初代イダキ奏者Milkaynguの冴え渡るスピーディーでキレのよいサウンドが鬼気せまる。Yothu Yindiはロックバンドだが、このアルバムには伝統曲が9曲収録されている。
■ライナーの翻訳と解説
北東アーネム・ランドのヨォルングのロック・グループ 「Yothu Yindi」の1stアルバム。北東アーネム・ランドのGumatjクラン(Yirritja半族)とRirratjinguクラン(Dhuwa半族)の伝統的なクラン・ソングが全15曲中9曲収録されており、ヨス・インディのアルバムの中でも最も伝統曲が多く収録されている。
ヨス・インディの初代ディジュリドゥ・プレーヤーMilkayngu Mununggurr(Djapuクラン : Dhuwa半族)のタイトでスピーディな演奏がすさまじい。Djaluに代表されるDhuwa半族のオールドマン・スタイルのダイナミックでディープかつヘビーな演奏スタイルとはまた違った、Milkayの軽快でポップでスピーディな演奏スタイルを聞くことができます。北東アーネム・ランドの演奏スタイルに興味がある人はド・マストな1枚です。
下記には音の響きから感じた聴感上の主観的な感想と、各曲に特徴的な音楽的構造や、楽器の特徴などのレビューが掲載されています。レビューの部分で書かれている内容はライナーとは全く関係がありません。また、レビュー部分でなされている言及は推測の域を超えるものではないという事をご了承下さい。
■ライナーの翻訳と解説
6. Gamadala|7. Garrtjambal|8.
Mambulmambul|9. Gudurrku|10-12. Barrwula
Part 1-3|13-14. Gunmarra Seq 1-2
※曲名をクリックするとその曲の解説へ飛びます。
6-14. TRADITIONAL MUSIC
Vocal & Bilma(Clapsticks) : Bakamana Yunupingu
Vocal & Bilma(Clapsticks) : Witijana Marika
Yidaki(Didjeridu) : Milkayngu Mununggurr
6. Gamadala
ノーザン・テリトリー州のKakadu国立公園内にある崖の歌。北東アーネム・ランドの人々(Yolngu:ヨォルング)にとって、その崖が人々と全ての生き物にとっての生命力をささえていると考えているため、非常に神聖な存在である。このストーリーはヨス・インディ基金からリリースされたDjaluの2枚目のアルバム『Contemporary
Master Series vol.6 : Djalu Teaches & Plays Yidaki 2』(CD 2003 : YYF)の2曲目の「Yidaki
Dhawu(イダキ・ストーリー)」でも同様の崖について語られている。イダキの音が小さく、細かくイダキのサウンドを知ることができないが、トゥーツを多用したリズムが演奏されている。同じタイトルの曲をアカカンガルーとして『Contemporary
Master Series vol. 4 : Mamba』(CD 2001 : AIATSIS)のトラック28-32に3曲収録されている。
7. Garrtjambal
GarrtjambalとはRed Kangarooの事で、崖の岩に描かれたカンガルーの静脈について歌われている。ゆったりとしたリズムで長いトゥーツを多用しており、コールも多く入るため、ブロルガの曲にトゥーツが多く入ったような印象がある。スムーズで美しいトゥーツの音がすばらしい。
8. Mambulmambul
聖なる場所でカンガルーの肉を食べるヨォルングの人々について歌われている。コールを多用したこの曲の基本リズムは、このアルバムに収録されている曲の中でも一番ポップ感が強く、イダキのリズムそのものが非常にポップである。トゥーツのみでリズムを刻んいる中盤部分は特にこの曲の雰囲気を出している。やわらかいトゥーツがスムーズにドローンと切り替わっている。
9. Gudurrku
Brolga(豪州鶴ー灰色のツル)の歌。ブロルガが、天高く飛び上がり、鳴き、生命の源である太陽から舞い降りくる様子や、湿地帯でブロルガが餌を食べている様子が歌われている。5分というトラディショナルではかなり長目の曲で、最初はスロー・テンポにはじまり、途中半分程で早いテンポで、ブロルガの鳴き声を模倣したコールを多用したリズムに変わる。この変わり目の所で、ソングマンとイダキのコールがユニゾンしている。そして再度スロー、そしてファストになって終わる。一生をつがいで過ごすブロルガは、ヨォルング(北東アーネム・ランドで人を意味する言葉)の人生におきかえられたりして、非常に好まれる題材であり、リズミックでグルーヴ感の高いファスト・パートはこのブロルガの曲の最大の魅力だろう。
10-12. Barrwula Part 1-3
Barrwulaとは生命の泉の歌。ヨォルングの女性が、水を探しに聖地を出る。泉とその力とBarrwulaとその女性の関係性が歌われている。Dhuwa半族の曲。1曲目はゆっくりのリズムで、クラップスティックとユニゾンした長いトゥーツのみのリズム部分が印象的である。
2-3曲目は1曲目とうってかわって、かなりリズミックでスピーディになっている。特に後半部分のトゥーツとコールのいりまじった複雑なパートはテクニック的にも音楽的にも超絶である。このアルバムで最もリズミックなトラックで、特にエンディング部分での激早のトゥーツは脱帽である。ミルカイらしいやわらかなトゥーツとダイナミックなコールがすばらしい。リズム割りが強烈!!!北東アーネム・ランドの近年のスタイルの中でも最も洗練された美しいサウンドと演奏スタイルを聴くことができる珠玉の名演奏です。
13-14. Gunmarra Seq 1-2
Guamtjクランの言葉で歌われているYirritja半族に属する歌。骨張った淡水魚Gunmarraと、その魚の住む環境についての歌で、淡水に浮かぶ泡と近隣のクランについて表現されており、パワフルな場所について触れている。トラック14ではトゥーツが多用されたリズムが全体的に使われているが、フラットでクールに演奏されており、コントロールされたきれいなサウンドを聞くことができる。
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