2. Top Endの伝統音楽とディジュリドゥ
2-2. ディジュリドゥの使われる地域
【Groote Eylandt】
Groote Eylandtは、Carpentaria湾の西側、Walker Riverのちょうど東、Blue Mud湾の南東に位置する島である。Groote EylandtのWanindilyaugwa(Enindilyaugwa語を話す - Anindilyakwaと表記されることもある)の人々は、オーストラリア本土のすぐ近隣(Numbulwar付近)のNunggubuyuの人々と、密接な血縁関係と儀式的な結びつきがある。
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地図上の地名 |
Al - Alyangula* |
An -Angurugu* |
BI-Bickerton Island |
G - Groote Eylandt |
IW - Isle Woodah |
M - Milyakburra* |
Nu - Numbulwar* |
Um-Umbakumba* |
WR - Walker River |
* Aboriginal community
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Alice Moyle博士は、東アーネム・ランドとその近くに位置するGroote Eylandtの独特な歌と音楽の特徴を紹介しています。ここで特に興味深いのは、北東アーネム・ランドのクラン・ソング(Manikay)と区別しているGroote
Eylandtのクラン・ソング(Emeba)についての下記の特徴である。
Groote Eyalandtのクランソング「Emeba」の特徴 |
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Emebaシンガー達が使う、意図的な声の装飾「Shaky Voice(喉を震わせた声)」 |
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ブレイク。Groote Eylandtのクラン・ソングにおけるボーカル・パートは、シンガーが選んで歌うある特定の言葉をシグナルにして、簡潔に停止する。(この時点で、歌のテーマは崩れ、舞い降り、もしくはなんとかして突然変わる。ブレイクがあることで、シンガーが次に歌うべき言葉を決める時間ができるのだと言われている。) |
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ブレイクの間のスティックとディジュリドゥの短いパターン化された交錯。 |
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同時に様々に異なる場所から起こるスティックを打つガチャガチャとしたサウンド。このようなクラップスティックは、地面に置いたスティック(ヤリ投げ器であることが多い)をもう一方のスティックで打つ、もしくはディジュリドゥをスティックでたたく。 |
東・北東アーネム・ランドのほとんどの歌が1分ないしはそれ以下であるのに対して、Groote Eylandtの歌は、2分以上連続して演奏される傾向がある(Moyle)。Groote
Eylandtの島民の間では、ディジュリドゥは「Yiraga」という名称で知られている。
■この地域の録音を含むディスコグラフィー
トラックNo. |
録音地/日付 |
内容 |
トラック1-36 |
1969年? |
Groote Eylandtのソング・スタイルとリズムのすばらしい録音 |
トラックNo. |
録音地/日付 |
内容 |
トラック7 |
Groote Eylandt, Angurugu,1962年 |
大鷲が魚を捕まえるために海面に降りて行くという歌詞をソングマンが歌ったちょうど後に、この曲のブレイクが起こっている。ディジュリドゥ奏者も、ブレイクの時点でリズムを変化させ、トゥーツを使ったリズムを演奏している。 |
トラック8(a,b) |
Darwin,Bagot,1962年 |
当時、Groote EylandtのシンガーがBagotに住んでいた。 |
トラック9(a) |
Groote Eylandt, Umbakumba,1962 |
「震え声」のすばらしい一例 |
トラック9(a) |
Groote Eylandt, Umbakumba,1962年 |
ボーカルが終わった後に、ディジュリドゥ奏者が演奏を続けている一般的ではないトラック。録音当時、ディジュリドゥ奏者が笑いながら「この曲をどうやってやめたらいいかわからなかった。」と述べていたと、Moyleは記述している。 |
トラック10(a) |
Groote Eylandt, Angurugu, 1963年 |
潮の干満に合せて前へ後ろへとゆらゆらと動いているBlack Tree Coral(黒くやわらかい海藻のような珊瑚?)についての描写が含まれている。その珊瑚が砂に埋もれたという歌詞の所でブレイクが曲中で起こっている。優美な歌声。 |
トラック10(b) |
Groote Eylandt, Angurugu, 1963年 |
この録音の時には、ディジュリドゥの吹き口と逆の、出口の部分を木製の箱の中に置いて演奏された。時にはバケツがその代わりに使われることがある。かつてはBailer
Shell(「ボートの水を汲み出す貝」と呼ばれるホラ貝の一種。下記に写真)がその役割を果たしていた。 |
トラック10(c) |
Groote Eylandt, Angurugu, 1963年 |
ディジュリドゥとスティックのみの演奏 |
トラック10(d) |
Groote Eylandt, Angurugu, 1963年 |
2機の飛行機が「別々の方向に向かって飛び去る」という歌詞がブレイクの合図になっている。 |
トラック10(e) |
Groote Eylandt, Angurugu, 1963年 |
ディジュリドゥとスティックのみの演奏 |
トラック11(a,b,c)、トラック12(a,b) |
Groote Eylandt, Angurugu, 1963年 |
Groote Eylandの音楽スタイルの良い一例。 |
トラックNo. |
録音地/日付 |
内容 |
トラック13(c) |
Groote Eylandt, 1964年 |
ディジュリドゥ・ソロとマウス・サウンド |
トラック14(e) |
Groote Eylandt, 1964年 |
「震え声」のスタイル。歌の約1/3程の所で、ディジュリドゥ奏者は、楽器を変えて演奏している(違う音程の楽器を使用)。マウスピースが自分の口に合わなかったので、楽器を変えたのだとMoyleに話していた。 |
注意:亡くなっていると思われる演奏者の名前は記述されていません。
中央アーネム・ランド|
東・北東アーネム・ランド|Groote Eylandt|西アーネム・ランド