Wandjuk Marika、David Blanasiのソロなど非常に貴重な音源が収録されているがバラ売りはしていない。図書館などに置いてあることが多いので是非試聴してほしい。
■オーストラリアの音源部分の解説
日本のキングレコードから発売された世界の民族音楽をまとめあげた100枚CDセット『世界民族音楽大集成』のボリューム100の「オセアニアの音楽II」には5曲のアボリジナルのトラックが収録されており、その内1曲では中央アーネム・ランドのGUNBORGスタイルのディジュリドゥ・マスター「David Blanasi」のブロルガ、ディンゴ、ワライカワセミの名ディジュリドゥ・ソロ3曲を聞く事ができる。
また、一番レアなのは、北東アーネム・ランドのロック・グループ「Yothu Yindi」を輩出したRirratjinguクランの今は亡きセレモニアル・リーダー「Wandjuk Marika」のイダキ・ソロが聞ける点である。
彼の録音は数少なく、ディジュリドゥ・ソロの7インチレコード『WANDJUK MARIKA
in Port Moresby Didjeridu Solo』(EP 1977 : Larrikin)と、Wanjukが歌の解説をしている『Songs
from the Northern Territory 3』(5CD 1962-63/1996 : AIATSIS)、そしてここに収録されているものと同じ音源と思われるカセット『Music
of My People』(Cassette)のみで、彼がイダキを演奏している音源で現在購入できるものは一つとしてない。
この2大プレーヤーによるディジュリドゥ・ソロ以外の3曲は、「White Cockatoo Performing Group」結成以前の偉大なるソングマン「Djoli
Laiwanga」と、そのディジュリドゥ奏者「David Blanasi」にプラス数人のダンサーという構成でのライヴ・パフォーマンスの録音とおもわれる。フランスのライヴ盤CD『LES
ABORIGENES -Chantes & Danses de l'Australie du Nord』(CD 1979 : Arion)と似た雰囲気のライブ音源らしい音質です。多少音がこもった感じなのが残念だが、この当時の録音は非常に貴重です。
このCDは100枚でのセット販売のため、残念ながらキング・レコードからバラ売りはされていない。しかしながら、ライブラリー向けに製作されているためか主要な図書館などには置いてあることが多く、貸し出しもしてくれるので是非聞いてもらいたい。この5曲のアボリジナルの音源以外も、心暖まるアイランダー・ソングを多数収録している。特に、パプア・ニューギニアとオーストラリア北部のケープ・ヨークの間のトレス海峡にある無数の島々の島民達による歌の素朴なハーモニーが気持ちいい。
下記にはこのCDに含まれているオーストラリアの曲のみをレビューしてあります。ここで書かれている内容はライナー・ノーツとは無関係の、単なる筆者の主観的な聴感上の感想であることをご了承下さい。またその内容は推測の域を超えるものではありません。
■オーストラリアの音源部分の解説
AUSTRALIA : 15. Djedberdeh|16.
Mukh-Mukh|17. Didgeridu(an exhibition)|18.
Didgeridu|19. Ngaratj
※曲名をクリックするとその曲の解説へ飛びます。
AUSTRALIA
15. Djedberdeh
『BAMYILI CORROBOREE』(LP 1976 : Grevillea)、『LES
ABORIGENES』(CD 1979 : Arion)にも収録されている淡水魚「Rifle-fish(別名Archer Fish、和名テッポウウオ)」の歌。「Oho-」というダンサーの声がスラーして低くなってはじまるGUNBORGスタイルならではの曲である。数人のダンサー達が叫びながら会場を動き回る様子がよくわかるステレオ録音で、臨場感がある。ディジュリドゥの音は少し小さめになっている。
16. Mukh-Mukh
Mukh-Mukhとはフクロウの事で、ダンサー達がフクロウの声をまねていると思われる小さな声で奇声を発している。またソングマンDjoli Laiwangaは、フクロウの精霊から夢見の中で歌を授かっていたという事もあり、興味深いテーマである。ディジュリドゥの音はトラック15同様少し小さいが、非常にダイナミックに演奏していて、舌の動きで生まれる倍音成分をしっかりと聞き取ることができる。『The
David Blanasi Tribute Album』(CD 2002 : Big Ban)のトラック17にも同じタイトルの曲が収録されている。
17. Didgeridu(an exhibition)
David Blanasiのディジュリドゥ・ソロ3曲を連続して収録。凄まじいコールは言うまでもなく健在で、喉で生まれる低音がはっきりと演奏されている。特にディンゴの演奏では、彼持ち前のパフォーマンスが発揮され、いつもよりもさらに激しく、力強いプレイが際立っている。立続けにブラナシ作曲のディジュリドゥ・ソロ3曲が収録されているライヴパフォーマンスらしい内容です。
18. Didgeridu
Rirratjinguクラン(Dhuwa半族)のセレモニアル・リーダーとして著名なWandjuk Marikaのイダキ・ソロ。曲名は不明。Dhuwa半族らしい低音をごんごんに押していく感じがかなり渋い。中盤にトゥーツのみで演奏されるパートはヨス・インディの1stアルバム『Homeland
Movement』の8曲目の「Mambulmambul」に少し似ているが、Milkayの軽快な演奏とは対照的に、全体を通して、ヘビーでダイナミックな演奏になっている。
19. Ngaratj
Blanasi自身のグループ名にもなっているWhite Cockatooの歌。仏のライブ盤同様、ライヴでのパフォーマンス用に用意している曲らしく、客にハンド・クラップをさせての演奏。珍しく、トゥーツで終わっている。
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