backnext
BUSHFIRE -Traditonal Aboriginal Music
BUSHFIRE -Traditonal Aboriginal Music
NO EUCD 1224
Artist/Collecter Ambrose Cummins(Recorder)
Media Type CD
Area キンバリー周辺
Recorded Year 1991年
Label ARC MUSIC
Total Time 52:23
Price 2,200 yen
Related Works
ABORIGINAL MUSIC FROM AUSTRALIA ABORIGINAL SOUND INSTRUMENTS THE AUSTRALIAN ABORIGINAL HERITAGE AUTHENTIC ABORIGINAL MUSIC -Music from the Wandjina Peopl SONGS FROM THE KIMBERLEYS SONGS OF ABORIGINAL AUSTRALIA and TORRES STRAIT
1-8.WANGGA
9-11.WANGGA
12-15.WANGGA
16-18.WANGGA
19-24.WANGGA
25-36.DJUNBA
西キンバリー地方Derby付近のWANGGA。ディジュリドゥの音量も大きく、キンバリー地方の録音の中でも秀逸なディジュリドゥのサウンドを聞くことができる。

■参加ミュージシャン
■録音の詳細
■キンバリーの音楽
■WANGGA
■DJUNBA
■ライナーの解説
■キンバリーの録音を含む音源

西キンバリー地方のDerbyという都市から南東10km程の所にあるMowanjumコミュニティにて録音。ジャケットからは一見、伝統音楽ではなさそうな雰囲気がするが、列記とした録音状態の良いキンバリー地方の伝統音楽です。ディジュリドゥと歌のバランスが良く非常に聞き易い好録音になっています。

またディジュリドゥの演奏、歌ともにクールで、近年の録音ながらこの地域のものとしては最もすばらしい内容と言える。ルーズな唇とバックプレッシャーの薄さを感じさせるざらついたサウンドが特徴的で、この地域を代表するディジュリドゥをともなうソング・スタイルであるWANGGA(このアルバムではWONGGAと表記されている)を24曲、ディジュリドゥなしの歌DJUNBAを11曲収録しています。主観的な見解ではキンバリー地方のWANGGAの録音で最もすぐれた録音の一つと思われる。

下記は6Pブックレットの内1Pのみに「参加ミュージシャン」、「録音の詳細」、「キンバリーの音楽」、「WANGGA」、「DJUNBA」と掲載されている英語での解説の翻訳です。ライナーの翻訳の後に、各曲の解説がのっていますが、ライナーでは曲解説が全く無いため、聴感上の音の響きを元にしたレビューのみが掲載されています。レビューの部分で書かれている内容は、ライナーとは全く関係がなく、レビュー部分でなされている言及は推測の域を超えるものではないという事をご了承下さい。

■参加ミュージシャン
このアルバム「ブッシュファイヤー」にはキンバリー地域の最も優れたミュージシャンが参加しています。まず第一に音楽には同一性があるのだが、リズム、ハーモニー、そして音楽的表現のわずかなバリエーションの差を評価するようになる。ミュージシャンそれぞれは自分自身の明確なスタイルを持つ。例えば、個人的なディジュリドゥのサウンドは、Campbell Allenbar、Christopher Fry、そしてRastus Willinjiによって異なっている。

■録音の詳細
ここに収録されている音楽は、西キンバリー地域のDerbyから約10km離れた所に位置するアボリジナル・コミュニティMowanjumで、フィールド録音機材を用いて録音された。Mowanjumは現在では独立したコミュニティだが、元々は主にWorora、Ngarinyin、そしてWunambalの三つの部族からなるミッション(教会が管理するアボリジナルの居住地)だった。演奏の多くは、ミュージシャン達が快適に感じ、のびのびと演奏することができる静かなブッシュの中で行われた。

■キンバリーの音楽
このアルバムには2種類のスタイルの音楽が収録されている。それはWANGGAとDJUNBAで、ともに数千年前から存在してきた伝統的な音楽スタイルである。全ての歌にはそれぞれ日常の出来事から、何世代も前から語り継がれて来た伝説まで、歌の中で語られるべきストーリーがある。

伝統音楽として知られているのだが、新しい歌が継続的に「夢見」られている(これは歌を作曲するという時に使われるアボリジナルの人々の表現)という事実において、まさに生きた音楽なのである。ここに収録されている音楽の全ては、オープンな歌だが、ある種のイニシエーション(通過儀礼)の歌のようにアボリジナルの人々によって秘密にされている歌が数多く存在している。

■WANGGA
ある種のダンスに女性が出席し、参加することが時々あるのだが、基本的にWANGGAは部族の男達によって演奏されるダンス・ソングである。ディジュリドゥ奏者、クラップスティック、そしてリズムを決める一人もしくはそれ以上のソングマンがそれに参加する。その踊りはユニークで、エネルギッシュで非常にめざましい。儀式の時には、ダンサー達は伝統的な模様で自分達の身体を塗り、たき木の火のそばで踊りを踊るのである。

■DJUNBA
この音楽スタイルでは、男性がクラップスティックをたたき、女性が手拍子をしながら男女両方がハーモニーで歌を歌う。ディジュリドゥの伴奏は無い。その歌はまずリード・シンガーによって始められ、そのすぐ後にその他のシンガー達が歌いはじめる。ハーモニーはわずかでユニークなリズムで演奏される。

下記は各曲のレビューで、ライナーでは曲解説が全く無いため、聴感上の音の響きを元にしたレビューが掲載されています。また細かい各曲解説ではなく、演奏者ごとにトラックをまとめてレビューがなされています。

■ライナーの解説
1-8.WANGGA9-11.WANGGA12-15.WANGGA16-18.WANGGA19-24.WANGGA I 25-36.DJUNBA
※曲名をクリックするとその曲の解説へ飛びます。

1-8. WONGA
Songman : Dusty Legune
Didjeridoo : Campbell Allenbar
順にLove Song、Mosquito、Buffalo、Bushfire、Initiation Song、Saltwater、Mook Mook、Darwin Cyclone。
曲の頭のディジュリドゥの吹き出し部分が少し変わっている力強い演奏である。サウンド的には枯れた感じで、唇がゆるく大きく振動しているために、プレッシャーを力強くかけるという感じでは無いようだ。そのためか、舌が後ろにカールバックしてプレスした時に、ドローンがカットアップされたような感じになっているようだ。それが逆によりパワフルな演奏になっている。このディジュリドゥ奏者Campbell Allenbarの演奏はどちらかと言えば、一般的なWANGGAスタイルのサウンドではなく、よりGUNBORG的であり、しかもGUNBORGにもあてはまらない個性的な演奏になっている。

トラック3のバッファロー・ソングは『Songs from the Northern Territory vol.1』(CD 1961-62 : AIATSIS)のトラック13にも2曲同じ曲が収録されており、'62年にBelyuenコミュニティにて録音されたものと、ここで聞かれるものとでは、同じWANGGAスタイルでも音の響きが同じ曲でも随分と違う。是非聞き比べてほしい。

9-11. WANGGA
Songman : Dusty Legune & Arthur Toby
Didjeridoo : Nelson Barunga
順に、Bushfire、Mook Mook、Love Songの3曲。1-8トラックのディジュリドゥ奏者よりも、よりタイトな倍音成分が強調的な演奏。このプレーヤーは非常に安定したプレッシャーを維持した状態で演奏しており、音も渋い。曲の雰囲気はDjoli Laiwangaの曲に近いが、GUNBORG特有の「Oho-」という長いスラーの声は入っていない。

12-15. WANGGA
Songman : Arthur Toby & Jimmy Mullane
Didjeridoo : Christopher Fry
Brolga、Mudlark、Buffalo、Black Cockatooの4曲。このCDに収録されている曲の中でも、おおらかなリラックスした雰囲気が伝わる秀逸な内容と録音状態です。ディジュリドゥの演奏もかなり渋く、舌を寝かした状態であまりダイナミックに動かさずに前後させるように吹き続けていると思われる低音部のドローンと、喉の動きで生まれる倍音を生かしていると思われる演奏の良い例です。ディジュリドゥの音量もでかくて聞き易い。非常にシンプルなリズムを繰り返しており、しかも舌はあまり複雑に動いていないので、WANGGAやGUNBORGのスタイルを目指す人が最初に試してみるのにはいい例だろう。BelyuenコミュニティのWanggaソングの最高峰ともいえる音源『Rak Badjalarr』(CD 2001 : AIATSIS)は必聴です。

16-18. WANGGA
Songman : Collier Bangmorra
Didjeridoo & Song: Arthur Toby & Jimmy Mullane
Open Plain、Initiaion Song、Brolgaの3曲。ディジュリドゥのサウンド、ボーカルの歌い回しともにディープでゆったりしており気持ちいい。

19-24. WANGGA
Songman : Arthur Toby & Jimmy Mullane
Didjeridoo : Rastus Willinji
Lilga、Mosquito、Mosquito、Initiation Song、Chinaman、Fishing Songの6曲。カット・アップしたようなリズムと舌先の動きが変わっているディジュリドゥの演奏。他ではあまり聞かれない音で不思議な感じがする。

25-36. DJUNBA
Songman : Lorrie Utemorrah, Daisy Utemorrah, Amy Peters, Pudja Barunga, Daisy Martin
曲名は順にFast Walk、Lightning、Dugout Canoe、Wounded Warrior、Bushwoman、Breast Mountains、Daduru、Body Painting、Baby、Whirlpool、Cyclone Tracy、Stranger
DJUNBAは複数の男女がハーモニーを歌う曲で、男性がクラップスティック、女性が手拍子、ディジュリドゥは無しという構成の演奏スタイルになっている。録音状態が良く、よく聞くと虫の音まで入っているクリアーな録音。メロディが素朴で美しく、ハート・ビートより遅めのリズムでの歌い回しが台湾などにみられるアイランダー・ソング的な響きを感じさせる。

■キンバリーの録音を含む音源
・『Aboriginal Music from Australia』(LP/CD 1959-69 : Philips/UNESCO)
・『Aboriginal Sound Instruments』(CD 1963-68/1996 : AIATSIS)
・『Australian Aboriginal Heritage』(2LP 1973 : Australian Society for Education Trough the Arts)
・『Authentic Aboriginal Music-Music from the Wandjina People』(CD 1995 : ARC)
・『Instrumental Music of Asia and the Pacific Series 3-3』(3 Cassette 1985 : ACCU)
・『Songs from the Kimberleys』(CD 1968/1996 : AIATSIS)
・『Songs of Aboriginal Australia and Torres Strait- O'Grady Series』(CD-R from LP 1954-60 : Folkways)

特に一番最後のFolkwaysのCDーR『Songs of Aboriginal Australia and Torres Strait- O'Grady Series』のライナーノーツでは、キンバリー地方でディジュリドゥがいつ頃から使われるようになったかという考察がされており、非常に興味深い。