backnext
BORA OF THE PASCOE RIVER -Cape York Peninsula, Northeast Australia
BORA OF THE PASCOE RIVER -Cape York Peninsula, Northeast Australia
NO FE-4211
Artist/Collecter Wolfgang Laade(Recorder)
Media Type LP/CD-R
Area オーストラリア北部、ケープ・ヨーク
Recorded Year 1963年
Label Smithsonian Folkways Records
Total Time 51:11
Price 2,840 yen
Related Works
A CHANGING CULTURE -Songs from Mornington Island AUSTRALIA -Songs of the Aborigines MUSIC OF A PEOPLE -Aboriginal Music Old and New Volume1- DRUMS OF LOCKHART -Aboriginal Music Old and New MUSIC OF ABORIGINAL AUSTRALIA SONGS FROM NORTH QUEENSLAND
SONGS OF ABORIGINAL AUSTRALIA SONGS OF ABORIGINAL AUSTRALIA, and TORRES STRAIT TRADITIONAL MUSIC OF TORRES STRAITS      
1.The Saga of the Crocodile Hero
2.Song Pasocoe Bora
3.The Saga of the Crocodile Hero
4.Song Warri Warri
5.Alligator Songs
6.The Saga of the Crocodile Hero
7.Alligator Songs
8. The Saga of the Crocodile Hero
9.Alligator Songs
10.The Saga of the Crocodile Hero
11.Song
12.The Saga of the Crocodile Hero
13.Song
14.The Saga of the Crocodile Hero
15.Song
16.The Saga of the Crocodile Hero
17.Song by George Morton with Drum and Naration
18.The Saga of the Crocodile Hero
19.Narration and Song
20.The Saga of the Crocodile Hero
21.Narration and Song
22.Song
23-24.Narration and Song
25.The Saga of the Crocodile Hero
26.Song
27-28.Narration and Song
29.The Saga of the Crocodile Hero
30.Dance Rehearsal
ケープ・ヨーク半島の神聖な成人の儀式「BORA」を収録したLPをオフィシャルCDーR化。ディジュリドゥは使われず、よりパプア・ニューギニアの影響を色濃く感じさせる。

■Pascoe RiverのBora儀式(Wolfgang Laadeの文章の翻訳)
■CAPE YORKの録音を含む音源

仮面と太鼓というニューギニアからTorres海峡を通ってCape York半島に伝わったBora儀式の歌と、アボリジナルのインタビュー(英語)を収録したLPを版権元のスミソニアン・フォークウェイズがオフィシャルCDーR化。ここで紹介されているジャケット写真はオリジナルLPから掲載されており、CDーRにはジャケットはついておらず、当時のライナーのコピーがついています。

イタリアの民族音楽レーベル、アルバトロスからリリースされている名盤『AUSTRALIA Songs of the Aborigines』(CD 1963/2002 : Albatros & King)の録音などで知られる民俗学者のWolfgang Laadeによって、北東オーストラリアのCape Yorkというケアンズの北にある半島に特有の「Bora儀式」について、アボリジナルへのインタビューとその儀式の歌が収録されている。

この地域では、伝統的にディジュリドゥが演奏される事はなく、シンプルでプリミティヴな太鼓と歌、そしてインタビューが収録されている。録音内容は'63年当時既に失われようとしていた神聖なる成人の儀式「Bora」にまつわる録音です。ライナーは、A4で6ページもありかなりディープにこの地域を調査したWolfgang Laade自身による文章を読むことができる。また彼がこの地の長老達に行っているインタビューは彼等の聖地で、暖かな雰囲気で行われており、そのバックで音楽がなったり、風が葉を擦りあわせる音が聞こえる。

■Pascoe RiverのBora儀式(Wolfgang Laadeの文章の翻訳)
東Cape York半島でのアボリジナルの少年の成人の儀式「Bora」は、Donald F. Thomson著『The Hero Cult, Initiation and Totemism on Cape York』(Vol. LXIII, 1933, Journal of the Royal Anthropological Institute, London)で初めてその特徴が説明された。東Cape Yorkの最近の歴史と様々なBoraについての追加的情報については、『Journal de la Societe des Oceanistes』として出版されるであろう私の著作『Notes on the Boras at the Lockhart River Mission, Cape York, Northeast Australia』を参考にしていただきたい。このレコードに関しては、Boraについての音楽的記録が収録されている。

当時、全ての東Cape Yorkのアボリジナルの人々が住んでいたLockhart Riverミッション居住地に滞在している間中ずっと、成人の儀式であるBoraに集中していた。それというのも、この儀式が私には最も恐ろし気なように感じたからだった。実際、最近ではもはやBoraの儀式が伝統的に担って来た役割を果たさなくなっていて、この儀式は広い範囲で崩壊してしまっている。19世紀最初の10年の間に、この地域のアボリジナルの若者達はたいていTrouchus(和名 : タカセガイ、主にボタン細工に使われたようである)と真珠の採集をする船に乗って働いていたため、伝統的な成人の儀式を受ける機会があまりなかったというのがその理由の一つである。しかし、彼等は年老いたBora儀式のリーダーからあれこれ学ぶ機会が時折あり、結果的には、儀式についての知識は部分的に残っている。

ここで録音されているように、数人のアボリジナルの老人達は、かなり首尾一貫したBora儀式についての知識を持っており、全てのBoraの基本となっているクロコダイルの神の神話についてもう一度話してくれるように、そして儀式の通例の進行を説明してくれるように頼まれて話している。その上、124曲の伝統的なBoraソングが録音された。

それが人の姿で現れる時には「Warri Warri」と呼ばれ、動物の姿で現れる時には「Iwa'i」と呼ばれる、クロコダイルの神話を描いた『The Myth of Warri Warri, the Crocodile』はThomsonによって出版され、ここで収録されている年老いたBora儀式のリーダーBilly Danielsの話している内容と比較すれば、両方が断片的であるが、互いに寄与しあっている。Thomsonの著作では、Cape Yorkでのその神(クロコダイル)の行動に重きが置かれているが、語り手Billy Danielsは、その神がCape York半島へ到着し、北へむかう途中の長期的放浪について詳細に述べている。Billy DanielsとCharlie Oominioの二人によって話されたBoraの儀式についての二つの描写の中にある部分に深く分け入ることによって、かつてはBoraの儀式がどんなものであったかという、かなりはっきりしたその輪郭を得る事ができた。儀式の伝統的な順番や連続は大昔に風化してしまったに違いなく、かなり限られた仮面だけがいまだ知られていて、それらの仮面と踊りに関連のある歌についての少しの情報だけが残っていた。しかし、その歌や、当初のその位置づけや、はっきりした機能、それらが所属している場所にあるということが、ここで収録されている話された言葉の中に含まれている。

「Iwa'iの儀式はTorres海峡からオーストラリアにやって来て、一つのクランや半族に所有されているのではなく、むしろ部族全体に所有されているトーテム文化の上に重ねられてきたという動かぬ証拠がある。Iwa'iに関する儀式は、その部族の中の全てのクランによって執り行われる。つまり、クランの連帯よりはむしろ部族の連帯のための基盤を築いている。」とThomson教授が述べている。実際、Iwa'iの儀式は、Wutati、Ya'o、Yangkonyu、Umpilaなど4つ以上のクランにまたがっており、それぞれのクランのトーテムの先祖は、クロコダイルの神話の冒険に組み入れられていない。昔クロコダイルの神が北からやって来て、Boraの儀式を始めるために全てのクランのリーダーを東海岸に召集したという事がその神話の中で語られている。クロコダイルの神が「Big Boss」として振るまい、部族の法と儀式において人々を指導しいる間、Wappun(アオウミガメ)、Tapil(サカタザメの一種)、Tokoro(タイガー・シャーク)、Tawu(ダツ : サヨリのようなとがった魚)、Putyiwu(茶色の小鳥)、Yawa(Diamond Ray : エイの一種)、などの地元のトーテムの神々が副神の役割や、クロコダイルの神の助力になると考えられている。ニュー・ギニアでも行われてきたであろうその儀式は、Torres海峡を通ってCape York半島へとやってきた。そして、オーストラリアの他の地域では見られない太鼓や仮面がこの地域でのみ使用されるという事が、その経路を証明している。また歌の音楽的スタイルもオーストラリアの他地域とはかなり異なっている。

ここで録音されている二人の語り手は、現在Pascoe RiverのBora儀式のリーダーであるYa'oクランのBilly Daniels(当時60才前半)と、実質Pascoe RiverのBora儀式に吸収されるようになったClaremontのBora儀式のリーダーであるUmpilaクランのCharlie Oominio(当時約60才)である。リード・シンガーはYa'oクランのEdward Kanora(60才以上)で、彼は計り知れない程のBora儀式の歌に熟知していて、それらのレパートリーのほとんどが、Bora儀式の先人のリード・シンガー達から引き継がれたものである。その他のリード・シンガーはKandyuクランのGeorge Morton(60代)とWutaiクラン出身の彼の妻である。Georgeは結婚後、妻の親族の土地に住んでいたため、彼の歌はWutaiクランの影響を多分に受けている。歌のアシスタントを務めているのは、KandyuクランのHughie Temple(約60才)で、彼は普段太鼓や仮面を作っている。George Mortonの歌は典型的なWutaiクランの音楽スタイルで、Billy、Edward、Hughieの歌は純粋なYa'oクランの音楽的スタイルである。

私は、調査を上記の長老達と共にし、録音をするために、女性や子供、成人の儀式を受けていない男性が踏み入ることがタブーであるとされる「Ngartyi Kintya」と呼ばれる聖なる秘密のBoraの場所で毎日彼等に会わなければいけなかった。「Ngartyi Kintya」はTea-tree(和名 : 卸柳梅)やPandanus Palm(タコノキ科の草木)のような背の低いユーカリの小さな森の中にあり、強い南東のモンスーンの風が吹き、木々はカサカサと音を立てる。私がいたのは丁度8月で、南東の風がかなり強くなる時期だった。こういった音の背景が、男達と犬のノイズと混ざりあっている。前に一度Billyはレコーディングの最中に、Tigerという名前の自分の犬をマイクから遠ざけるために追っ払わなければいけなかった。ふざけて木を切ったり、タバコに火をつけたり、あらゆるノイズを出しているのをこの録音の中で聞かれる。時々、語り手が仲間とちょっとした問題について討論し、自分をいましめている。全体として、少なくともスタジオ録音のような雰囲気ではない、オープン・エアーのリラックスした空気の中で録音されている。というのも、彼等の最も神聖で、秘密の事柄について話し、歌ってもらう為には、この他の場所以外での録音は不可能だったからだ。この録音内容が非常に神聖なため、彼等への冒涜につながるかもしれないので、どんなオーストラリアのアボリジナルの人々の前でもこのLPをかけないよう購入者の方々にお願いいたします。しかしながら、これらの「Ngartyi Kintya」での録音内容は、彼等種族だけのものである限り、外部の人々にとってはタブーなのだが、情報提供をしてくれたアボリジナルの人々は、彼等の伝統的な神聖な神話と成人の儀式の慣習を海外の人々のような外部の人に知らせるという私の意向には反対しなかった。

各曲解説は追って紹介します。

■CAPE YORKの録音を含む音源
・『A CHANGING CULTURE Songs from Mornington Island』(Cassette 1975-79/1991 : Social Science Press)
・『Aboriginal Music Old and New 1-MUSIC OF A PEOPLE』(LP 1970-71 : Troubadour Records)
・『Aboriginal Music Old and New 2-DRUMS OF LOCKHART』(LP 1970-71 : RCA custum)
・『AUSTRALIA Songs of the Aborigines』(CD 1963/2002 : Albatros & King)
・『Music of Aboriginal Australia』(Cassette 1972 : Hibiscus)
・『Songs of Aboriginal Australia』(Cassette 1961-64/88 : AIATSIS)
・『Songs of Aboriginal Australia and Torres Strait』(LP/CD-R 1955-60/1964 : Smithsonian Folkways)
・『Songs from North Queensland』(Cassette 1966/1988 : AIATSIS)
・『Traditional Music of Torres Strait』(Cassette 1960-61/1981 : AIATSIS)