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ARNHEM LAND Vol. 1 -Authentic Australian Aboriginal Songs and Dances
ARNHEM LAND Vol. 1 -Authentic Australian Aboriginal Songs and Dances
NO OALP 7504
Artist/Collecter A.P. Elkin(Recorder)
Media Type LP
Area 西/北西アーネ・ムランド
ダーウィン周辺
Recorded Year 1949年
Label His Master's Voice
Total Time
Price 廃盤
Related Works
ARNHEM LAND -Authentic Australian Aboriginal Songs and Dances ARNHEM LAND VOL2 ARNHEM LAND VOL3 AUSTRALIAN ABORIGINALS! CORROBOREE! TRIBAL MUSIC OF AUSTRALIA
World Library of Folk and Primitive Music Vol.5
赤オーカーを身体に塗って踊るアボリジナル男性のジャケット写真もすばらしい49年録音のレコード。西アーネム・ランドのGunborgやWanggaを多数収録。

■オーストラリアのアボリジナル音楽(ライナー・ノーツの翻訳)
■ライナーの翻訳と解説

Darwin周辺やOenpelli周辺の北西/西アーネム・ランドを中心としたGUNBORGとWONGGAを多数収録。アボリジナルの音楽研究のパイオニア的存在のA.P. Elkin教授による1949年録音。もっとも古い録音の内の一つである。日常生活の中にあることを題材としたものが多く、力強くたくましい、また時にせつなく、彼等の生活が伝わって来るような現地録音。ライナーなしで、バックジャケットに解説が掲載。

LPはオリジナルと同じジャケットで一度再発されているようだ、そしてWorld Record ClubのConnoisseur Seriesから別ジャケットでもLPで再発されている。最も手に入れやすいのはCDでvol. 1とvol. 2からの抜粋として再発された『ARNHEM LAND Authentic Australian Aboriginal Songs and Dances』(CD 1993 : Larrikin)である。歴史的名盤。

下記にはバックジャケットの英語の解説の翻訳の後に、ディジュリドゥの演奏が収録されているトラックを中心に単なる聴感上での筆者の所見が加えられています。「上記はライナーの翻訳」という文章ではじまる段落には、音の響きから感じた聴感上の主観的な感想と、各曲に特徴的な音楽的構造や、楽器の特徴などのレビューが掲載されています。レビューの部分で書かれている内容はライナーとは全く関係がありません。また、レビュー部分でなされている言及は推測の域を超えるものではないという事をご了承下さい。

■オーストラリアのアボリジナル音楽(ライナー・ノーツの翻訳)

今まで、オーストラリアのアボリジナル音楽は、完全に無視されてきた。その一つの理由は地理的に近付きにくいという事があるかもしれない。実際、全ての大陸においてそこに住む全ての人々の音楽がレコードで発売されているのに、オーストラリアの先住民にはそのような機会がなかったというのは奇妙な事実である。

こに収録されているのは、オーストラリアのアボリジナルの人々についての世界的権威である民俗学者A.P. Elkin教授によってア−ネム・ランドで録音されたユニークな音源です。全てに渡って純粋なアボリジナルの音楽であり、以前はアボリジナルの人々に興味がある民俗学者の間でしか聞くことができなかった音源です。

アボリジナルの人々の住む自然のままの土地で歌い、踊った、オーストラリアのア−ネム・ランドのすばらしい音楽とリズムをお聞き下さい。

■ライナー各曲の翻訳と解説
SIDE A :1. Wongga2. Nyindi-Yindi3. Walaka
SIDE B :4. Gunborg5. Indj-Indj I 6. Gunbalanya Gunborg
※曲名をクリックするとその曲の解説へ飛びます。

SIDE A :
1. Wongga
WANGGA(Wonggaは古い綴りなので以下すべてWanggaとします)とは、Darwinより南の地方にある沿岸部に住むWagaitjクラン(海の人という意味)のキャンプ・カラバリーである。カラバリーはたいてい歌と踊りからなるが、このAnson湾周辺のWagaitjクランのWANGGAでは踊りがない。その強調部分はダンサーの動きに合わせているのではなく、繰り返し部分にある。割礼の儀式を受ける青年が近隣のクランの巡回から帰って来ると、彼等の一族が夜に少し離れた場所に集まり、ソングマンとディジュリドゥ奏者がたき火をかこんで座る。10数名の若者はその近くに立ち、もう一方に女性と子供達が座っている。ソングマンの詠唱は、下降していくスラーが重要な特徴として見られるWANGGA特有のむせび泣くような歌い声である。長く伸ばした声に、儀式に参加している若者と彼等が受け継ぐ土地に対する記憶が特徴づけられている。女性達は時折、片手を手のひらをコの字にした手にそわせて、内腿をたたいてリズムを刻んでいる。

上記はライナーの翻訳。美しい高音域の倍音成分が特徴的な、のびのあるディープなすばらしいWANGGAスタイルのディジュリドゥの演奏とメロディアスで叙情的なハリのある歌が絶妙にからみ合っている。ボーカルの音量が大きいので聞き取りにくいが、随所にハミング的な技術を混じりあわせてドローンにメロディ感を与えている、この地域のWANGGAスタイルのディジュリドゥならではの演奏を聞くことができる。前半部分は特に49年録音とは思えない良好な音質。5曲で14分弱とこのアルバムの中で最も長い部分をしめるカラバリーが収録されています。

2. Nyndi-Yindi
北のWagaitjクラン(現在ではWogaitとつづられる。Daly River河口のAnson湾周辺)とその近隣のLaragiaクラン(ダーウィンより北側の地域)による、Nyndi-Yindiのカラバリ−。時々、ソングマンの声が聞こえなくなるが、ソングマンが打つクラップスティックがテンポをキープしており、ディジュリドゥが踊りを押し進めている。ディジュリドゥは、120-150cmほどの長さの中が空洞になった木から作られ、その空洞の直径は5-7cmである。演奏者は、息を吹き込み、頬にためた空気を維持しながら息を吸う時でもその継続的な音を出し続けるのである。「Nyndi-Yindi」ダンスは力強く、アクセントとリズムに正確で、角ばったような動きで踊られる。なにか重要な出来事や、動物や精霊を説明しているのだろう。

上記はライナーの翻訳。ベタついたまとわりつくような特徴的なディジュリドゥのサウンドで、ソフトな舌の動きとルーズな唇を感じさせる。踊りのためのわかりやすい4拍子だが、ディジュリドゥは結構スピーディーなリズムをミニマルに刻んでおり、同じリズムを様々な舌の動きを使ってサウンドを微妙に変化させているのがわかる。ディジュリドゥの音や地域からも明らかにWanggaスタイルの曲である。2曲収録。

Tribal Music of Australia』(CD-R from LP 1953 : Smithsonian Folkways)のトラック13にも、同じA.P. Elkin教授が録音したNyindi-Yindi Corroboreeが収録されている。

3. Walaka
「Walaka」は南西アーネム・ランドのWadamanクランなどに見られるトレード・ソングである。こういった歌は、他のクランと会って物々交換したり、結婚を取り交わしたりする時に歌われる。シンガーによって繰り返される叫び声は、この曲における典型的な部分である。ダンサー達は単に足を踏みならすだけではなく、叫び、コールをする。ソングマンの下降するスラーは、時折ダンサー達の高いコールから出てきているようだ。歌詞は重要な出来事と場所について歌われている。

録音状態によりディジュリドゥ奏者が演奏している細かい部分は聞き取りにくいため、はっきりとした地域は不明。ライナーのWadamanクランがWardamanだとすればキャサリンとPort Keatsの中間地点くらいの地域の人々だということになる。高いピッチのディジュリドゥを割にタイトな唇で演奏しているようだ。高い倍音は録音状態からか、聞き取りにくいのが残念だがシンプルでベースがきいている。子供から大人まで踊りを楽しむ声が飛び交う、なごやかな、時に興奮した雰囲気が伝わる録音です。3曲収録。

SIDE B :
4. Gunborg by Majali Song Man
GUNBORGとは西アーネム・ランドのAligator River周辺地域のゴシップ・ソングである。テーマは日常の出来事で、スキャンダルや、ダブル・ミーニング(2重の意味合)をはらんでいることがある。さらに、その演奏は変化する可能性があり、GUNBORGスタイルに卓越したソングマンは、キャンプからその興味の対象を引き出す。つまり、最初の歌い回しは、

 Bangadi Nguridu Nguriwo Nungga Galug  Gadjegmi-ga Didj-ngoru Didj-ngoru

で、ソングマンは、食べ物が自分の所にやってくるように空想し、そして笑っている(ディジュリドゥのような「Didj-ngoru」という歌い回しが曲の最後に聞かれることがある)。音楽的なパターンには生き生きとして豊かなメロディーが聞かれ、その演奏ではキャンプ生活の背景とは対照的に、ダンサーや傍観者達の乗り出すような熱心さが表現されている。

上記はライナーの翻訳。Majali語(中央ア−ネム・ランドのRembarunga語グループの一部と思われる)を話すソングマンによる歌で、ディジュリドゥは低いディープな楽器を使用したよりGUNBORG的なスタイルでの演奏をしている。全体的に音量が小さいのが残念。ディジュリドゥのリズム、演奏方法ともにブラナシの雰囲気に近いが、即興的要素は少なく、より伴奏的な演奏をしている。2曲目からディジュリドゥの音量が上がって聞き取り易くなって、細かい倍音成分をはっきりと聞くことができます。6曲収録。

5. Indji-Indji Gunborg
ここに収録されているのは西アーネム・ランドのGunbalangクラン(Hawkesbury PointとJunction Bayの間の内陸部、Maningridaより西側の沿岸部に住む人々。Gambalangとも綴る。)のGUNBORGです。ソングマンは、この歌は亡くなった人の精霊からが授かった歌だと述べており、その精霊が「Indji」であり、1曲目ではっきりと「Indjira Balang-amo Indjabala」とその精霊について歌われている。ディジュリドゥが歌の伴奏をしており、曲のリズムでは、ダンサーが片手に持った剥ぎ取った樹皮を叩く音、足音、「Shu-si-」と言う音が特徴的である。「Shu-si-」という音は、口笛を吹く場所に舌と唇を合わせて息を吐いて鳴らされ、絶えまない動きの一つである。1曲毎に、踊りの場所から離れた後にダンサー達が地面に向かって叫ぶ叫び声で曲が終わる。この録音は、夜10時以降に行われた。

上記はライナーの翻訳。トラック4より録音状態が良好でディジュリドゥの音が聞き取りやすい。トラック4より低音のアタック感の強いサウンドが特徴的である。「Sa Su-, Sa Su-」というダンサーの発する音が入っていて臨場感ある録音になっている。曲全体を通じて全体的にリズム・チェンジが激しい。3曲目のディジュリドゥの伴奏に見られるベーシック・リズムは、他ではあまり聞かれない独特なもので、4拍フレーズの3拍目の裏拍からはじまる16分で刻む喉の使い方が非常に珍しく、すさまじい。レアなリズムを良好な録音状態で聞くことができる。また歌のメロディーも美しい。

6. Gunbalanya Gunborg
このゴシップ・ソングは、トラック5と同じシンガーによって歌われており、このソングマンは並外れた才能がある。彼は中央ア−ネム・ランドのRembaranga族出身だが、Alligator River地域のGunwinggu族の歌を数多く知っている。このGUNBORGのテーマは、その男の恋人は船で出かける彼のために荷物を準備し、そして彼の後を追いかけようとし、「一体誰と私は結婚するんだ?」といって大騒ぎをする。しかし、男は船にはのせるスペースはないので、帰ってくるまで問題を起こさないで待っているよう女に言う。曲中では、「僕らの後を追ってくるあれは誰だろう?彼女は泳いででもここへやって来るよ。」と歌われている。ソングマンのスラーとリズムがセンチメンタルな雰囲気をかもし出している。ダンサー達は静かにゆっくりと踊り場へと歩いていき、早いテンポに備えて「shu-si-si」と叫びながら、足踏みをする。

上記はライナーの翻訳。Gunbalanyaとは、Oenpelli(北西アーネム・ランド)の新しい名称。全体的にせつなく、悲しい気持ちにさせるゆったりとしたソングマンの歌うメロディ・ラインが美しく、特に3曲目のスローなパートに見られる叙情的な盛り上がり部分では、まさにGUNBORGソングの秀逸さを代表するような勇壮で、どこか寂し気なメロディーを聞くことができる。ディジュリドゥの伴奏は非常にシンプルなリズムを反復している。