2. Top Endの伝統音楽とディジュリドゥ
2-2. ディジュリドゥの使われる地域
【東・北東アーネム・ランド】
東・北東アーネム・ランドはBlyth Riverの東からCarpentaria湾、そしてはるかRose Riverまで南の広大な未開の地域で、40,000平方kmを超える地域である(島の面積はふくまれていない)。RaminginingやMilingimbiのような場所は、東アーネム・ランドというよりもむしろ中央アーネム・ランドである。地図上に示された領域は、完全な地理学的な定義というよりもむしろ、私個人の考えによる文化的、かつ言語学的、音楽的な地域の領域(「2-3.
地域による伝統音楽のスタイル」の地図3. 参照)です。
6つの主要なコミュニティ(当初はメソディスト教会が管理するアボリジナルの居住地としてはじまった)、Yirrkala、Gapuwiyak(Lake
Evella)、Galiwin'ku(Elcho島)、Ramingining、Milingimbi、そしてNumbulwarが、このエリア内にある。この地域は、「一般の立入禁止のアボリジナル・ランド」であり、そのためこの地域に入るためにはNorthern
Land Council(英語/外部リンク)からの許可が必要になる。採掘の小さな町Goveは、その例外である。町へのアクセスは制限されていないが、近隣のアボリジナル・ランドへのアクセスは前述のように許可(外部リンク/英語Dhimurru
Land Management)が必要になる。
この北東部分(ヨォルング文化圏-サイト内の別ページ)には、40ものアウトステーション(アボリジナル居住区から遠く離れた辺境にアボリジナルの人々が集まって作っている集落)があり、その住民は、家屋と自動車以外は伝統的な生活様式にのっとって生活している。45以上の「クラン(父方血縁、あるいは
同一の言語グループ)」のグループが存在し、それと同じ数だけの方言が話されている。この地域は文化と野生生物に溢れている。
この北東方面(Melville湾からCape ArnhemとBradshaw湾まで)は、アボリジナル・ロックバンドYothu
Yindi(オフィシャル・サイト/英語)の故郷である。
地図上で、カーソルが表れる所で;
をクリックすれば、その地域の音楽スタイルのサンプルを聞くことができます
をクリックすれば、その地域のディジュリドゥ・ソロを聞くことができます |
-サウンドはもうしばらくお待ち下さい- |
地図上の地名 |
BR - Blyth River |
Ga - Galiwin'ku* |
AS - Arafura Swamp |
LE -Gapuwiyak (Lake Evella)* |
GoR - Goyder River |
Nh - Nhulunbuy (Gove) |
WoR - Woolen River |
Y - Yirrkala* |
KR - Koolatong River |
Nu -Numbulwar* |
WR - Walker River |
Gy - Gunyangara* (outstation) |
RR - Rose River |
Dh - Dhalinbuy* (outstation) |
R - Ramingining* |
Br - Biranybirany* (outstation) |
Mi - Milingimbi* |
Dj - Djarrakpi* (outstation) |
Do - Dhonydji* (outstation) |
|
* Aboriginal community
この地域にはTop Endの中でも最も豊かで複雑な伝統音楽がある。
Moyle博士は、次のような東アーネム・ランドのクラン・ソング(※1.)の特徴をあげている。
東アーネム・ランドのクラン・ソングの特徴 |
● |
ディジュリドゥの伴奏は、「B-タイプ(※2.)」。 |
● |
ボーカルの音程の幅が狭い。 |
● |
歌われる歌詞は、明確に聞き取ることができ、翻訳することができ、意味があり、クランの土地と神話に関係している。 |
● |
「Unaccompanied Vocal Termination -UVT(※3.)」伴奏をともなわずにボーカルだけで曲を終えること。 |
■この地域の録音を含むディスコグラフィー
トラックNo. |
録音地/日付 |
内容 |
全曲 |
北東ア−ネム・ランドYirrkala, Yirrnga Music
Studio, 2000年 |
北東ア−ネム・ランドのDhalwanguクラン[Y]、Galpuクラン[D]、Rirratjinguクラン[D]、そして東ア−ネム・ランド南部のNhundirribalaクランのクラン・ソングと、その音楽が収録されています。 |
トラックNo. |
録音地/日付 |
内容 |
トラック1-6 |
Numbulwar,1963年 / Groote Eylandt,
1962年 |
NgalmiクランとMurrungunクラン[D]によるNunggubuyu語の歌。 |
トラック8 |
Numbulwar,1963年 |
Nunggubuyu語を話すイダキ奏者によるソロ。 |
トラック9
(b,c) |
Numbulwar,1963年 |
|
トラック10
(b,c,d) |
Numbulwar,1963年 |
Murrungunクランの歌 |
トラック12
(b) |
Numbulwar,1963年 |
当時、Numbulwarに住んでいたCaledon湾出身のDjapu[D]クランのブロルガ・ソング、ディジュリドゥとマウス・サウンドを収録。いずれもすばらしい演奏です。 |
トラックNo. |
録音地/日付 |
内容 |
トラック1-2 |
Yirrkala, 1962年 |
Djapuクラン[D]の「火で払い浄める儀式」。 |
トラック6 |
Yirrkala, 1962年 |
Rirratjinguクラン[D]のクラン・ソング。 |
トラック7-8 |
Yirrkala, 1962年 |
トラック7がDjalalingba [Y]、そしてトラック8がMawalan [D]によるディジュリドゥ・ソロを収録。 |
トラック
9-10 |
Yirrkala, 1962年 |
トラック9はUVTの良いサンプルで、ソングマンはMun'gurrawuy[Y]、Rrikin[Y]、そしてDjalalingba[Y]の3人。 |
トラック11 |
Milingimbi, 1962年 |
Djambarrpuyngu語[D]で歌われているクラン・ソング。UVTの良い例。 |
トラック12 |
Milingimbi, 1962年 |
第二次世界大戦の時に見たドナルド・ダックのアニメをもとに作られた「Djatpangarri」スタイルの「Comic」という曲。トラック13にこの曲の歌詞が紹介されている。アボリジナル・ロック・バンド「Yothu
Yindi」の1992年にリリースされたアルバム『Tribal Voice』のトラック14には、「Beyarrmak」というタイトルでこのトラック13の「Djatpangarri
Comic」の別バージョンを収録されている。さらに、同じアルバムのトラック2と5に収録されている「Treaty」という曲のコーラス部分は、ジャッパンガリ・スタイルの歌詞に基づいている。 |
トラックNo. |
録音地/日付 |
内容 |
トラック1 |
Milingimbi,1962年 |
ソングマンはDjawa[Y]、ディジュリドゥ奏者はGalpuクラン[D]。 |
トラック2-3 |
Milingimbi,1962年 |
[D] |
トラック5 |
Milingimbi,1962年 |
[Rirratjinguクラン[D]のソングマンによる歌。トラック5(b)にはディジュリドゥ・ソロが収録されている。 |
トラック6(b) |
Yirrkala,1963年 |
「Djatpangarri」の「Bonda(蝶)」と「Cora」ソングを2曲収録。シンガーはGumatjクラン[Y]のGalarrwuyである。トラック6(d)では、現在すでに亡くなっているGumatjクランのDambidjawaがこの曲を作曲し、Yirrkalaに着く船が遅れているのを憂いて作ったのだと説明されている。 |
トラックNo. |
録音地/日付 |
内容 |
トラック
2, 8, 9 |
Wugularr,1962-62 |
Wulaki/Rembarrnga語を話すシンガーが、Wugularrを訪れたRitharngu語[Y]を話す人物から習って、Paddy
Fordham(Rembarrnga語)のディジュリドゥの伴奏で歌っている。 |
トラックNo. |
録音地/日付 |
内容 |
A面,トラック1-5 & 7 |
トラック1-3,
1949・52年
トラック 4 7 5, 1952年 |
Djatpangarriの曲。4, 5, 7は1952年録音で、トラック7には5曲のすばらしいディジュリドゥ・ソロが収録されています。 |
B面,トラック1-2 |
1949年と52年 |
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トラックNo. |
録音地/日付 |
内容 |
A面,
トラック1-2 |
Milingimbi,1962年 |
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A面,
トラック3-6 |
Yirrkala,1962年 |
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B面,
トラック6 |
Milingimbi,1962年 |
鳥の鳴き声を模倣したすばらしいディジュリドゥの演奏。 |
B面,
トラック7-8 |
Milingimbi,1962年 |
すばらしいディジュリドゥ・ソロ。 |
トラックNo. |
録音地/日付 |
内容 |
トラック14
(a,b,c) |
Numbulwar,1964年 |
Nunggubuyu語。マウス・サウンドとディジュリドゥの演奏。 |
トラック15(d) |
Yirrkala,1963年 |
Gumatjクランの男性によるDjapuクラン[D]のスタイルのブロルガ・ソングのディジュリドゥ・ソロ。ここで聞かれるタッピングは、指でディジュリドゥを弾いている音です。 |
トラックNo. |
録音地/日付 |
内容 |
全曲 |
Blue Mud湾Walker RiverのOutstation,
1993年 |
この地域のクラン・ソングを収録。イダキはEvan Wilfred。 |
トラックNo. |
録音地/日付 |
内容 |
トラック10*** |
1949年 |
Rembarrnga/Ngalkbun語を話す人々の演奏する「Mulara」。 |
トラック11*** |
1949年 |
Rembarrnga/Ngalkbun語を話す人々の演奏する「Ngorunapa」。 |
トラックNo. |
録音地/日付 |
内容 |
B面,トラック4 |
1952年 |
北東アーネム・ランドの「Mulara」。1952年録音 |
B面,トラック5 |
1952年 |
北東アーネム・ランドの「Waramiri」 |
トラックNo. |
録音地/日付 |
内容 |
A面,トラック1 |
1949・52年 |
ディジュリドゥ・ソロ |
A面,トラック2 |
1949・52年 |
北東アーネム・ランドの演奏者 |
A面,トラック3-5 |
1949・52年 |
Djatpangarriの演奏。2曲目は第二次世界大戦の際にヨォルングが見たディズニーのキャラクターに関した歌「Comic」(Elkin教授の表記では「Conu'c」と「Gomi」になっている)が収録されている。 |
トラックNo. |
録音地/日付 |
内容 |
全曲 |
Port Moresby, 1976年 |
イダキ・ソロの妙技[D]。 |
注意:亡くなっていると思われる演奏者の名前は記述されていません。
[D] と [Y]は、それぞれDhuwaとYirritjaを表しています。
中央アーネム・ランド|
東・北東アーネム・ランド|Groote Eylandt|西アーネム・ランド
【注釈】
※1. クラン・ソング
Clan Songs(クラン・ソング)は、たいてい特定のクラン・グループが所有し、演奏する。その歌は、クランの土地と神話、そしてその土地の中で起こった祖先の出来事に関連した主題的な事柄と関係している。密接に関係しているクラン同士がそのような歌を共有し、ある特定の機会にはその演奏を共有することがある。 >> 詳しく読む >> 戻る
※2. Bタイプ
Bタイプのディジュリドゥの伴奏は東アーネム・ランドで聞かれる。この伴奏スタイルは、ソング・タイプによって変化する。しかしディジュリドゥの伴奏スタイルの重要な相違点は、低い音つまりドローンの音の1オクタープかそれ以上(たいてい10度上)高い、吹き込んだ音トゥーツにある。これはBタイプと区分される全ての東アーネム・ランドの伴奏スタイルに見られる特徴である。 >> 詳しく読む >> 戻る
※3. UVT
北東アーネム・ランドの歌で特徴的なのが、Unaccompanied Vocal Termination(UVT
: 楽器の伴奏をともなわずにボーカルだけで曲を終えること)である。これは、スティックとディジュリドゥの演奏が停止した後に続いて、リード・ソングマンが長くのばした歌い方でその歌を終わらせることについてMoyle博士が使った言葉である。
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