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WORLD LIBRARY OF FOLK and PRIMITIVE MUSIC  Vol.5 -Australia, New Guinea
WORLD LIBRARY OF FOLK and PRIMITIVE MUSIC  Vol.5 -Australia, New Guinea
NO SL-208
Artist/Collecter Alan Lomax(Collector)
Prof. A.P. Elkin(Recorder)
Media Type LP
Area オーストラリア北部、北東アーネム・ランド
Recorded Year 不明
Label Columbia
Total Time
Price 廃盤
Related Works
ARNHEM LAND -Authentic Australian Aboriginal Songs and Dances ARNHEM LAND Vol.1 ARNHEM LAND VOL.2 ARNHEM LAND Vol.3 AUSTRALIAN ABORIGINALS! CORROBOREE!
TRIBAL MUSIC OF AUSTRALIA
SIDE A : AUSTRALIA collected by A.P. Elkin
1.
Walaka
2.Waranggan
3.Women's Tjarada
4.Men's Tjarada
5.Djerag
6.Mulara
7.Mulara II
8.Crocodile
9.Ginbir
10.Djedbangari
11.Wongga
A.P. Elkin教授が録音した様々な音源を集めて収録してある。廃盤だが今後CD化が予定されている。

■A.P. Elkin教授の解説
■ライナーの翻訳

オーストラリアとパプア・ニューギニアの音楽を集めたレコードで、『World Library of Folk and Primitive Music』というシリーズのvol.5。世界の様々な地域の民族音楽をその地域の研究の第一人者とされる民族学者のフィールド・ワークによって集められた音源とライナーノーツがすばらしい。

A面がオーストラリアで、その音源と解説は『ARNHEM LAND vol.123』(LP 1949/1957 : His Master's Voice)で知られるアボリジナル音楽研究における初期の民族学者A.P. Elkinによるもので、内容は前述のLPからの抜粋と思われる。1949年に行われたフィールド・レコーディングからのもので、40年代後半の録音はElkinによるものが唯一で、非常に貴重な内容になっている。

LPのみで発売されたこれらの音源は徐々にCD化されており、ここで紹介されているオーストラリアとパプア・ニューギニアの音源が収録されているVol.5も近々、リマスター音源によるCD発売がされる予定です。写真のオリジナル盤は東京芸術大学の小泉文夫記念資料室が所蔵しているものです。

以下はLPのバックジャケットの英文の翻訳です。

■A.P. Elkin教授の解説
このアルバムで録音されているアボリジナルの人々は、東はCarpentaria湾、北はArafura海にその境界がある、ノーザン・テリトリー州の北1/3程、約5000kFの保護区に住んでいる。

12月〜3・4月の雨期は、その地域に十分な水と食料を持たらす。魚、クロコダイル、ゴアナ(大トカゲ)が川に、貝類、亀、ジュゴン、鯨などが海に、野鳥、カンガルー、ワラビー、バンディクート(オーストラリアとニューギニアのみに住む35cm程のネズミのような見た目の雑食性の動物。カセット『Djambidj』の表ジャケットの写真を参照。)と豊富な野生の野菜類が陸地にある。したがって、その地域のアボリジナルにとって食物に困る事は全く無く、食べ物を得る手段は完全に採集、狩り、フィッシングに依存している。

アボリジナルの歌の歌詞は、人々の儀式的かつ精神的生活を支え、神話的起源がしばしば歌詞の中に盛り込まれる。実際、アボリジナルの歌を理解するために心掛ける不可欠な核心は、儀式的もしくはトーテミズム(万物には精霊が宿り、それらはクランや家族の象徴であるという考え)的な信仰とのつながり、つまりその環境に対する人の持つ全ての関わり合いとのつながりにある。

少なくとも、アボリジナル固有の文化と精神生活のある側面がアボリジナル自身と我々、両者のために維持され、発展していけばという私の望みを、アボリジナルの視覚的、音楽的な芸術を理解するようになる全ての人々と共有したいと考えている。しかしこの地域の境界上では、アボリジナル達は60年間以上ものあいだ、ヨーロッパからの居住者と接触してきており、アボリジナルの多くが、未だに現地の食物の採集や半遊牧的生活をしているが、特に若者は、ミッションや政府によるアボリジナルの居住地、牧場などへと移っていってるというのが現状だ。そこでは、教育や医療サービスが施され、雇用の条件も整っている。若者は頻繁にブッシュへ戻ってきているが、古い儀式は急速に失われていっている。だから、そういったものが消え去ってしまう前に、こういった文化をできるだけ多く、そして迅速に保存するということを確かにし、録音したほうがいいのではないかと考えている。

人類学的研究のためにアーネム・ランドを何度か訪れることで、最も興味深い現地の音楽を録音する機会に見舞われた。私は1949年に、南アーネム・ランド、中央アーネム・ランド、ダーウィンから約290km南のKatherineの北東の小さな町に、シドニー大学の最初の録音スタッフを連れて行き、「All Souls Festival(全ての霊の饗宴)」というような「Maraian」と呼ばれる重要な秘密の儀式に関する伴奏の2時間にも渡る録音に加えて、11種類もの異なったタイプの歌を録音した。

このレコードの最初の12曲は、以前に発売されたシリーズ『Arnhem Land vol.1-3』(LP 1949 : His Master's Voice)からのもので、完全ではないけれども、その地域に属する、すばらしいサンプルである。続く4曲(12〜15トラック)は、ダーウィンの東にあるミッションOenpelli、ダーウィン湾をはさんだ向こう側のDelissaville(現Belyuen)、ダーウィンの近くにあるBathurst島、北オーストラリア、それぞれにあるオーストラリア放送委員会が権利を持つシリーズから収録されている。委員会の御好意でこのアルバムの収録に使用許可をいただいている。

オーストラリアの乾燥した地域に住むアボリジナルのハードな生活とは対照的に、北オーストラリアのアボリジナル達は、生き抜くための格闘からの解放されることで、より大きなグループが共に集まり社会や儀式のために多くの時間をさくことができた。少なくとも、こういった好条件の結果として部分的に、彼等は砂漠地域のアボリジナル達よりもはるかに芸術を発展させてきた。そして、彫刻、樹皮画、洞窟画、岩場の壁画だけでなく、歌や、合唱曲のダンス、そしておそらく詩においても当てはまる。下記は、Moon Bone(月の骨)ソング・サイクルのWonguri-Mandjikaiの断片である。

    They are sitting about in camp among the branches along the back of the camp;
    Sitting along in lines in the camp, there in the shade of the paperbark trees;
    Sitting along in a line, like the new white spreading clouds;
    In the shade of the paperbarks, they are sitting resting like clouds;
    People of the clouds, living there like the mist ; like the mist sitting resting with arms on knees,
    In here towrds the shade, in this place, in the shadow of paperbarks......

■ライナーの翻訳
SIDE A : 1. Walaka2. Waranggan3. Women's Tjarada
※曲名をクリックするとその曲の解説へ飛びます。

1. Walaka
「Walaka」は南アーネム・ランドのトレード・ダンスで、物々交換や社会的動揺の雰囲気がある場合の友好関係を築く機会がある時に演奏される。ディジュリドゥの音、スティックを打鳴らす音、ダンサー達が足を踏みならす音、それぞれのダンスの次に来る最後の叫び声、シンプルだが、周期的なメロディーの下がっていくスラー(一つのシラブルの中で滑るように音程を変える歌い方)、そして一般的なキャンプの雑音をこのトラックの中で聞く事ができる。ディジュリドゥは、中が空洞になった木の管、もしくは竹で、約120〜150cmの長さで、演奏者は唇をディジュリドゥの吹き口につけ、振動させて、「didjeridu」のような音をぼんやりと発する。演奏者は通常鼻から息を吸い、一対になっているクラップ・スティックは約30cmの長さで、よく響く木を削って作られる。それぞれを手に持ちソングマン自身によって打ち鳴らされ、ソングマンがリズムを決める。

4/4拍子(クラップスティックは4拍目が抜けている)で、最初の3拍でダンサー達は3つのステップで中心の方に向かう、そして4拍目で片足をもう一方の足の前の位置に上げる。

2. Waranggan
「Waranggan」は南東アーネム・ランドと、その南のアボリジナルによく知られている人気のある「Corroboree(カラバリー:歌と踊り)」で、注意深く長い時間をかけて身体にペイントと装飾をほどこした男性、少年、女性が踊りに参加する。男性がその踊り場へと入場してくると興奮は頂点に達する。歌とブーメランをガチャガチャと鳴らす音は、徐々に大きくなり、ダンサー達の足を踏みならす音が鳴り響き、傍で見ている人々が叫び声を上げている間中、足首に縛った乾いた葉をカシャカシャと鳴らす。

この歌の基本楽器は、一対のブーメランで、それぞれの両端を互いにぶつけあって一つのビート、もしくは片方づつならして音を出す。「Iambic Style(弱強格)」(韻律-詩の音声形式-における専門用語。弱い音節からはじまる)でアクセントがつけらる、もしくはコツコツと早い連続でティンパニーのようにたたかれる。

アボリジナルの音楽を特徴付ける下降するスラーでブーメランをコツコツと鳴らす音と、もう一つの特徴である突然の高い音を終わりに向かって、聞くことができる。歌詞は神話上の出来事と、このカラバリーが広がっていったクラン(言語グループ)のリストに関するものである。

3. Women's Tjarada
「Tjarada」はCarpentaria湾の南西から、西はVictoria River、東は西オーストラリア州のKimberleyまで広く知られている「Love Song」サイクルである。男女それぞれが、それぞれのソング・サイクルを持ち、聞かれてはいけないという事は無いのだが、たいてい異性から見える所から離れて歌われる。普通、「Tjarada」はグループで歌われ、踊りには歌がともなう。個人個人がそれぞれの願望を歌詞に投影させ、時には一人で歌われることもある。テーマは願望の達成と愛の成就、夫もしくは妻を引き止めること、もしくは別の恋人を得る事などである。この歌の背景には、「Munga-Munga Women」の神話があり、Munga-Munga達は「Fertilit Mother(正しい訳は不明。創造母、もしくは多産母と訳されるのだろうか)」が大地を旅した時、その一行におり、恋の成就を果たした。

残りのライナーかLPが手に入り次第、随時和訳を追加します。