独自の文化を育んだBathurst島とMelivle島の島民「TIWI」の人々の音楽を集めた唯一の7インチEP。
■ライナーの翻訳
■TIWIの録音を含む音源
非常に貴重なTIWIの音楽のみを集めた7インチ・レコード。TIWIとはダーウィン北部に浮かぶ二つの隣接した島、Bathurst島とMelville島に住むアボリジナルの人々の総称です。「Purintringa」と呼ばれる非常にユニークなデザインの墓標が有名で、オーストラリアのアボリジナル・アートの本などで頻繁に紹介されている。この島の音楽にはディジュリドゥが使われることはなく、オーストラリア本土のアボリジナル文化とは異なる独自性を持っている。
TIWIの音楽としてまとめられているのはこの7インチ・レコードだけで、その他には『DIDJERIDOO
-Australian Aboriginal Music』(CD 1969 : PlayaSound)のトラック3でBathurst島の老人達の歌、『Songs
from the Northern Territory 5』(CD 1962-63 : AIATSIS)のトラック7-10では男子学生達の歌、『TRADITIONAL
ABORIGINAL MUSIC -Sounds from Bush』(CD 1998 ARC)でも聞くことができる。中でも『SONGS
FROM THE NORTHERN TERRITORY 5』では詳しく、音楽的特徴を述べているのでここで紹介しておきたいと思います。
大人の演奏者によってTiwiの人々の儀式が執り行われる時、Bathurst島とMelville島のダンス・ソング「Yoi」の主な特徴は下記の通りである。
- 単調な詠唱
- パーカッシヴな音のみが伴奏に使われる(主に、おしりを叩くか手拍子)
- 規則的に繰返されるメトロノームのようなリズムで曲が構成されている
- コールやその他の(動物や鳥などを)模倣した声で曲が終わる
TIWIのアートについては様々な情報があるようだが、音楽についての情報は少なく、音源も非常に限られている。そういう点では、このレコードは唯一のTIWI音源を集めたものとして非常に高い価値があるでしょう。下記にはライナーの翻訳が掲載されています。サウンドについてのレビューは追って追加されます。
■ライナーの翻訳
Tiwiとはダーウィンの80km北にあるBathurst島とMelville島に何千年も住んでいるアボリジナルの人々のグループの事である。オーストラリア本土と似通った地理と気候であるため、Tiwiの人々の生活様式が本土のアボリジナルの人々と比較されることがあるが、Tiwiはその孤立性から独特ですばらしい文化を育んできた。Tiwiは多くのオーストラリア本土のアボリジナルが共通して使うディジュリドゥや、ウーメラ、ブーメランを使わない。また、肉体的試練をともなうイニシエーション(通過儀礼)や割礼を行わない。伝統的にTiwiは、非常に過ごしやすい環境で安全に、牧歌的な生活を送り、年長者と調和しているというのがその特徴である。たくさんの妻と子供に囲まれ、近隣の外敵におびやかされることもなく、年長の男達は他のクラン・リーダーを訪ね、人とその自然環境に関する重要な儀式活動を共有し、この二つの島の間を行き来する。Tiwiの儀式には女性や子供の参加が禁じられることはなく、壮観で力強い歌と踊りに全ての人が参加する。身体、顔、そして身に付ける装束は、非常に凝った華麗なデザインでペイントされ、色とりどりの羽で飾られる。Tiwiの儀式の中でも最も壮観なのは、「Pukamani(埋葬の儀式)」である。この儀式では生者は「Purintringa」と呼ばれる複雑に削られ、ペイントされた墓標の周りで踊りを死者に捧げるのである。
それらは伝統に深く根ざしているのだが、Tiwiの人々は歌や踊り、パントマイムなどで行われる現在の行事をよろこんで録音させてくれる。歌と踊りで使われる新しいテーマは「Bombing of Darwin(ダーウィンの空爆)」、「Cyclone Tracy(ダーウィンに多大な被害をおよぼしたトレーシーと名付けられたサイクロン)」、「Armstrong on the Moon(月面におりたったアームストロング)」などである。
昔から続いている彼等の音楽は3万年以上もオーストラリアの自然環境と関係しており、今回Aboriginal Arts Boardの要請を受けてAboriginal Artists AgencyとAustralian Broadcasting Commissionが協力してはじめてステレオ録音という手段でBathurst島で録音されました。
|