で儀式のリーダーは全ての所属しているクランの名前を詠唱する。サポート・シンガー達はたいてい歌の所有者だが、自分達の所有している歌と同じくらいにその歌を知っており、なお敬意を払いたいと願っている同じ半族のその他の人々がサポート・シンガーを勤めることもある。半族の歌は、別の半族の男性によって歌われることは決してなく、埋葬の儀式でも別の半族の男性が歌うことはない。

女性は踊りを踊るが歌を歌うことはない。女性達は自分達のクランの歌に適した動きを理解するように最善を尽すのであるが、他のクランの踊りにも精通しており、どちらの半族の歌でも踊りを踊ることが許されている。

「Manigai」はイニシエーション(通過儀礼)の儀式のある特定の場面で歌われるが、娯楽用にキャンプ・ファイヤーのまわりで演奏もされる。

1. Djambidj song cycle by Angabarabara(Dua)
「Djambidj」ソング・サイクルには約20のトーテムについての節(曲)がある。トラック1には「Bara(モンスーンの北西の風)」ソング・シリーズから3曲、「Ngalilag(ホワイト・カカトゥ : 白いオウム)」から2曲、「Maralgara(Crow : カラス)」から1曲が選ばれている。。最初の曲についての神話的背景とその歌詞を手短に述べ、情報提供者による歌詞の日常会話の「Burara」語への翻訳をもとに訳した英訳をつけてあります。歌詞の多くには日常会話で使われる言葉と釣り合う言葉が無いため、情報提供者の翻訳は文字通りの供述ではないという事を理解していただきたい。しかしながら、言葉のヒントから考えられた推稿が非文法的な場合になされている。歌詞からはむしろ神話的物語を想像させられる。

1(a-c). North-west Monsoon(Bara)
乾季の終わりにむけて、2匹のウナギが海から登ってきて、風が無いと一言のべる。その2匹は精霊で、小さい風が「Bara(北西の風)」にやってくる時だと知らせる。「Bara」は戦士が戦いに出かけるかのように、歯の間に「Dilly Bag(採集したブッシュ・タッカーをいれるための手さげ袋)」をくいしばりながら地平線の上に黒い雨雲となって現れ、オナラをしてモンスーンの北西の風を巻き起こす。

    Baraがやってくる
    戦士が戦いに行くかのようにBaraはDilly Bagを歯の間でくいしばっている
    カモメは風に追い付かれて、風に連れていかれる
    大きな風が吹く
    BaraはBolwaraクランの人々、あなたの所へとやってきている
    (BaraはDjambidjソング・サイクルの共有者の一つである)  
    Wunmil Gaiguradala(Baraの別の名前で日常会話では使われない)
    大きな風が吹く
    BaraはBolwaraクランの人々、あなたの所へとやってきている
    死者の霊
    カモメは風に追い付かれて、風に連れていかれる
    Angunumba Jalarialei(クランの名前)
    Ngandjuwa(Djabidjソング・サイクルの共有者の一つに関連があるCape Stewartにあるトーテムの場所)
    Baraがやってくる
    Baraは黒い雨雲となって地平線の上に立っている

1(d-e). White Cockatoo(Ngalilag)
このトーテムはその他の3つのトーテム、「ログ・コフィン」、「Stingray : アカエイ」、そして「ディジュリドゥ」の近辺、Cape Stewartに住んでいる。ログ・コフィンはマングローブの森に住み、アカエイは地中の穴の中に住み、ディジュリドゥは自分が創った泉の下に住んでいる。この4つのトーテムは規則的に会話をする(あるアボリジナルはその4つのトーテムは白人が電話で話すみたいに互いに話し合うのだと述べていた)。ホワイト・カカトゥ(白いオウム)とログ・コフィンが踊っている間に時々死者の霊がディジュリドゥを吹き、Djambidjソング・サイクルを歌う。アカエイは自分の穴にとどまっている。

    Wangurunga(ホワイト・カカトゥの別の名前)
    「おいで おいで」と死者の霊がホワイト・カカトゥの群に言う
    Gulgulnga(ホワイト・カカトゥの生まれた場所)
    Ngaldjiba Goja(ホワイト・カカトゥの家)
    「おいで おいで」と死者の霊がホワイト・カカトゥの群に言う
    Gulgulnga(ホワイト・カカトゥの生まれた場所)
    ホワイト・カカトゥは飛び立てるようになるまで赤ん坊の頃から巣の中で大きくなる
    モクマオウの木にとまっている  黄色いトサカを立てている
    Ngaldjiba Goja(ホワイト・カカトゥの家)
    Ngarg-ngarg(ホワイト・カカトゥの鳴き声)
    Wangurunga(ホワイト・カカトゥの別の名前)
    Gulgulnga(ホワイト・カカトゥの生まれた場所)

1(f). Crow(Maralgara)
中が空洞になっている木で作られた棺桶「ログ・コフィン」も、天空に住んでいて、ある特別な星座の中に彼を見つけることができる。彼の周りの星々は、踊り、瞬くカラスの群である。木の祭壇にさらされた死体の肉をついばむカラス達は、人の死後に行われる「浄化の儀式」の最中に歌われる詠唱の一部として「wag wag wag」という声で鳴く。

    カラス達は遊んでいる
    Wonggo(カラスの言葉)
    Maraidjingo(ログ・コフィンの別の名前)
    カラスはモクマオウの木にとまっている
    カラス達は遊んでいる
    Wonggo(カラスの言葉)
    Maraidjingo(ログ・コフィンの別の名前)

2. Gabangora song cycle by Gamboa(Jiridja) (a-c)Catfish(Gandjal) and Herring(Njalg-njalg)
このトラックの最初の3曲(a-c)は、Milingimbiの南の本土に住む2匹のトーテム上の淡水魚「Gandjal(Catfish : ナマズ)」と「Njalg-njalg(Herring : ニシン)」のソング・シリーズから収録されています。私はこのトラック以降のA面収録のソング・サイクルに関する神話については調査しなかった。1曲目(a)についての歌詞とその翻訳を掲載します。

    Badeijarg(ナマズとニシンが食べる小魚)
    Djilawurwur(小魚Badeijargの別名)
    Bolwodja(ニシンの別名)
    Ganda(ナマズとニシンの住処でMilingimbiの南Gadjiの近くにある)
    水中を進む魚の尾ビレの動き
    小魚は浮き草の茂みの下に隠れている
    Bolwodja(ニシンの別名)
    Jaugarinja(ナマズの別名)
    Djilawurwur(小魚Badeijargの別名)

2(d). Large Egret(Gomola)
4番目の曲(d)は、「Gomola(Large Egret : 大シラサギ)」のソング・シリーズから収録されている。

3. Gojulan song cycle by Mundrug-mundrug(Dua)
(a)Blue Blowfly
(b)Ibis(Garala)
(c)String(Mundun)
(d)Unidentified Fish(Walabur)

このソング・サイクル「Gojulan」は、「Banimbir(Morning Star : 明けの明星、夜明けに見える金星)」のもう一つの名前である。精霊達は、毎日夜明けの度にモーニング・スターの周りで歌い、踊る。そして日が登る道へと太陽を送りだす。このトラックの4曲はそれぞれ、「Wurulul(Blue Blowfly : 青バエ)」、「Garala(Ibis : トキ)」、「Mundun(String : ヒモ)」、そして「Walabur(名前がわからないがある種の魚)」のソング・シリーズから収録されている。1曲目の歌詞は下記の通りである。

    Njini-njini(青バエの別名)
    青バエが死体のまわりをブンブンと飛んでいる
    Reibi-reibi(青バエの別名)
    Gamadigama(青バエのクランの名前)
    Njini-njini(青バエの別名)
    青バエの群れ
    青バエのブンブンという音
    Gobolo(青バエをかたどった彫像)
    青バエの群れ
    Wurulul(青バエの一般的な名前)

4. Gada song cycle by Gangalara(Dua)
(a-b)Wallaby(Gonobolo)
(d)White Butterfly(Bunba)
(e)Brolga(Manugudog)

最初の2曲(a-b)は「Gonobolo(ワラビー)」ソング・シリーズから、3曲目(c)は「Bunda(白い蝶)」、そして4曲目(d)に「Manugudog(ブロルガ : 豪州ヅル)」ソング・シリーズから収録されています。3曲目の歌詞は下記の通りである。

    Bunba(白い蝶)
    Monei-monei(その白い蝶の住処)
    Bunba(白い蝶)
    Monei-monei(その白い蝶の住処)
    Rarg(蝶の羽の模様)
    Bunba(白い蝶)
    Monei-monei(その白い蝶の住処)

5. Badaidja song cycle by Anawudjara(Dua)
(a)Lightning(Anmalbai)
(b)Tree-Platform(Bela-bela)
(c-d)Diamond Dove(Gulodog)

最初の曲(a)は「Anmalbai(Lightning : 稲妻)」、2曲目(b)は「Bela-bela(中が空洞になっている木で作られた棺桶ログ・コフィン)」、そして最後の2曲(c-d)は「Gulodog(Diamond Dove : ウスユキバト、オーストラリア最小のハト)」のソング・シリーズから収録。3曲目の歌詞は下記の通りである。

    ウスユキバトが草の種を食べている
    Gulodog(ウスユキバトの名前)
    ウスユキバトが草の種を食べている
    Gulodog(ウスユキバトの名前)
    ウスユキバトが草の種を食べている

6. Wulumunga song cycle by Djuliga(Jiridja)
(a)Mangrove(Gunabara)
(b)Sandfly(Mingga)
(c)Barramundi(Raidjara)
(d-e)Crocodile(Maridjula)

最初の曲(a)は「Gunabara(マングローブ)」、2曲目(b)は「Mingga(サンドフライ、吸血性の砂粒ほどの大きさの昆虫)」、3曲目(c)は「Raidjara(バラマンディ、体長2m重さ60kgにもなる淡水、気水、沿岸海域に住む魚)」、そして最後の4-5曲(d-e)は「Maridjula(クロコダイル)」のソング・シリーズから収録。歌詞は紹介されていない。

    ■SIDE B : 西アーネム・ランド Liverpool River Area地域のキャンプ・ミュージック
    7-10. Borg(Gunborg) Song11. Mandinda ceremony 12. Djanggawon ceremony
    ※曲名をクリックするとその曲の解説へ飛びます。

    このレコードのB面の最初の3トラックには、キャンプ・ファイヤーのまわりで娯楽のために広く歌われている典型的な西アーネム・ランドの歌が収録されています。Burara族(Blyth Riverの両岸とCape Stewartの30km内陸部のあたりに住む。正確にはNgapangaという名の部族ではないかと思われる)の男達は割礼の儀式の前とその最中に頻繁に演奏をする(西アーネム・ランドの人々は割礼を執り行わない)。「BORG(Gunwinggu語ではGUNBORG)」という言葉で一般的に知られるこれらの歌には長い歴史が無いようで、東アーネム・ランドの「MANIGAI」の神話とのつながりを感じる。どちらの歌も特定のクランの所有するものではない。どこまでがオリジナルの歌で、どこまでが以前の楽曲に由来する歌なのかは周知の疑問点なのだが、一般的にBORG、もしくはGUNBORGは、それを歌う人個人の作曲であると言われている。「BORG(GUNBORG)」のシンガーはたいてい、夢見の最中に死者の霊から歌を習ったと説明する。そして歌の言葉の内容にはあまり意味が無い。シンガーは一人で歌を歌い、同じディジュリドゥ奏者とクラップスティック奏者を伴奏に従えている。

    Mulumbugという名のシンガーはBurara族であるという点でトラック7は普通ではない。前述の通り、Burara族の人々は「MANIGAI」と呼ばれるタイプの歌を所有し、Mulumbugは彼の部族の中で唯一「BORG(GUNBORG)」タイプの歌を歌える人物であった。前の世代の不法的な結婚により、彼と彼のクランの人々は、自分達の結婚を半族の異族結婚のルールに従ったものにするために半族関係を変えてきた。それによって、埋葬の歌の連帯的な所有者であるという認識の欠落などを含んだ、彼等の儀式的地位の深刻な混乱を引き起こした。私はMulumbugの不幸な状況について彼に話しかけることによって彼を困らせはしなかったが、どうやって「BORG(GUNBORG)」ソングを得たのかを尋ねた。すると、ある晩眠っていると夢の中で彼の亡くなった兄弟がBlyth Riverの川底へと彼を連れて行き、そこで死者の霊が歌を歌うのを聞いたのだと答えた。Mulumbugは自分の部族のほとんどの男達と同様にLiverpool River地域の音楽に精通していたが、その地域の人々となにか特別な関係があるというわけではなかった。間違いなく最も東方の「BORG(GUNBORG)」スタイルの例である彼の歌は、Blyth Riverの河口付近の砂州にたくさん見つけられる食用の貝「Diama」について歌われている。彼が唯一意味があると考えている音は、最初の「Aa.....」という部分で、それは引き潮と潮の流れを暗示している。死者の霊は、貝殻の中へ貝の身を入れるために「andia mara」という魔法の言葉を使っている。「Aa aa aa, ee ee ee」という音は、死者の霊が貝があつまっている場所で貝をかき集める時の彼等の動きを表わしている。最後の「aa...」という音は自分達の生きている一族の事を考えるときの死者の霊達の郷愁の念の表現である。

    7. Borg(Gunborg) song by Mulumbug(Burara)
    8. Borg(Gunborg) song by Guningbal(Gunwinggu)
    9. Borg(Gunborg) song by Namanangmanang(Gunavidji)
    10. Borg(Gunborg) song by Nalambil(Gunbalang)

    トラック8はGunwinggu語を話すシンガーGuningbalが、トラック9はGunavidji語を話すNamanangmanangが、そしてトラック10はGunbalang語を話すNalambilが歌っている。彼の歌詞には意味が無いということが、それぞれの歌を聞いてわかった。

    11. Mandinda ceremony by a group from Eastern Arnhem Land
    12. Djanggawon ceremony by a group from Eastern Arnhem Land

    トラック11のグループで歌われているこの歌は「Mandinda」と呼ばれており、私のフィールド・ワークの最後に向かって東アーネム・ランドからの訪問者によって演奏されている。それについての情報は無い。トラック12の歌は「Djanggawon」の儀式の時に録音され、これも私にとって馴染みの薄い東アーネム・ランドの儀式である。ブーンとうねるような音は大体3.6mの長さで「Djerga(Water Goanna : 水オオトカゲ)」を表わしたものが描いてあるディジュリドゥで鳴らされている。