ケープ・ヨーク半島LockhartのPoiと呼ばれる砂時計型のドラムを使った「BORA」や「IIWAY」の儀式の歌をコミュニティの教会が独自に作製した貴重なレコード。
■ライナーの翻訳
■CAPE YORKの録音を含む音源
オーストラリア、クイーンズランド州の北端の半島Cape YorkにあるLockhartコミュニティがプライベートに作製したレコードで現在廃盤。この地域ではディジュリドゥは伝統的に見られず、Torres海峡の島々の音楽の影響が色濃く、オーストラリア全域でもドラムが伝統的に演奏される珍しい地域である。ジャケットからもわかるが、どちらかと言えばメラネシアやポリネシアの文化圏に近い衣装である。
音楽的内容もさることながら、歴史的価値の高い音源と言える。ここでは神聖な「Bora」と呼ばれる成人の儀式や「Iiway(Crocodile
: クロコダイル)」、「Maathuy(Pelican : ペリカン)」などの儀式の歌が収録されており、それらの深い解説はこのLPのライナーではなされていない。それぞれの詳しい儀式の説明については『BORA
OF THE PASCOE RIVER』(CD-R from LP 1963/1975 : Ethnic Folkways)のライナーを参照してみて下さい。
ディジュリドゥは収録されていないが、ディジュリドゥは多数の気鳴楽器が存在するパプア・ニューギニアから伝わったとされる説もあり、パプア・ニューギニアの文化とアボリジナル文化の狭間であるTorres海峡にある島々から強い影響を受けているオーストラリアの突端Cape
York半島の文化は非常に興味深い。このような音楽を聴くことで、流動し、変容し続けるアボリジナル文化を深く知る機会になればと思います。
下記は全て、LPジャケット裏面に掲載されている解説の翻訳です。
■ライナーの翻訳
Lockhart Riverコミュニティのアボリジナルの人々の生きた芸術形態はなんといっても音楽である。このレコードには4つの形式の歌と踊りのフィールド録音が収録されている。
SIDE 1には「Island Style」で歌われる12曲のダンス・ソングが収録されており、それはTorres海峡の島々の人達のダンス・スタイルが現地に適応したもので、Cape
York半島のアボリジナルのコミュニティ特有の特徴である。アボリジナルの人々は自分達自身のダンスの動作や歌を自分達の言葉で作曲し、Lockhart Riverコミュニティでは、この種のダンスは教会とコミュニティのお祭りのために踊られる。
クリスマスと新年には、Lockhart Riverの北部出身の沿岸部の人々を表わす「Iiway(Crocodile : クロコダイル)」と、Lockhart
River南部出身の人々を表わす「Maathuy(Pelican : ペリカン)」の二つのグループが競い合う。
SIDE 2の「Bora」の音楽はイニシエーション(通過儀礼)の儀式で歌われる長いソング・サイクルの一部で、1971にBoraの聖地で行われたオープン・セレモニーで録音された。
イニシエーション(通過儀礼)を受ける少年達はドラマー達と共に人々の前に座っている。身元引受人の母親達は、たき火の明かりの中、彼等の前でダンスを踊る。身元引受人はそれぞれの少年に一人、もしくはそれ以上いてる。歌が繰返し歌われている間、「Awu」もしくは精霊の姿が踊りに参加するために薄暗い光の中に現れ、母親達は精霊達と少年達の間で踊りを踊る。
イニシエーションの最後の儀式は夜明けの最初の光の中で浜辺で行われる。「Paapa(母親達)」が「Kannga(イニシエーションを受ける少年達)」を海で洗い浄めている時に、「Awu」は姿を表わし、踊る。その若者達は今や「Kannga」ではなく、完全にクランの一員になり、人々の生活の中でたくましく育った「Yuku」である。
近年の状況により、Boraの儀式とタブーの制限に、ある程度の適合がなされてきたが、イニシエーションは結束と彼等の生活における自尊心を刺激するという点で現在でも多大な価値があり、西洋文化社会の重圧と緊張に立ち向かう非常に重要な本質を持っている。数人の西洋人も最近のイニシエーションに参加するよう招待されている。
Boraソングには、かなり古い言葉が含まれており、概して古代の神話、イニシエーションを受けた人は食べない動物や魚などについて歌われている。古い言葉の意味合いはあいまいで、完全な翻訳は試みられていない。
「Malkari」とは伝統的な娯楽のダンス、もしくは「Shake-a-leg」(踊れ、腰を振れ、急げなどという意味あいで使われるスラング)であり、人々や動物、そして出来事などの風刺のための既成の形式である。それぞれのダンサーが自分のスタイルで踊ろうと試みる時、すばらしい楽しみを皆で共有するのである。
「Wungka」は特に食べ物の収集と料理に関した伝統的な女性のダンスである。それを復活させようという動きはあるが、現在ではめったに披露されることはない。「Wungka」ソングの最初の2曲は、1970年のNational
Aborigines Dayに年長の女性グループによる華麗なパフォーマンスの一部である。
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