ワックス・シリンダー(鑞管)で1910年に録音されたオーストラリアでも最も古い音源の一つを収録した世界の民族音楽集。
■ライナーの翻訳
この2枚組のLPは、ベルリン大学心理学協会のPhonogramm-Archivが所有する120本のワックス・シリンダー(鑞管)からセレクトされた世界各地の民族音楽が収録されています。いずれもテープレコーダーが発明される前のかなり古い音源で、それだけで歴史的価値は高いが、ワックス・シリンダー録音だけにノイズが多く、音域も狭く、音質は悪い。
その中でオーストラリアの録音はLP1のB面9曲目に収録されている1曲だけで、残念ながらディジュリドゥの音は入っていない。西オーストラリア州Broomeから約120km北、Dampier半島の西海岸に位置する「Beagle
Bay」というコミュニティで録音された。
Beagle Bayコミュニティは1980年にカソリック教会がミッションを設立し、伝統的にNyul Nyul(ライナーではNiolniolと綴られている)の人々が住んでいる。
ライナーは音楽学的かつ研究的であるため、一読してもいまいち要領を得ない。またこの音源の録音背景などについても触れられていないため、その内容を推し量る事は難しい。シリンダー録音ということで非常にノイズが多く、その音楽的内容を単に音から推測することも困難であるため、1910年の録音という希少性においてこの音源の価値があるように思える。
■ライナーの翻訳
Band 8. Cylinder 40. Beagle Bay Mission, Northwest Australia 8(31; 1910; Niolniol)
曲名は「Merge Nolo」で手拍子とコーラス。Dampier Landの黒人の歌。このコレクションの録音はそれぞれ音質にかなりのむらがある。数多くの部族の人々がこのミッションを訪れた時に録音されたもので、その内容はいまだ研究はされていないが、たった1冊だけ出版された本がある。それがCarl Stumpf著の「Anfange der Musik」(Leipzig,1911/「音楽のはじめ」法政大学出版として日本語版も出ている)で、Stumpfは、シンガー達の手拍子はドラムとササラで伴奏されるべきであると考えている。
H-d; FT-12KC; ET-3; 多少の表面的なノイズ; かなりにぶい音質; 録音の最後は極端にスピード・アップするのをカバーするためにフェードアウトされている。[リズム伴奏には、ブーメランかクラップスティックが使われているかもしれない。ブーメラン、クラップスティックともにこのエリアで一般的な楽器です。]
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