ユネスコ・アジア文化センターが製作した3本組カセット+ブックレット。特にブックレットの内容がすばらしく、楽器の解説や音楽概要などアボリジナル音楽入門向き。非売品。
■オーストラリア
■アボリジナル音楽のカテゴリーと地域
■ライナーの翻訳と解説
■推薦文献と音源
東京のACCU(ユネスコ・アジア文化センター)が発行・所蔵している121ページのブックレット付きの3本組カセット・セットシリーズのヴォリューム2-3。アジアと大平洋各国の民族音楽を収録しており、その内の一部にオーストラリアの録音を10曲収録している。残念ながら非売品だが、東京のユネスコ・アジア文化センターで貸し出しているので一般の人でも聞くことができる。シリーズ2-2とは別内容です。
アボリジナル音源のバイブル的存在である5枚組のCD『Songs from the Northern Territory』の録音でも知られるAlice M. Moyle博士のセレクションによるアボリジナル音楽の録音の一部とその概要の説明は濃厚かつ、非常に興味深く、このブックレット内容だけでも必見である。『Songs from the Northern Territory』にも解説されてない詳しい内容を知ることができる。ブックレットの解説もシリーズ2-2とはかぶっていない。
また、北オーストラリアの幅広い地域の録音と音楽的特徴を網羅しており、まさにアボリジナル音楽の入門編としておすすめできる内容になっている。中でもアボリジナルの曲の中でも公開できるオープン・ソングを3種類に系統だててカテゴライズしている内容は非常におもしろい。
ここで収録されている音源はディジュリドゥの演奏を含む東アーネム・ランド地域のGroote Eylandt、西オーストラリア州のキンバリー地方、Darwin南西部のWANGGAソング、中央砂漠地域、南アーネム・ランドBorroloolaや、クイーンズランド州のCape Yorkなど多岐に渡った地域の音楽を収録。特にディジュリドゥの伴奏とソロを収録したGroote Eylandtのものは秀逸で、その解説も詳しく、「Emeba(クラン・ソング)」の解説は中でもかなり詳細に渡っている。
下記はカセットとは別に付属している121ページの別冊子の中のオーストラリアの部分のみが翻訳され、掲載されています。
■オーストラリア
オーストラリアのアボリジナルの音楽は、まず第一にヴォーカル・ミュージックもしくは声楽にある。伝統的に楽器だけで演奏される曲のようなものはないが、歌の伴奏においては、様々な楽器が使われる事で、かなりの音楽的多様性を産んでいる。それらの楽器は主に木製で、簡単な構造で、ほとんどの場合非常に早く作られ、演奏中に音程を変えるための規則的なメカニズムはない。曲のメロディー・ラインはいつもヴォーカル・ラインになっている。
こういった楽器の内のいくつかは、音楽以外の目的にも使われる。例えば、様々な形やサイズがあるブーメンランは狩りの時には投げつける棒として使われ、片面に刻みを入れた投槍器は小さい棒で擦られ、ギコギコという伴奏の音を出すのに使われる。アボリジナルの楽器のいくつかは、単独で演奏される。ある儀式の間、ある特定の神話上の存在の表現する際に、歌無しで演奏される。
最も広くみられる楽器はパーカッシヴな音を出す楽器(スティックを打ち付けたり、ブーメランをクラップスティックのように打ち付けるなど)で、音を長く維持して出すのが可能な唯一の楽器は、ドローン(持続低音をだす)チューブ、つまりディジュリドゥである。
■アボリジナル音楽のカテゴリーと地域
アボリジナルの音楽は、全ての人が聞いても問題の無い「Open」ソングと、イニシエーション(通過儀礼)を受けた男性だけが聞くことができる、制限された「Closed」ソングの2つに分類されるだろう。「Open」の部類には一般的に3種類のカテゴリーがあり、儀式や祭儀に属するもの、クラン(言語グループ)や家族に属するもの、個人に属するものの3種類にわけられる。
これら3種類のカテゴリーに属するソング・アイテムを区別する特徴は、音調曲線と声域、歌詞における言葉の繰り返し、声を使ったある特定の手法、歌の伴奏をする楽器の種類、そしてその楽器の使われ方に見られる。南回帰線より北のオーストラリアの地域、より正確に言えば地図上の番号6と7を結ぶ線(BroomeとCape Yorkの東海岸のつけ根あたりを結んだ線)よる上の地域では、伴奏に使われる楽器のバラエティは豊である。次の4ケ所の地域では、伴奏楽器の使用によって、明確にそれぞれの地域の伝統的音楽スタイルを特徴づけている。
- Arnhem Land(ノーザン・テリトリー州北部)
一対のクラップスティックとディジュリドゥ(クランと個人に属するソング・アイテム)
- Cape York Peninsula(クイーンズランド州北部 ケープ・ヨーク半島)
皮製のドラムと種をガチャガチャと鳴らす音(個人に属するソング・アイテム)
- North-central Coast of Western Australia(西オーストラリア州の北部中央沿岸部)
ギシギシと擦る音や槍投器をこする音(個人に属するソング・アイテム)
- Central and Western Desert(中央/西部砂漠地帯)
1.一対のブーメラン 2.一対のスティック そして1と2に関しては女性による膝を叩く音がある(儀式、クラン、個人に属するカテゴリー)
■ライナーの翻訳と解説
1. Yiraga(didjeridu) and Alyingha(Sticks)|2. Ramulwari(Boomerang Clapsticks) / Yarangindjirri(Name of Song Series)|3. Kali(Boomerang Clapsticks) / Ol'manli(Old Man)|4. Kanbi(didjeridu) and Tiltil(Sticks) / Wongga(Dance Song Series)|5. Min-ga(Paired Sticks) and Burrm(Lap-slapping) / Djanba(Dance Song Series) I 6. Mirru(Rasp) / Djabi(Thabbee or Tabi Song)|7. Bibara(Paired Sticks) / Dira Song "Plowler"|8. Urlur(Seed Rattle), Poi(Drum), Guitars, Spoons and Ukulele / Island-style Songs
※曲名をクリックするとその曲の解説へ飛びます。
TAPE 1 / SIDE A : AUSTRALIA
1. Yiraga(ディジュリドゥ) and Alyingha(クラップスティック)
a). Mamarika(East Wind) / 1:30
b). Yinungwakarda(Eagle) / 1:22
c). Duwalya(Curlew or Night Bird) / 1:01
d). Instruments Only / 0:24
Mamarika、Yinungwakarda、そしてDuwalyaは、現在Groote Eylandtに住んでいる14のクランの内の3つを表わすソング・アイテムである。Alyingba(スティック)とYiraga(ディジュリドゥ)は「Emeba(クランに属する曲)」の歌の伴奏に使われる。
「Emeba」はそれぞれのクランの男性の年長者達によって歌われ、息子が父親からそれらの歌を歌う権利を引き継がれる。その歌は夜分に非公式に演奏されるか、誰かが亡くなった時や、言い争いをおさめる時に儀式的に演奏されるようだ。ここでの録音は、ダンスを伴わない非公式の場合である。
クラン・ソングの歌詞はそれぞれの歌い手によって自由に即興で歌われ、主にそのクランの人々が属するある領域、そしてこれらの領域に見られる植物、動物、鳥、魚がいる特定の場所について触れられている。風、船舶、飛行機は「Embeba」のテーマとして選ばれたものの一部である。
原則として、スティックもたたく「Emeba」のシンガーが、曲のテンポを決め、スティック、ディジュリドゥ、ヴォーカルの順で曲が始まる。クラップスティックの最後のビートは、ディジュリドゥの最後の高い音と同時に起こることもあるのだが、この曲が始まる順番は曲の最後で反転する。
1-(a)のMamarikaソングの伴奏をしているYiraga(Didjeridu)奏者は、最初に選んだ楽器があまりよくなく、一瞬演奏を止め、そして他の楽器に変えているが、ドローン(持続低音)の音の変化にかかわらず、シンガーは平然と歌い続けている。
「Emeba」の演奏を特徴づける「Yiraga(Didjeridu)」と「Alyingba(Sticks)」の連動したリズム・パターンはある特別な名前で知られている。また歌を2つのセクションに分ける、名付けられていない短いブレイク・パターンもある。
1-(a)Mamarikaの伴奏楽器の主なパターンは「Nididarrbukuna(短くキープさせる)」、そして1-(b)のYinungwakardsのパターンは「Yirrukwanjirra(Fast:速い)」と呼ばれている。1-(c)のDuwalyaの伴奏とGroote Eylandtの録音の最後のセクションである1-(d)の楽器のデモンストレーションのリズム・パターンの名前は、それぞれ「Yirukurukwudarrbawuya(少し短いもの)」、そして「Nirukburukburruwajina」と呼ばれている。最後のリズム・パターンの名前に相当する英語の言葉は無く、Yiraga(Didjeridu)による3(符点)拍ごとにスティックが3拍という構成になっている。
演奏者:Amakwula、Awerrikba、Amadadaクランのメンバー
言 語:Enindilyakwa
地 域:Groote Eylandt
-Didjeridu(ディジュリドゥ)- ドローン(持続低音)・チューブが伝統的に使用されるのは、ノーザン・テリトリー州の北部アーネム・ランド地域である。この地域のある特定の言語グループには、ドローン・チューブに対してそれぞれ独自の名前がある。例えば、Yiraga、Kanbiなど。英語を話すオーストラリア人には一般的にDidjeridu(Didgeridoo、Digerydooなど)と呼ばれている。
このオーストラリアのディジュリドゥは、白蟻が食べて空洞になった木の枝か、竹でできている。竹よりも長期に渡って使用できるため木製のチューブの方がより好まれる。東アーネム・ランドとGroote Eylandt(地図上の6)では、そのはるか西の地域と比べて(地図上の4)よりその長さは長く、中の空洞が狭いディジュリドゥが演奏される。Groote EylandtのYiraga(Didjeridu)の平均的サイズは下記の通りである。
長さ:1,450mm
空洞の直径:25mm(マウスピース)
77mm(ボトム)
時にビーズ・ワックス(蜜蝋)で滑らかにされるマウスピースはしっかりとプレーヤーの口のまわりにフィットする。演奏者は頬に空気をため、鼻からすばやくスッと息を吸うことによって演奏し続け、舌と唇のリズミカルな動きによって、さまざまな音のパターンが演奏される。演奏者は、例えば「Drrr-Drr-la Drrr-Drr-la」という音節のシリーズを楽器なしではっきりした唇の動きを使って練習する。
ある種のディジュリドゥの伴奏では、吹いている音に声を足して演奏する。東アーネム・ランドでは、「吹き込まれた音(トゥーツを意味していると思われる)」(基本のドローン音から9度か10度上であることが多い)が歌と結びついている。
ディジュリドゥの演奏者は、自らスティックを打ちつけているシンガー(達)のそばに座るか、歩くか、立っているかして演奏する。もっとも一般的な座ってでの演奏の時は、楽器の出口を足の上において、半円型の貝殻やバケツ、もしくは地面にむけて演奏する。
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2. Ramulwari(Boomerang Clapsticks) / Yarangindjirri(Name of Song Series)
中央/西砂漠地域付近の男性のアボリジナルによる歌。この地域ではディジュリドゥはなく、主にブーメランのクラップスティック、一対のクラップスティック、木製の武器を打ちつける、もしくは大きなスティックで地面をたたくなどが歌の伴奏の種類である。
歌は一般的に、反復される言葉のパターンとGroote Eylandtのクラン・ソングよりも広い音域で、一段づつと下がっていく声のメロディックな幅で構成されている。
若いアボリジナルの少年達は、伝統的に一連の通過儀礼を通じて成人男性になるために準備をするが、地域によっていくつかの関連事項は異なっている。43の似通ったもののシリーズの一番最初のこの曲は、非公式の儀式にて録音された。儀式的には、このソング・シリーズは割礼の儀式の準備のために歌われていた。「U-wi U-wi」という最後のコール(呼び掛ける声)は、クラップスティックが3回打つ間に一対の音節が歌われ、儀式を受ける若者を傷つけるものから守ると信じられている。
演奏者:Wanderang(最初の歌い手)のメンバーとNunggubuyu言語グループの人々
地 域:南アーネムランド(地図上の2番-Borroloola周辺地域)
-Alynbga, Tiltil, Bibara, etc.(クラップスティック)- |
多くのアボリジナルの歌を特徴づけるスティックをうちつける音は、歌とダンスの両方のテンポを決めている。ある意味では、スティックの音というのは、Corroboree(アボリジナルの歌と踊りを指す英語)が進行中であるということを見物人に伝えるための信号であるといえる。一対のスティックはそれゆえに硬い木から作られ、力強く打ちつけられる。
ソング・スティックは形が様々で、他のものよりも長いことが多い。北西アーネム・ランドでは、特定の曲のテーマに合うように様々な形に彫刻される。例えば、トカゲ型(一対のクラップスティックの大きい方)はLizard(トカゲ)ソングの伴奏に、自生している玉葱の葉型は、「Wild Onion(自生の玉葱)」ソング・シリーズの、そしてヤムイモ型はYam(ヤムイモ)ソングの伴奏に使われる。
クラップスティックを打つ時には、歌い手はしっかりと大きい方を持ち、小さい方のスティックで打ちつける。いくつかの歌の演奏では、大きいスティックか、ヤリ投げ器を地面に置いてそれを打ち付ける。 |
3. Kali(Boomerang Clapsticks) / Ol'manli(Old Man)
穴が空いたブーメランを持っている老人について歌った、Walbiriの少年による彼自身の遊び歌。自分の歌の最も低い声の部分は歌いずらそうだったが、クラップスティックはリズミックにそして自身に満ちた物腰で演奏している。この演奏が何人かの少年の仲間達を楽しませているという事がこの録音のバックに聞こえる声からもわかる。
演奏者:Walbiri言語/部族グループ
地 域:中央砂漠地域(ノーザン・テリトリー州)
-Ramulwari, Kari, etc.(ブーメラン・クラップスティック)- |
一対のブーメラン・クラップスティックがシンガー達のグループによって打ちたたかれて鳴るガチャガチャした音を聞けば、それが中央/西砂漠地域のグループによる演奏だということがわかる。この地域のブーメラン・クラップスティックは、投げるブーメラン、もしくは投げて戻って来るブーメランとは異なる形状をしている。この他の地域のブーメランが幅が広いのに対して、ブーメラン・スティックの多くは、長く少し曲がっており、、三日月型の刃で先が細くなっている。
それぞれを手にもち、1-2回刃を擦り合わせる動きでギシギシと鳴らしたり、細くなったブーメランの先をすばやく交互に叩くことでガチャガチャという音やトレモロ効果を出したりする。 |
4. Kanbi(didjeridu) and Tiltil(Sticks) / Wongga(Dance Song Series)
このWANGGAソング・アイテムは、ソングマン個人に属し、Anson湾付近のソングマンの故郷の領域にある、日陰を作る木について歌っている。Anson湾はDarwinの南に位置し、その地域ではディジュリドゥは「Kanbi」、クラップスティックは「Tiltil」と呼ばれている。
Groote Eylandtのクラン・ソングとは違って、WANGGAソングの始る順番は、たいていディジュリドゥ、クラップスティック、そしてヴォーカルの順である。ディジュリドゥのドローン(持続低音)を聞くことでWANGGAのソングマンはその曲の音程を計り知るのである。
ここで収録されている曲のディジュリドゥの豊かなサウンドは、アーネム・ランドの西沿岸地域の典型的なドローンの伴奏で、東アーネム・ランド沿岸やGroote Eylandtの「Yiraga(ディジュリドゥ)」のクラン・ソングの伴奏では、比較的ドライなドローンとはっきりと違う二つの音色が使われる点でかなり異なっている。
ここでのWANGGAソングは、7回の約1オクターブにわたる下降する長い声で構成されており、それぞれのその長い下降する声は「Di」という音節の繰り返しによって強調されている。この曲では、それぞれの構成音は、声、ディジュリドゥ、そしてスティックの順に演奏を終えている。最後のパーカッシブなビートは最後にピタリと止まるような効果をもたらしているようだ。
演奏者:Brinkin(Marithiel)言語グループのメンバー
地 域:西アーネム・ランド(ノーザン・テリトリー州) 地図上の4番ーDARWINの南西沿岸部
5. Min-ga(Paired Sticks) and Burrm(Lap-slapping) / Djanba Dance Song Series
このDjanbaソングは、同一のソング・シリーズ30曲以上の内の最初の曲で、男性によって演奏されるMin-ga(一対のクラップスティック)と、女性シンガーによるBurrm(膝をたたく音)に手拍子という伴奏形態で演奏されている。ダンスを伴うこのソング・シリーズはPort Keatsの青年によって作曲され、そこから200kmも南のKununuraの3人の若いリード・シンガーによってこの地域にもたらされた。この録音は、この地域で年一回行われる馬の競争会の時にこの3人のリード・シンガーによって演奏された。演奏に関して言えば、DjanbaはWANGGAのようにディジュリドゥを伴った西アーネム・ランドのダンス・ソングで、この1968年のダンス・パフォーマンスは、ロックンロールにもなぞらえられていた。
バックには多くの聴衆が参加し、ダンサーのコール(呼び掛け声)が歌い手の声に混じって聞くことができる。歌と踊りを融合するスティックを打つ音の役割が、このDjanbaの演奏では明確で、最初のスティックを伴わない歌だけの間、ダンサー達は踊り場をゆっくりと歩き回り、エネルギッシュなスティック、手拍子、膝を打つ音の開始とともに、ダンサー達はすばやく動き、飛び上がるようなステップに変わる。このソング・アイテムは4つの部分に別れており、それぞれが3つの低く下降する声で構成されており、リード・シンガーが出すスティックの音にきっちりと従っている。
演奏者:Garamaung(Garama)言語グループのメンバー
地 域:東キンバリー地方(北西オーストラリア) 地図上の5番
6. Mirru(Rasp) / Djabi(Thabbee or Tabi)Song
近年のDjabiソングの作曲は、西オーストラリアの西部に残された数少ないアボリジナルのグループのみに限定されており、ここで紹介されている2トラックは、西砂漠の西周辺部のLa Grangeで録音され、はるか南のPort Headland沿岸地域にいる歌い手達に捧げられている。
西オーストラリアのアボリジナル文化における初期の研究者であったDaisy Batesによる20世紀初頭の文書によると、かつては(人を)呪術師にするためのダンス「Pooilgoora」の演奏に関連して「Thabbee」ソングがよく歌われたものだった。Daisyによると、ダンスの間、「Kogar」と呼ばれる点と線と溝で描かれた平べったい棒を呪術師になるとされる男の右の鼻の穴にその棒が見えなくなる頭の中まで押し上げるとされている。その男性は明らかに死ぬが、「Mammangurra(呪術師)」となって甦る。「Thabbee」もしくは「Tabi」ソングは、演奏の間中、年老いた男性達によって歌われる。(Ms Daisy Bates / P30 of XI, 1a / National Library of Australia)
Mirru(切り込みをいれたスティック、もしくはヤリ投げ器)は、Dijabiソングの伴奏のみに使われ、近年ではダンスや人を呪術師にする事とは関連がなくなっている。現代の「Djabi」ソングでは、最近の出来事やソングマンのイマジネーションを刺激した物事に関した、じっと見つめたものや、個人的な物事が題材として使われている。ここで収録されている「Djabi」ソングは飛行機についてである。
演奏者:Mangala言語グループのメンバー
地 域:西砂漠地帯(西オーストラリア州の北西部) 地図上の6番
-Mirru or Djabi Stick- |
小さな鋭い縁をしたスティックを切り込み、もしくは溝をつけた大きなスティックの上を擦り合わせる。ヤリ投げ器かMirru(切り込みをいれたスティック)であると思われる大きい方のスティックは、3つの動き(下-上-下)か4つの動き(下-上-下-上)のセットで、座ったシンガーによって、伴奏の音を演奏される。ガチャガチャというサウンドの代わりになるものとして、二つの斧の頭部分が地面で鳴らされることもある。 |
7. Bibara(Paired Sticks) / Dira Song "Plowler"
Bibara(Paired Sticks) / Dira Song "Plowler"
「Dira」ソングの伴奏をするBibara(スティック)は、シンガー自身の手によって、目を見張る技術と正確さをもって演奏される。ほぼ20年前に録音されたこの歌は、この地域の数人の男性にのみ知られる若干数の遺物の内の一つで、この歌が今後演奏される事はありそうもないだろう。当時、若い歌い手達が伝統的な歌に関心がなく、「Island Style」(Torres海峡の島々から伝わってきたクイーンズランド州北部の本土のアボリジナルの人々の歌唱スタイル)の歌に彼等の好みがあるということを、これらの古い歌を受け継ぐ年老いたソングマン達は心配していた。
「Prowler」とは、戦士のように身体をペイントし、鼻に棒を通した伝説の男性に関した歌で、その男は略奪し、盗み奪うために北方からやってきた。
演奏者:Khunggai言語グループのメンバー
地 域:東Cape York(クイーンズランド州北部) 地図上の7番
8. Urlur(Seed Rattle), Poi(Drum), Guitars, Spoons and Ukulele / Island-style Songs
a). Korara(Name of Boat)
b). Sunset
「Island Style」という言葉は、現地の言葉で歌われ、オーストラリア本土のアボリジナルによって作曲された歌であり、それは、現代のTorres海峡の島々の歌のスタイルの影響を受けている事を指す。様々な種類のIslandソング(島歌)は、おそらく長年に渡ってオーストラリア本土に影響をおよぼしてきた。その入り口の主なポイントは、クイーンズランド州の北端から先にあるThursday島であったと思われ、そこでは多くの島々の人々が北オーストラリア本土の人々と接触してきた。
スキン・ドラムと種をガチャガチャと鳴らす伴奏に対するハーモニーになった歌は、Cape Yorkで広がり、たまたま参加することになったギターやウクレレ奏者は、彼自身の伴奏を加え、歌に参加している。
そういった歌はクリスマスの祝福のような特別な出来事の為に作曲され、練習される。踊りがはじまれば、男性のダンサー達は、草のスカートを身に着け、種の房を手に歌い、ガチャガチャと種を振り鳴らし、スキン・ドラム奏者はたいていダンサー達のそばを歩く。ここで紹介されている二つの歌は、踊りを伴わない非公開の歌の最中に録音された。Koraraというのは、補給船の名前で、オーストラリア北部の沿岸地域に住むアボリジナルにはこの名前で広く知られている。
この録音で聞くことができるスプーンやギター、ウクレレは、「Island Style」のメロディのようであり、それはアボリジナルがオーストラリア現地のものでは無い音楽に触れた結果である。
演奏者:Kokomidien、Kundjen、Kokobera言語グループのメンバー
地 域:西Cape York(クイーンズランド州北部) 地図上の8番
-Poi (ドラム)-
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トカゲやワラビーの皮を使ったドラムは、空洞になった短い丸太の一方にその皮を接着剤でとめられているか、ワイヤーか籐の輪でとめているかのどちらかである。ドラムは片手で持ち、もう一方の手で打ち鳴らされる。 |
-Urlur(種をガチャガチャと鳴らす楽器)- |
Seed Rattle(種をガチャガチャと鳴らす楽器)は、マッチ箱にいれた豆の一部分で、ヒモに通されている。「Island Style」のダンサー達の手に持たれ、ダンス・ソングが演奏される時には、踊り、振り鳴らされる。 |
-Spoon (スプーン)- |
スプーンはクイーンズランド州のCape Yorkにて非伝統的な歌の伴奏で使われ、金属的でキンキンとした音が鳴る。使用されるスプーンは普通のキッチン・スプーンで、スプーンの背同士を隣り合わせて片手に持ち、一緒に叩く。まず最初に、膝を打ち、そしてもう一方の手のひらを下にむけ膝の上方に据え、その手の平にスプーンを打って演奏する。 |
■推薦文献と音源
・『The Australian Aboriginal Heritage』
Berndt, R.M. and E.S. Philips, eds / Sydney : Ure Smith 1978(Second Edition) / Also a set of colour slides and cassettes of recorded music
・『Songs from the Northern Territory』
Moyle, A.M. / Canbera : Australian Institute of Aboriginal Studies 1974(2nd Edition) / Companion booklet and 5 CDs or Cassettes
・『Songs from North Queensland』
Moyle, A.M. / Canbera : Australian Institute of Aboriginal Studies 1979 / Companion booklet and 1 Cassette
・『Songs from Kimberleys』
Moyle, A.M. / Canbera : Australian Institute of Aboriginal Studies 1979 / Companion booklet and 1 CD or Cassette
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