国際先住民年を記念してCD化された49年録音という現在手にすることができるディジュリドゥが入った音源で最古のアルバム。音質は悪いがマストです。
■オーストラリアのアボリジナル音楽(ライナー・ノーツの翻訳)
■ライナーの翻訳と解説
アボリジナル音楽の民俗学的研究の先駆者A.P. Elkin教授による1949年録音のレコード『ARNHEM
LAND vol. 1とVol. 2』から抜粋され、1992年の「国際先住民年」を記念して、CDとしてLarrikin
Entertainmentから再発されたものです。残念ながら現在廃盤になっているとされているが、入荷しました。ジャケット12Pでライナーの解説はLPのものと同じです(英語)。
現在手にすることができる最も古い音源を含んだアボリジナルのCDの一つで、音量のレベルが低く、録音状態は現在のものと比べるとお世辞にも良いとはいえないが、逆にその内容はよりリアルなものを感じさせるフィールド録音になっている。北西アーネム・ランドのWANGGAや、中央ア−ネム・ランドのGUNBORGダンス・ソングが数多く収録されており、歌い、踊り、叫ぶ、熱狂的なアボリジナルのカラバリー(歌と踊り)を多数収録した歴史的なアルバムです。他にも、ディジュリドゥの伴奏の伴わない神聖な曲Djaradaや、Warrangganに加えてDhuwa半族の埋葬の儀式で歌われるMularaなど貴重な録音を聞くことができる。
現在LarrikinはMushroomレコードに吸収合併され、その実体は無くなっている。内容が貴重なだけにリリースが維持されることを祈りたい。
以下はライナーの翻訳に加えて、「上記はライナーの翻訳」という文章ではじまる段落には、ライナーとは無関係のディジュリドゥのサウンドの印象や曲調などについてのレビューが追加されています。
■オーストラリアのアボリジナル音楽(ライナー・ノーツの翻訳)
オーストラリアのアボリジナル音楽は、数千年にも渡るドリームタイムと呼ばれる世紀から脈々と続く伝統の一部である。アボリジナル音楽は非常に複雑で、人々と土地を一つにする「地母神」に密接に関係していおり、アボリジナルの人々の創造的表現のようなアボリジナル文化に深く関わっている。ドリームタイムとは、人生の円環と宇宙の役割を詳しく説明した伝説で、人の到来、火と水がもたらされ、カンガルーとゴアナの到来、そして人の死など多くの事を伝えている。ドリームタイムは、数多くの先住民社会の民間伝承の遺産である知彗と同一であり、それは「時という手」によって優しく磨き込まれてきた一粒の真珠のようなものである。
アボリジナル音楽は、表面的には伝統音楽としてその単純な構造にその魅力がある。しかし、アボリジナル音楽が簡潔だというのは浅薄な考えであり、それは放浪的な生活様式から生まれ、昔から延々と続いている演奏によって育まれた、高度に発展してきた伝統音楽であるという事が、さらなる探究によって明らかになっている。アボリジナル音楽は、神聖な音楽から儀式的な音楽まで、そして社会的な音楽から現代的な音楽まで様々である。それには、オープンな公的な歌もあれば、選ばれた人だけが聞く事ができる歌もある。彼等の歌は部族の霊的な暮らしの一部であり、儀式の時に歌われ、部族の歴史を実証し、祝いや祭りごとの際に歌われるのである。「Corroboree(アボリジナルの歌と踊りを表す英語)」を見る機会があった人であれば、アボリジナルの祝祭において、その音楽と踊りは最も重要な要素であるという事がわかるだろう。
アボリジナルの伝統社会の人々は放浪者であり、物質的な装飾を避けてきた。この事実が、ディジュリドゥとクラップスティックという数少ない楽器だけが祖先からの遺産として彼等の手元にあるという事を説明しているのかもしれない。オーストラリアに隣接しているパプア・ニューギニアと違ってアボリジナルの楽器には、太鼓や笛、口琴などは見られない。その分、すばらしく複雑なディジュリドゥの演奏技術を発展させ、循環呼吸に裏付けられた複雑な音楽構造を演奏する。金属的なパーカッシブなサウンドがシンプルな形をしたクラップスティックで鳴らされる。他にも、種のサヤをガチャガチャと鳴らす楽器や、ブル・ロ-ラー、そして踊りの足踏みなどの音の要素がある。
このCDにはオーストラリアのアボリジナルの歴史の重要な一部が収録されており、興味深い歴史的記録でもある。残念な事にオーストラリアでは、口承の歴史や民間伝承の記録に積極的ではなく、多くの仕事が残されている。この録音は、アボリジナル文化の記録におけるパイオニア的仕事で国際的に知られているElkin教授の晩年の仕事である。このフィールド録音は、商業的に販売するというよりも民俗学的な記録のために録音されたので、ブッシュやキャンプ地の自然環境の音と共にアボリジナルの音楽が収録されています。そして、その記録はアボリジナル音楽を商業的に手にする事ができる最初の音源として、1957年にEMIレコードから販売され、それが「国際先住民年」である今年1992年に再発されるという事は、非常に喜ばしい。
今まで、オーストラリアのアボリジナル音楽は、完全に無視されてきた。その一つの理由は地理的に近付きにくいという事があるかもしれない。実際、全ての大陸においてそこに住む全ての人々の音楽がレコードで発売されているのに、オーストラリアの先住民にはそのような機会がなかったというのは奇妙な事実である。
ここに収録されているのは、オーストラリアのアボリジナルの人々についての世界的権威である民俗学者A.P. Elkin教授によってア−ネム・ランドで録音されたユニークな音源です。全てに渡って純粋なアボリジナルの音楽であり、以前はアボリジナルの人々に興味がある民俗学者の間でしか聞くことができなかった音源です。
アボリジナルの人々の住む自然のままの土地で歌い、踊った、オーストラリアのア−ネム・ランドのすばらしい音楽とリズムをお聞き下さい。
■ライナー各曲の翻訳と解説
1. Wongga|2. Nyindi-Yindi|3. Walaka|4. Gunborg|5. Indj-Indj I 6. Gunbalanya Gunborg|7. Warranggan|8. Men's Djarada|9. Women's Djarada|10. Mulara|11. Ngorungapa
※曲名をクリックするとその曲の解説へ飛びます。
SIDE A :
1. Wongga
WANGGA(Wonggaは古い綴りなので以下すべてWanggaとします)とは、Darwinより南の地方にある沿岸部に住むWagaitjクラン(海の人という意味)のキャンプ・カラバリーである。カラバリーはたいてい歌と踊りからなるが、このAnson湾周辺のWagaitjクランのWANGGAでは踊りがない。その強調部分はダンサーの動きに合わせているのではなく、繰り返し部分にある。割礼の儀式を受ける青年が近隣のクランの巡回から帰って来ると、彼等の一族が夜に少し離れた場所に集まり、ソングマンとディジュリドゥ奏者がたき火をかこんで座る。10数名の若者はその近くに立ち、もう一方に女性と子供達が座っている。ソングマンの詠唱は、下降していくスラーが重要な特徴として見られるWANGGA特有のむせび泣くような歌い声である。長く伸ばした声に、儀式に参加している若者と彼等が受け継ぐ土地に対する記憶が特徴づけられている。女性達は時折、片手を手のひらをコの字にした手にそわせて、内腿をたたいてリズムを刻んでいる。
上記はライナーの翻訳。美しい高音域の倍音成分が特徴的な、のびのあるディープなすばらしいWANGGAスタイルのディジュリドゥの演奏とメロディアスで叙情的なハリのある歌が絶妙にからみ合っている。ボーカルの音量が大きいので聞き取りにくいが、随所にハミング的な技術を混じりあわせてドローンにメロディ感を与えている、この地域のWANGGAスタイルのディジュリドゥならではの演奏を聞くことができる。前半部分は特に49年録音とは思えない良好な音質。5曲で14分弱とこのアルバムの中で最も長い部分をしめるカラバリーが収録されています。
2. Nyndi-Yindi
北のWagaitjクラン(現在ではWogaitとつづられる。Daly River河口のAnson湾周辺)とその近隣のLaragiaクラン(ダーウィンより北側の地域)による、Nyndi-Yindiのカラバリ−。時々、ソングマンの声が聞こえなくなるが、ソングマンが打つクラップスティックがテンポをキープしており、ディジュリドゥが踊りを押し進めている。ディジュリドゥは、120-150cmほどの長さの中が空洞になった木から作られ、その空洞の直径は5-7cmである。演奏者は、息を吹き込み、頬にためた空気を維持しながら息を吸う時でもその継続的な音を出し続けるのである。「Nyndi-Yindi」ダンスは力強く、アクセントとリズムに正確で、角ばったような動きで踊られる。なにか重要な出来事や、動物や精霊を説明しているのだろう。
上記はライナーの翻訳。ベタついたまとわりつくような特徴的なディジュリドゥのサウンドで、ソフトな舌の動きとルーズな唇を感じさせる。踊りのためのわかりやすい4拍子だが、ディジュリドゥは結構スピーディーなリズムをミニマルに刻んでおり、同じリズムを様々な舌の動きを使ってサウンドを微妙に変化させているのがわかる。ディジュリドゥの音や地域からも明らかにWanggaスタイルの曲である。2曲収録。
『TRIBAL MUSIC OF AUSTRALIA』(CD-R from
LP 1953 : Smithsonian Folkways)のトラック13にも、同じA.P. Elkin教授が録音したNyindi-Yindi Corroboreeが収録されている。
3. Walaka
「Walaka」は南西アーネム・ランドのWadamanクランなどに見られるトレード・ソングである。こういった歌は、他のクランと会って物々交換したり、結婚を取り交わしたりする時に歌われる。シンガーによって繰り返される叫び声は、この曲における典型的な部分である。ダンサー達は単に足を踏みならすだけではなく、叫び、コールをする。ソングマンの下降するスラーは、時折ダンサー達の高いコールから出てきているようだ。歌詞は重要な出来事と場所について歌われている。
録音状態によりディジュリドゥ奏者が演奏している細かい部分は聞き取りにくいため、はっきりとした地域は不明。ライナーのWadamanクランがWardamanだとすればキャサリンとPort Keatsの中間地点くらいの地域の人々だということになる。高いピッチのディジュリドゥを割にタイトな唇で演奏しているようだ。高い倍音は録音状態からか、聞き取りにくいのが残念だがシンプルでベースがきいている。子供から大人まで踊りを楽しむ声が飛び交う、なごやかな、時に興奮した雰囲気が伝わる録音です。3曲収録。
4. Gunborg by Majali Song Man
GUNBORGとは西アーネム・ランドのAligator River周辺地域のゴシップ・ソングである。テーマは日常の出来事で、スキャンダルや、ダブル・ミーニング(2重の意味合)をはらんでいることがある。さらに、その演奏は変化する可能性があり、GUNBORGスタイルに卓越したソングマンは、キャンプからその興味の対象を引き出す。つまり、最初の歌い回しは、
Bangadi Nguridu Nguriwo Nungga Galug
Gadjegmi-ga Didj-ngoru Didj-ngoru
で、ソングマンは、食べ物が自分の所にやってくるように空想し、そして笑っている(ディジュリドゥのような「Didj-ngoru」という歌い回しが曲の最後に聞かれることがある)。音楽的なパターンには生き生きとして豊かなメロディーが聞かれ、その演奏ではキャンプ生活の背景とは対照的に、ダンサーや傍観者達の乗り出すような熱心さが表現されている。
上記はライナーの翻訳。Majali語(中央ア−ネム・ランドのRembarunga語グループの一部と思われる)を話すソングマンによる歌で、ディジュリドゥは低いディープな楽器を使用したよりGUNBORG的なスタイルでの演奏をしている。全体的に音量が小さいのが残念。ディジュリドゥのリズム、演奏方法ともにブラナシの雰囲気に近いが、即興的要素は少なく、より伴奏的な演奏をしている。2曲目からディジュリドゥの音量が上がって聞き取り易くなって、細かい倍音成分をはっきりと聞くことができます。6曲収録。
5. Indji-Indji Gunborg
ここに収録されているのは西アーネム・ランドのGunbalangクラン(Hawkesbury PointとJunction Bayの間の内陸部、Maningridaより西側の沿岸部に住む人々。Gambalangとも綴る。)のGUNBORGです。ソングマンは、この歌は亡くなった人の精霊からが授かった歌だと述べており、その精霊が「Indji」であり、1曲目ではっきりと「Indjira Balang-amo Indjabala」とその精霊について歌われている。ディジュリドゥが歌の伴奏をしており、曲のリズムでは、ダンサーが片手に持った剥ぎ取った樹皮を叩く音、足音、「Shu-si-」と言う音が特徴的である。「Shu-si-」という音は、口笛を吹く場所に舌と唇を合わせて息を吐いて鳴らされ、絶えまない動きの一つである。1曲毎に、踊りの場所から離れた後にダンサー達が地面に向かって叫ぶ叫び声で曲が終わる。この録音は、夜10時以降に行われた。
上記はライナーの翻訳。トラック4より録音状態が良好でディジュリドゥの音が聞き取りやすい。トラック4より低音のアタック感の強いサウンドが特徴的である。「Sa Su-, Sa Su-」というダンサーの発する音が入っていて臨場感ある録音になっている。曲全体を通じて全体的にリズム・チェンジが激しい。3曲目のディジュリドゥの伴奏に見られるベーシック・リズムは、他ではあまり聞かれない独特なもので、4拍フレーズの3拍目の裏拍からはじまる16分で刻む喉の使い方が非常に珍しく、すさまじい。レアなリズムを良好な録音状態で聞くことができる。また歌のメロディーも美しい。
6. Gunbalanya Gunborg
このゴシップ・ソングは、トラック5と同じシンガーによって歌われており、このソングマンは並外れた才能がある。彼は中央ア−ネム・ランドのRembaranga族出身だが、Alligator River地域のGunwinggu族の歌を数多く知っている。このGUNBORGのテーマは、その男の恋人は船で出かける彼のために荷物を準備し、そして彼の後を追いかけようとし、「一体誰と私は結婚するんだ?」といって大騒ぎをする。しかし、男は船にはのせるスペースはないので、帰ってくるまで問題を起こさないで待っているよう女に言う。曲中では、「僕らの後を追ってくるあれは誰だろう?彼女は泳いででもここへやって来るよ。」と歌われている。ソングマンのスラーとリズムがセンチメンタルな雰囲気をかもし出している。ダンサー達は静かにゆっくりと踊り場へと歩いていき、早いテンポに備えて「shu-si-si」と叫びながら、足踏みをする。
上記はライナーの翻訳。Gunbalanyaとは、Oenpelli(北西アーネム・ランド)の新しい名称。全体的にせつなく、悲しい気持ちにさせるゆったりとしたソングマンの歌うメロディ・ラインが美しく、特に3曲目のスローなパートに見られる叙情的な盛り上がり部分では、まさにGUNBORGソングの秀逸さを代表するような勇壮で、どこか寂し気なメロディーを聞くことができる。ディジュリドゥの伴奏は非常にシンプルなリズムを反復している。
7. Warranggan Camp Ceremony
「Warranggan」は、Roper Riverの中上流(中央アーネム・ランド)の部族が執り行う神聖な儀式で、高度に秘儀とされている母神の儀礼、「Kunapipi」神話と関係している。「Warranggan」の儀式はRoper RiverやVictoria River周辺部で生まれ、アーネム・ランドのあちこちへと広まった。そのわけは、イニシエーションを通じて霊的に新しくなるという事と、儀礼を通過した者は生まれ変わるという二つの教義が人気をはくしたからだ。
「Warranggan」の儀式は、この母神が男女の一団をひきいて旅したその旅路を祝うものである。「Munga-Munga」と呼ばれる女性達は、しばしば婚姻のルールを破って男達を誘惑した。儀式ではその「Munga-Munga」を表している女性達は、大きな枝の影を通って踊り、そこでは鳥の羽毛を血でくっつけて身にまとった男達が歌の伴奏をしている。男達は、誘惑されて踊り場へとやってきて、優雅に、そして精力的に演じる。興奮するにつれて、音楽のテンポ、アクセント、そして熱気も上がっていく。男達が足踏みをすると、彼等の足首に結ばれた乾燥した葉っぱがサラサラと鳴る。数人いるシンガーは全て男性で、それぞれがブーメラン・クラップスティックを鳴らしている。次に続く2曲「Djarada」ソングとこの「Warranggan」ソングでは、ディジュリドゥもクラップスティックどちらも使われず、両曲ともそれぞれの曲中の歌詞は、2-3の単語のみで構成されており、その順番を変化させながら繰り返される。
上記はライナーの翻訳。こういった「ソング・ライン」(もしくは「ドリーミング・トラック」)と言われる祖先の旅路を歌う歌では、ディジュリドゥが使われる事は少ない。ここではブーメランと歌に踊りになっている。時に激しく、大地を踏み締めながら、ブーメランを打鳴らす。トレモロがかったブーメランの音がおもしろい。3曲収録。『SONGS
FROM THE NORTHERN TERRITORY 5』(CD 1962-63/1996 : AIATSIS)で見られるタイプの曲。
8. Men's Djarada / Love Chant
「Djarada」とは求愛の歌。その歌を聞けば、欲された異性は歌い手を好きになる。歌詞に使われる引喩は遠回しで、シンガーの声は聞こえても姿は見られない。「Djarada」というのは「Kunapipi」神話と前述の「Munga-Munga」に由来し、欲望という意味である。どんな種類の「Djarada」も立続けに歌われなかればいけない長い一連の歌で、この中の最初のあたりの曲から選出されたアイテムを使ったり、多くの繰り返しが使われる。地域によって異なったソング・サイクルが用いられ、この録音は南アーネム・ランド(場所の詳細は不明)のものである。
上記はライナーの翻訳。クラップスティックと複数の男性の歌。クラップスティックがキンキンとした金属的な音なのが印象的である。ディジュリドゥの伴奏は無い。5曲収録。『TRIBAL
MUSIC OF AUSTRALIA』(CD-R from LP 1953 : Smithsonian Folkways)のトラック12には、ディジュリドゥの伴奏をともなった「Djarada」が収録されている。
9. Women's Djarada
下記は、歌われている歌詞です。
- e: warera e: warera langgana bandjana djalwera djalora
- e: dangia lai na:berende nabera lai
- wandjurgaba lindjurgaba madang gani
- e: walai walai berngeinj waibara daba
歌詞(1)で歌われているのは、「Munga-Munga(古代に母神Kunapipiと共に旅をした一人以上いたとされる女性の神)」の恋が成就し、望まれた男性は自分の女(おそらく妻?)の所に戻って来たいという気にさせるという内容になっている。
上記はライナーの翻訳。複数の女性による高い声での歌と鈍い音のスティック(不明)と缶らしい物を時折たたいている。30〜60秒程の短い曲を8曲収録しており、ディジュリドゥの伴奏は無い。
10. Mulara of Central Arnhem Land
北アーネム・ランドと中央アーネム・ランドの部族からもたらされた一連の歌。「Mulara」はディジュリドゥとクラップスティックの伴奏で歌われ、1曲づつが伴奏なしの叙唱と叫び声で終わる。この聖なる歌は亡くなった人の骨をログ・コフィンと呼ばれる大きな木をくり抜き、聖なるペインティングを施された棺桶に納められるまで続けられる。全ての人は先祖が旅して来たライン、もしくは道とつながりがあり、死後、亡くなった人のラインは聖なる歌によって人々の記憶に残る。歌われる内容は、そのライン上にある聖地、自然の中にある特徴、動物、鳥など。最初の3曲は「Barangali」という聖地にいるコウノトリ、最後の2曲は「Nyilba(Rock Wallaby)」とその盟友「Bunda」という鳥。「Mulara」はDhuwa半族の歌である。
上記はライナーの翻訳。ディジュリドゥの演奏にトゥーツ(ホーン)の音が多様されているため、北部/東北部の中央アーネム・ランドと推測される。ドローン(持続低音)の感じは、聞き取りにくいため不明だが、ちょうど西アーネム・ランドの南地域のBeswick周辺と北東アーネム・ランドのヨォルングの演奏方法、両方のニュアンスを感じさせる部分があるように感じさせる。
11. Ngorungapa of Central Arnhem Land
これはMularaに似ているが、Yirritjaの歌で、曲のテーマは魚を気絶させるために使われる毒を含んだ皮をもつ木とすももである。
中央アーネム・ランドでの録音。ディジュリドゥの音が小さいため詳細は不明だが、トラック11と同様にトゥーツを連続して演奏する部分が印象的である。2曲収録。
|