中央アーネム・ランド的なサウンドと北東アーネム・ランド的なサウンドの中間点にあるようなディジュリドゥの演奏がユニークな非売品のカセット。
■ライナーの翻訳と解説
カセットのみのリリースで元々販売目的で作製されたものではなく、どちらかと言うとアウトステーションに住むアボリジナルの人々が、子孫に残しておきたいという依頼にもとずいて作製されたもののようだ。このシリーズではA面が伝統音楽、B面がオリジナルのクリスチャン・ソングになっている。他に『Manmoyi』(Cassette
1993 : Kakadu Studio)がある。非売品だが、Darwinのノーザン・テリトリー図書館で試聴することができます。
Raminginingのちょうど西のBlyth RiverにあるBolkjamコミュニティでの録音。ヨォルングの文化圏(北東アーネム・ランド)の一番西側あたりになる。非常に微妙な位置にあるアウトステーションだが、それがディジュリドゥのサウンドにもはっきりでていて、ちょうど中央アーネム・ランドと北東アーネム・ランドの間のようなサウンドのように聞こえる。トゥーツを使うが、舌の動きは多少ソフト。『Didjeridoo
The Australian Aboriginal Music』(CD 1969/1996 : PlayaSound)のトラック5に近いサウンドのディジュリドゥが収録されている。販売はされていないが、ダーウィンの図書館で試聴することができます。
■ライナーの翻訳と解説
SIDE A : TRADITIONAL
1. Morning Star|2. Brolga Dance|3. Bullerwikwik|4. Wyarra|5. Morning Star|6. Melamela|7. Barrkmine|8. Narbarleke|9. Gurrala|
SIDE B : GOSPEL
10. Jesus Dying on the Cross|11. God Make this World|12. God Goes to Jerusalem|13. Lazarus Died on the Rock|14. Glory to the Land|15. Jesus Gets His Name|16. Jesus is Coming Back|17. Jesus Comes Back from Heaven|18. Adam and Eve|19. Jesus goes to Galillee|20. I'm Glad to be Christian|21. God Gave us the World|22. I Walk away with the Spirit|23. If you're Happy|24. Manmoyi Song
※曲名をクリックするとその曲の解説へ飛びます。
SIDE A : TRADITIONAL
1-6はディジュリドゥとクラップスティックと歌による伝統的なBUNGULである。アーネム・ランド内のアウトステーションでの録音。全6種類28曲演奏されているが、トラック割りがされていないため、曲の特定が不可能なため、1曲目以外はライナーの翻訳のみになっている。
1. Morning Star
Dhuwa半族に属するMorning Star(夜明けに東の空に見える金星:明けの明星)の歌。葬式の際の演目としてあげられることが多いが、ここではみんなの為のダンス・ソングとされている。低いピッチのディジュリドゥによるゆっくりしたリズムに16分でクラップスティックが入っている。ブッシュの中で録音しているのか、鳥の声などが聞こえる。中央アーネム・ランドらしい演奏スタイルで少し長めのトゥーツが印象的に使われている。
2. Brolga Dance
Dhuwa半族に属するブロルガ(豪州鶴:灰色の鶴)の歌で、Brolgaはよく日影や、広場で休み、舞う。人々はブロルガのように踊る
ダンサー達の叫び声が聞かれ、曲が終わるごとに談笑などが聞かれるなごやかな雰囲気でカラバリーが行われている。
3. Bullerwikwik
Bullerwikwikという名前の鳥は、引き潮の時に潮だまりで一日中踊る。この曲はオープンなコラボリー・ソング。
4. Wyarra
人が亡くなるとこの歌を歌い、皆が踊っている場所の近くまで"Devil"スピリットがやってくる。ロック・ワラビーの歌。このディジュリドゥの演奏にはよりドローンが装飾的で、WANGGAスタイルなどで聞かれるハミングするような演奏技術が所々で使われており、ドローンのリズムに抑揚をつけている。
5. Morning Star
トラック割りを完全におこなっていないので、ライナーにのっている曲と実際に収録されている曲がはっきり一致しないため、それぞれの曲のレビューは困難になっている。しかし、全体的にディジュリドゥの演奏は同じような雰囲気のものが多い。
6. Melamela
蝶の歌。ダンサーの叫び声とユニゾンしてトゥーツが演奏されている。このアルバム全体を通してコールは使われておらず、ドローンとトゥーツのみでディジュリドゥの伴奏が構成されている。ドローンは北東アーネム・ランドの演奏に比べるとよりゆるい唇を感じさせるやわらかいサウンドである。そのためかトゥーツへの距離が多少遠くなっているようだ。
7. Barrkmine
Barrkmineという魚の歌で、この魚は飛び跳ねて逃げるため、中々釣るのが難しい。
8. Narbarleke
カンガルーの歌。カンガルーは夜になるといつも岩場に行き、人と同じように踊る。
9. Gurrala
White Spoon Billという名前の鳥の歌。ハンティングに行く時にこの鳥をよくみかけ、木々から池へと飛んでいく。個人的な聴感上の印象では、GUNBORGスタイルのディジュリドゥの演奏にトゥーツがブレイクの部分や曲のアクセントに付け加えられているように感じる。特に後半の2拍3連の伴奏リズムでは西アーネム・ランドの「Lidumo-ro」と東アーネム・ランドの「Ditu- Derei-ra」の間のような響きで、この地域らしさを感じる。
SIDE B : GOSPEL
10-24はアコースティック・ギターの伴奏をともなった現地のアボリジナルによるクリスチャン・ソング。ハレルヤなどキリスト教の言葉や地名と名前以外は現地の言葉で歌われており、メロディなどもオリジナルとおもわれる。家族で大合唱されていて、中でも1オクターブ上をせいいっぱい歌っている子供の声がたまらない。何気にミルトン・ナシメントとかに近い暖かな安らぎ溢れる優しい歌はこのアルバムのメインなのかもしれない。
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