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ARNHEM LAND Vol. 3 -Authentic Australian Aboriginal Songs and Dances
ARNHEM LAND Vol. 3 -Authentic Australian Aboriginal Songs and Dances
NO OALP 7516
Artist/Collecter A.P. Elkin(Recorder)
Media Type LP
Area 中央・北東アーネ・ムランド
Recorded Year 1949年
Label His Master's Voice
Total Time
Price 廃盤
Related Works
ARNHEM LAND -Authentic Australian Aboriginal Songs and Dances ARNHEM LAND Vol.1 ARNHEM LAND VOL3 AUSTRALIAN ABORIGINALS! CORROBOREE! TRIBAL MUSIC OF AUSTRALIA
World Library of Folk and Primitive Music Vol.5
3枚のシリーズ中もっとも強烈な内容で、多数の北東アーネム・ランドのクラン・ソングやDjatpangarriなどを収録した超名盤。

■オーストラリアのアボリジナル音楽(ライナー・ノーツの翻訳)
■ライナーの翻訳と解説

A面は北東アーネム・ランドのディジュリドゥ・ソロを2曲と、シークレット・ソングとなっているDjarrak(カモメ)、そしてパブリック・ソングDjedbangari(ジャッパンガリ:現在ではDjatpangarriと表記されることが多い)をなんと14曲も収録している。若者のダンス・ソングであり、オープンなカテゴリーにあるジャッパンガリをここまで一挙に収録しているアルバムは他になかなかない。Djatpangarriを多数収録しているその他のアルバムには同じA.P. Elkin教授による録音の『Tribal Music of Australia』(LP/CD-R 1953 : Ethnic Folkways)があり、このアルバムには多数のディジュリドゥ・ソロも収録されている。このLPも廃盤だが、最近になって販売元のFolkwaysレコードがオフィシャルCDーRを作製し販売されている。

さらにB面には中央アーネム・ランドの神聖なシークレット・ソングを収録した(公共の場でこの曲をかけることは禁じられている)、かなり濃厚なアルバムになっている。このアルバムのみ再発はされておらず、LPのみでしか聞くことができない。北東アーネム・ランドのイダキの演奏を多数収録したすばらしい内容です。

下記にはバックジャケットの英語の解説の翻訳の後に、ディジュリドゥの演奏が収録されているトラックを中心に単なる聴感上での筆者の所見が加えられています。「上記はライナーの翻訳」という文章ではじまる段落には、音の響きから感じた聴感上の主観的な感想と、各曲に特徴的な音楽的構造や、楽器の特徴などのレビューが掲載されています。レビューの部分で書かれている内容はライナーとは全く関係がありません。また、レビュー部分でなされている言及は推測の域を超えるものではないという事をご了承下さい。

■オーストラリアのアボリジナル音楽(ライナー・ノーツの翻訳)

今まで、オーストラリアのアボリジナル音楽は、完全に無視されてきた。その一つの理由は地理的に近付きにくいという事があるかもしれない。実際、全ての大陸においてそこに住む全ての人々の音楽がレコードで発売されているのに、オーストラリアの先住民にはそのような機会がなかったというのは奇妙な事実である。

こに収録されているのは、オーストラリアのアボリジナルの人々についての世界的権威である民俗学者A.P. Elkin教授によってア−ネム・ランドで録音されたユニークな音源です。全てに渡って純粋なアボリジナルの音楽であり、以前はアボリジナルの人々に興味がある民俗学者の間でしか聞くことができなかった音源です。

アボリジナルの人々の住む自然のままの土地で歌い、踊った、オーストラリアのア−ネム・ランドのすばらしい音楽とリズムをお聞き下さい。

■ライナーの翻訳と解説
SIDE A :
1. Didjeridu Solo-A North-Eastern Performer2. Djerag-Sacred Songs of the North Coast3. Djedbangari Corrobree-A Far North-Eastern Group4. Djedbangari5. . Djedbangari
SIDE B :
6. Camp Corroborees and Songs for the Sacred Maraian "Festival" Danced during the Sacred Maraian Ceremony
※曲名をクリックするとその曲の解説へ飛びます。

SIDE A :
1. Didjeridu Solo-A North-Eastern Performer
リズムを変化させるディジュリドゥ奏者のすばらしい演奏能力を聞くことができます。ディジュリドゥは比較的まっすぐで、約150cm程の長さ、中の空洞の直径が5-7.5cmになった木から作られる。マウスピースを小さくしたり、あたりを柔らかくするために、吹き口に樹脂のようなものがつけられる。曲は演奏順に、Djedbangari(若者のダンス・ソング)、Native Companion、Djerag(Djarrak:アジサシという鳥)。

上記はライナーの翻訳。3曲目はソングマンと共にDjarrak(ライナーではDjarrakだが不確か)が演奏されている。「Dhitu」という舌が一番前に出た時の音のキレがよく、滑舌のよいオールド・スタイルのディジュリドゥ・ソロを聞くことができる。現代のヨォルングの演奏よりもドローンが非常にメロディックに聞こえる。

2. Djerag-Sacred Songs of the North Coast
Djarrak(ここではDjeragと綴られている)は、北東アーネム・ランドでカモメを意味する言葉であり、この地域の沿岸部のソング・シリーズの名称でもある。最初の3曲では、カモメが海に飛び込み、魚をくちばしで刺し、飛び去っていく様子を、残りの曲では黒いチドリGathaka(ライナーではGadaga)とDjaliliが、岩の上に降り立つ時に小枝をくわえている様子を描いている。この鳥は秘密の名前「Nqalba」を持ち、歌の中では「Nalaba」へと変わる。その鳥は泣き声で旅するDjang'kawに陸地に近付いていることを教えたのだ。この歌のメロディは秘密とされており、リズムとシンコペーションは非常に重要とされている。時折、二人目のソングマンがメイン・ソングマンをまねるように遅れて歌いはじめる事で、偶発的にハーモニーが生まれている。

上記はライナーの翻訳。連続的に演奏されるトゥーツとドローンの繰り返しが、非常にスムーズに行われており、ブレスも細かく吸っている。ズルズルとグルーブしているドローンにおける舌の動きもさながら、歌のメロディがすばらしく、楽曲自体の美しさが光る。まさにカモメが飛ぶイメージがそのまま伝わってきそうな名曲(シークレット・ソング)。

3. Djedbangari Corrobree-A Far North-Eastern Group
Djatpangarriは、北東ア−ネム・ランドの音楽と踊りの一形式である。この曲でのディジュリドゥは単にダンスをささえるだけではなく、ダンスを左右する働きかけもする。そのサウンドは単調ではあるが、集合的で律動的であり、拍子やテンポを変え、曲のテーマを表現している。多くのDjatpangarriでは、ダンサー達は踊り場のはずれで叫び、そこからソングマンとディジュリドゥ奏者の近くになかば近付いたその瞬間に、ディジュリドゥ奏者はリズムを変化させ、ソングマンは歌をやめ、「geger」や「dau dau」、「beb beb」などのコールを歌い、ダンサーは一ケ所で足を踏みならす。ディジュリドゥ奏者は3小節程後に、その前に演奏していたリズムに戻り、ソングマンは再び歌いはじめ(前進を意味する「mardji」という言葉で歌い始められることが多い)、そしてダンサー達はまた歩みはじめる。ある種のDjatpangarri にみられるこの動きは、将校の命令に従って、行進したり、足踏みをする軍人を意味している。

歌のテーマは、それぞれの機会によって変化し、同じ言葉が違った解釈で演奏される。1曲目はそのソングマンが見たアニメに関した「Conu'c(コミックのこと)」と、小さな鳥「dabo」について歌われている。

上記はライナーの翻訳。1曲目の曲構成がクールで4拍子から3連の4割りにジャンプし、しかもクラップスティックが「1-2-3-休符」なので3連感を出しつつも4拍フレーズになっている。2-3曲目は「Dado」という名前の小さな鳥の曲で、「Dau Dau Da-u」とソングマンが歌う部分がディジュリドゥとユニゾンしてるのがおもしろい。激しくスピーディな曲。

4. Djedbangari
この録音は、Djatpangarriの音楽構造のすばらしい例である。シンコペーションが著しく、みんなが参加し、叫び、足踏みをしている。優美さとゆとりを感じさせるすばらしい演奏である。この歌は一般的に北東ア−ネム・ランドの「Bungal(Bunggulという言葉を指していると思われる)」と呼ばれるタイプに非常に近い。このBungalには、Waramiriクラン・ソングや、Djeragなどが含まれている。1曲目は単にDjatpangarri、2曲目はConu'c(gomi)で、この時ソングマンはクラップスティックをたたき、歌を歌いながらダンサー達の前に飛び出してダンサーを指揮していた。3曲目には、「A Cat in a Dee」という曲を3節収録しており、驚くべきリズムとテンポの変化が見られる。傍で見ている人々は、手の平をコの字型にして太腿をたたいて鳴らしていた。

残りの曲は別のソングマンが指揮し、まず典型的なDjatpangarriにはじまり、次にカヌーの歌、そして最後に料理についての歌が歌われる。最後の曲では水の入ったバケツを持つという意味の「lurjon」という言葉が目立ち、この曲は台所での出来事を基に作曲されている。

上記はライナーの翻訳。1-4曲目はシンプルなDjatpangarriでイダキを始めて間もない人には最適なリズム。頭にだけトゥーツが入っていて、その後のドローンのリズムを作る舌の動きがクール。5-12曲はCanoeとCookで、最後の立続けに3曲連続に途切れることなく演奏されているソング・サイクルはやばい。1曲30秒程の長さの曲を超高速で連続してたたみかけるように演奏している。舌の動きが如実にサウンドにあらわれている。

5. Djedbangari
これもまたDjatpangarri形式の歌と踊りのすばらしい一例である。

上記はライナーの翻訳。1-2曲目はトラック4とほぼ同じリズム展開のDjatpangarri。3曲目は3連の頭にトゥーツを入れてアクセントを強くおくことで、3連の「1-2-休符」のリズムでたたいているクラップスティックとユニゾンして不思議な雰囲気になっている。3曲目は録音されているDjatpangarriの中でも最もクールな曲展開をする3連から4拍子に飛ぶ曲。この曲のセンスが理解できると北東アーネム・ランドのアボリジナルがフォーカスしているノリの一部をつかめるのかもしれない。

SIDE B :
6. Camp Corroborees and Songs for the Sacred Maraian "Festival" Danced during the Sacred Maraian Ceremony
B面の全てが中央アーネム・ランドの神聖かつシークレット・ソングになっている。ディジュリドゥの伴奏なしのクラップスティックと歌のみ。シークレットとなっているため、内容の公開を控えています。