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DARRYL DIKARRNA with White Cockatoo -Mago Masterclass
DARRYL DIKARRNA with White Cockatoo -Mago Masterclass
NO No Number(DDMM-01)
Artist/Collecter Darryl Dikarrna(Mago)
Media Type CD
Area Wugularr/Maningrida
Released Year 2006年
Label White Cockatoo
Total Time 47:45
Price 2,500yen
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TRADITIONAL ABORIGINAL MUSIC -Sounds from the Bush World Music Gala Collection 100 世界民族音楽大集成 オセアニアの音楽II White Cockatoo Performing Group      
ディジュリドゥ・マスターDavid Blanasiの後継者Darryl Dikarrnaによる、西部アーネム・ランドの代表的なディジュリドゥの演奏スタイルの一つ「Kunborrk」の演奏方法を詳しく解説しているMago教則CD。

■DARRYL DIKARRNA

■THE MAGO
■THE SONGMEN
■KUNBORRK
■CD内のスピーチとライナーの翻訳

Mago(西部アーネム・ランドのMayali語でディジュリドゥを意味する言葉)のストーリーを、Rembarrnga言語グループのJunggayi(Lawman)でありソングマンでもあるDavid Yidindilliが語っている。それによるとMimi SpiritがMagoを作ったという。またDarrylいわく、MagoはMayali語でフクロウを意味する言葉であり、フクロウの鳴き声がMagoだと言う。そしてMagoがどこから持たらされたのかが語られている。大昔にCroker島から持たらされたという。

今までアボリジナルの演奏者によって表記されることがなかったMagoのためのマウスサウンドが実際に表記され、CDの中でその発音がはっきりと録音されており、その通りにDarrylが演奏している。またそのリズムがどんな曲に使われるのかを実際にソングマンと共に演奏するという丁寧な内容になっている。

David Blanasiにまつわるストーリー、そしてMagoのストーリー / 演奏方法 / マウスサウンド / 曲の演奏方法まで収録した西部/南部アーネム・ランドのディジュリドゥの演奏方法の秘密が明らかになる! Darrylのその他の演奏は「WHITE COCKATOO PERFORMING GROUP - David Blanasi Tribute Album」で聞くことができる。

■DARRYL DIKARRNA

Darrylは「The White Cockatoo Performing Group」の古くからのメンバーの一人であり、Mago(ディジュリドゥ)奏者です。オーストラリア、ノーザン・テリトリー州のカカドゥ国立公園内にあるUbirr Rock付近のMudginberriアウトステーションに生まれ、西部アーネム・ランドのManingridaコミュニティ付近のGochanjinyjirraアウトステーションで育つ。Darrylは複数の言語を話し、その中にはMayali語とKuninjku語がある。Yirritja半属に属する。

    Darryl Dikarrna:6才の時にMagoを演奏しはじめたんだ。それは僕の祖父(※1.)、(White Cockatooと呼ばれる伝説のMagoマスターDavid Blanasi)がセレモニーとフェスティバルのため、Maningridaにやってきていた時だった。彼の演奏に耳をすまし、彼の演奏スタイルを学んだんだ。ある日、祖父がやってきてBuyngaliyn Buyngaliyn(Kunborrkの欄を参照して下さい)の演奏スタイルでMagoを吹く若い子がいないか人々にたずねた。その時みなが僕のスキン・ネームを呼んだのさ。それが7才の頃だった。

    若者を男にするセレモニー(イニシエーション)の時、僕はJunggayi(Law Man)である長老のDavid Yirindilliの横でMagoを演奏していた。そこには僕の祖父をはじめ、全ての長老が座って僕の演奏を聞いていた。祖父は僕の演奏を聞き、こう言った「わしは随分年をとった。誰かにわしのMagoを引き継いでほしいんじゃ。だから、息子よ、いつかおまえにこれ(Magoを指していると思われる)を手渡す時がくる。おまえがわしの仕事を引き継ぐんだよ。」それを聞いて、家族のみなが喜んだよ。

    2000年。アデーレードに向かって車に乗っている時、祖父は「あぁ、若人よ。今おまえを認めよう。そして今からおまえはMagoにまつわる全ての事を引き継ぐんだ。」と言った。僕はこの祖父の言葉をずっと胸にとどめている。

このようにして、我々の記憶に燦然と輝くKunborrkの伝統を代表する人物David Blanasiは、Darrylを継承者として指名したのだ。それは、Darrylが何千年にも渡って多くの人々に信頼されてきたMago Master達の一員になったという事であり、世界最古の途切れる事なく続いた伝統芸術の慣習と文化的知識を引き継いだという事なのだ。Darrylの故地におけるセレモニーへの積極的な参加と、海外での演奏・教育・作曲活動を通じて、Kunborrkの伝統は現在もなお新しい息吹を吹きこまれ続けている。

■THE MAGO

西部アーネム・ランドと南部アーネム・ランドのMayali言語グループで、ディジュリドゥはMagoと呼ばれている。またこのMagoという言葉は、Mayali語で夜の鳥、つまりフクロウを意味する言葉でもある。Darrylの生まれ育った場所西部アーネム・ランドは、Mago発祥の地なのです。

■THE SONGMEN

Magoがどんなに卓越したサウンドであっても、唄を創り、唄を所有し、Mago奏者がその唄にどんな伴奏をするのかというのを決定するのは、ソングマンだ。Magoに焦点が集まるのは、たんに西洋文化的な先入観であり、伝統文化では、彼らの音楽を構成するどのメンバーよりも、ソングマンが重要だと考えられている。

■KUNBORRK

Kunborrk(Gunborgともつづられる)ソングの伝統は、西部アーネム・ランドにその起源がある。その音楽スタイルは、Magoの絶え間ないドローン音(持続低音)に特徴づけられる。Magoのドローン音は、テンポ出しをしてソングマンが演奏するMannbelinj(Mayali語でクラップ・スティック)にシンコペーションして演奏される。

    Darryl Dikarrna:Kunborrkには、演奏するグループによって大きな違いがあるんだ。Yirritja半属のBuyngaliyn Buyngaliynスタイルは、少しラフだ(これは、力強いサウンドだということを意味している。おそらく、このラフ・スタイルの最も偉大な演奏者は、「The Bomb(爆弾)」と例えられたDavid Blanasiだろう。彼の言葉が残っている「わしは一直線に演奏する。ごちゃごちゃやらないんだ。

    もう一方のKunborrkは、Maningridaエリアに起源を発するDhuwa半属のMimi(大地の精霊)スタイルと、Manngalinj(神聖なヤムイモ)スタイルだ。この二つのスタイルはそれほどラフな感じではない。

Kunborrkは、長年に渡って言い伝えられてきた膨大な古典であり、最近になって音楽学者や言語学者の調査が進んでいる。特定の唄に対するMagoの伴奏を理解するには、子供の時から学び続けるという複雑なプロセスが必要となってくる。このCDでは、伝統の中の基礎的技術のいくつかが紹介されているにすぎない。

より深く学ぶには、Kunborrkの古典芸術における即興と楽曲を左右する構造的なプロセスを知らなければいけない。しかし、さらなるリサーチが進むまで、Kunborrkの芸術構造の表面的な知識以上に、西欧人がその想像を膨らませることができないでしょう。Magoの基本技術のいくつかをマスターすることが、伝統的なアボリジナル文化の中で長きに渡って育まれれきたものを理解するということには決してならない。また、単により多くのディジュリドゥの演奏技術を学ぶ事によって、良いKunborrkの伴奏の中にある美学に対する、深く直感的な認識力を得ることができるというわけではない。

「自分自身の演奏スタイルを作り出したい」というディジュリドゥ奏者に対して、反対は全くない。けれど、このCDを聞いて学ぶノン・アボリジナルのディジュリドゥ奏者の方々に注意してもらいたい。ある特定の伝統スタイルのいくつかの基礎を理解し、それだけで、たとえばアボリジナルのKunborrkのアーティストと同じくらいうまく演奏できていると思うのは、自己欺瞞であり、世界的視点で見てもすばらしいこの伝統芸術を誤解しているという事になるのだという事を。

    Darryl Dikarrna:「僕は自分のスタイルで演奏しているんだ。僕自身伝統的なKunborrkのディジュリドゥ奏者だけれど、僕の祖父の演奏スタイルを盗んだりはしない。僕は僕自身のやり方で演奏するんだ。だから、動物の鳴き声をディジュリドゥではやらないよ。」

    「君たちもこのCDを聞いて、自分自身のスタイルでやってほしい。自分だけのやり方を見つけなくちゃいけないよ。僕たちみたいにはなれないわけだし、自分の道を見つけてみてほしいんだ。」

■CD内のスピーチとライナーの翻訳

1.Introcution2.Darryl talks about "The Bomb", David Blanasi3.Darryl talks about Mago4.Mimi make that Mago5.Di6.Di Ta7.Di Ta Mor8.Single Breath9.Song #1 Gudek(The Goanna)10.Play along with Gudek11.Di Ta Mor, varying tempi12.Song #2 Manngalinj(The Yam, or Bush Potato)13.Play along with Manngalinj14.David and Darryl discuss the single breath. Song #3 Mimi Spirit15.Di Ta Mor-Debor16.The Double Breath17.Song #4 Two Days' Sleep18.Play along with Two Days' Sleep19.Song #5 Muk Muk(The Owl)20.Play along with Muk Muk21.Double breath, varying tempi22.Single breath and double breath mixed23.Following Mannbelinj(The Clapsticks)24.Di Ta Mor and Di Ta Mor-Debor, sung25.Single breath and double breath interwoven26.The Mago part sung and then played27.You got to listen to that Devil28.Darryl talks about where the first Mago came from
※曲名をクリックするとその曲の解説へ飛びます。

1. Introcution

    Darryl Dikarrna:僕の名前は、Darryl Brownだ。ディジュリドゥを教えている。ノン・アボリジナルの人々に僕らの方法でディジュリドゥを教えようと思う。それでこのレコーディングをしているんだ。僕らはWhite Cockatooというグループのメンバーで、僕はディジュリドゥを教えるのだうまいんだ。それが僕の仕事なんだ。ありがとう。

    僕の祖父が(ディジュリドゥにまつわる全てを)手渡してくれたんだ。そして僕はその足跡を追っている。アーネム・ランドでもディジュリドゥを教えているし、海外で白人にもディジュリドゥを教えている。教えるのがうまいんだ。

    うちに帰れば、数多くのセレモニーに参加する。アーネム・ランドの家に戻れば、僕はディジュリドゥを教え、僕らはセレモニーをする。

2. Darryl talks about "The Bomb", David Blanasi

    Darryl Dikarrna:僕がディジュリドゥを習いはじめた時、僕の祖父がディジュリドゥを作ってくれたんだ。小さなディジュリドゥをね。僕は、祖父がディジュリドゥを演奏するのをしっかりと聞いたよ。

    そう、彼の音を聞きはじめたんだよ。彼の音を聞き、ディジュリドゥをもらい、そして練習しはじめたんだ。彼の音から学んだ事を自分ができるようになるまで1年くらいかかったかな。今僕が君のそばに座っているみたいに、僕の祖父は横に座って、僕の演奏を聞いてくれた。僕がディジュリドゥを演奏している間、僕の祖父はしっかりと聞いていてくれた。彼は聞いていたよ、僕の音を。

    そして彼は「オーいいね。おまえは本当によく演奏しているね。わしに何か起こった時には、誰かがわしの跡をつがなきゃならない。」と言った。そして、今僕がディジュリドゥ・マスターになったんだよ。

3. Darryl talks about Mago

    Darryl Dikarrna:ここにあるこいつは、Magoだ。英語ではディジュリドゥと呼ばれている。僕らの言葉ではMagoと呼んでいる。僕らの言語グループにとってMagoはカルチャーなんだ。6才の時に出会って、僕の祖父がディジュリドゥを演奏するようにと言ったんだ。僕の祖父は、本当にKunborrkのマスターだった。今、それを僕がひきついているんだ。Gamak!

4. Mimi make that Mago

ライナーの翻訳:Mimiスピリットがどうやって最初のMagoを作ったのかを、David Yirrindilliが説明している。Mimiスピリットは、岩場に住むEarth Spirit(大地の精霊)です。

    David Yirrindilli : Mimiは長い間Bamboo(Mago)を持っていた。MimiがそのBambooを岩に描いた時、人々はそれを見てコピーして、Bambooを切ってそれを引きはじめた(※2.)。人々は言った「おい、このMimiスピリットはBambooを持ってるぞ。どうやって、俺たちも(この楽器を)作る?木を探さなきゃな。」

    Darryl Dikarrna:Mimiスピリットは岩にMagoを描いた。それは彼等が最初にMagoを創りはじめたからだよ。それはいつだったんだろう?僕はわからない。いつだったんだい?大昔、最初の時(ドリーム・タイム)。ブンガリ(スペル不明)! それが最初だよ。

    David Yirrindilli : (Mimiの岩絵を見てMagoを作った)昔の人々は、MimiがMagoを描いた大きな岩場の前で唄を唄った。するとMimi達は人々が踊る姿を見に現れた。ときにヤリを使って踊ったり、はねたりしてCorroboree(アボリジナルの唄と踊りを表す英語)を、Bunggul(儀礼を意味するヨォルング語)をしたんだ。人々は自分たちの全ての領域で唄い踊った。人々は(Mimiの唄と踊りを)コピーしたんだよ。木を切って(Magoを作った)。これが昔の人々から言い伝えられて来たストーリーだよ。Magoを作るという事、それはMimiのアイデアだったんだ。

5. Di

    Darryl Dikarrna:まずMagoを演奏する時には、「Di」からはじめるんだ。最初の音は、舌とお腹を使って.....「Di」だ。(お腹を使って)かなり力強く押し上げるんだ。そうすれば、いい音が出せるんだ。

ライナーの翻訳:Magoのドローン音は、ここでは「Di Ta Mor」という文字で表現されている。アーネム・ランドのアボリジナルの言語は、インド-ヨーロッパ系の言語とは異なっているので、この英語の音訳は類似的なものであるにすぎない。Darrylが演奏する時には、ドローン音を増大させるために声帯は使っていない。「Di Ta Mor」というのが実際に話されたり、唄われたりするわけではない。また、舌の位置に関しても、ヨーロッパの言語圏の人にとって手慣れた場所に自動的に動かすようにしないように注意しなくてはいけない。

「Di」サウンドを演奏するさいには、空気を力強く吐き出すために横隔膜を使って、激しく押し出すという事を付随して行う。「Di」の時には、舌が前にまっすぐと動く。

6. Di Ta

    Darryl Dikarrna:さぁ、レッスン2だ。ここでは「Di Ta」をやる。

ライナーの翻訳:「Ta」の時には、舌が上にあがる。

7. Di Ta Mor

    Darryl Dikarrna:ここで聞けるのはレッスン3だ。ここでは「Di Ta Mor」をやる。お腹は上にいって、下に行く。お腹でぐっと押して、押し入れる(横隔膜のことをのべていると思われる)。舌は外に向かって行き、中にもどって、上に行く。「Di Ta Mor」の音を作るには、舌は外に向かって行き、中にもどる。バックしてインして半分の所でもう一度だ。これは、Kunborrkの基本的なリズムだ。

ライナーの翻訳:循環呼吸を使いながら、「Di Ta Mor (息継ぎ) Di Ta Mor (息継ぎ) Di Ta Mor (息継ぎ)」。「Di Ta Mor」は、Kunborrkの演奏スタイルの基礎の最初の第一歩で、シングル・ブレスです。Darrylの解説によると、舌は外に向かい、中に戻り、そして上へ行く。「Di」で舌は前にまっすぐと行き、「Ta」で上に行く、「Mor」で下に下がって、そして前に行く。

8. Single Breath

    Darryl Dikarrna:「Mor」を演奏すると同時に息を一回吸うんだ。僕の演奏する音を聞けば、どこで息をすってるかわかると思う。

ライナーの翻訳:Darrylが「Di Ta Mor」というドローン音を演奏する時、一回すばやく息を吸う。「Di Ta Mor(鼻から一度息を吸う)」はシングル・ブレスと表現されている。このトラックの録音は、Darrylの鼻のそばにマイクを近づけて行われているので、彼が一回ですばやく息を吸う音を聞くことができる。

9. Song #1 Gudek(The Goanna)

    Darryl Dikarrna:ここではシングル・ブレスをKunborrkスタイルで演奏する。Gudekソングだ。Gudekは英語でゴアナ(大トカゲ)だ。

ライナーの翻訳:この最初の例では、 Darrylはシングル・ブレスを使ってKunborrkのリズムの一つである「Di Ta Mor」を演奏しています。

10. Play along with Gudek

    Darryl Dikarrna:僕の音は入ってないので、ソングマンが唄っているのに合わせて演奏してみてほしい。さぁ、君の「Di Ta Mor」を聞かせてくれ。クラップ・スティッックをフォローするんだ。

ライナーの翻訳:トラック9と同じ曲ですが、Magoのサウンドは入っていません。

11. Di Ta Mor, varying tempi

    Darryl Dikarrna:今度はゆっくり吹いてみよう。「Di Ta Mor, Di Ta Mor, Di Ta Mor..... 」 今度は速いのをやってみるので聞いてみてほしい。時には、このゆっくりしたテンポと速いテンポをミックスして演奏することもある。

ライナーの翻訳:Darrylは、まずゆっくりしたテンポで「Di Ta Mor」を演奏し、次に少し速めのテンポで演奏している。そして、最後にテンポ・ミックスをして演奏している。まず最初に速めのテンポ、次にゆっくりのテンポ、最後にまた速めのテンポで演奏している。

12. Song #2 Manngalinj(The Yam, or Bush Potato)

    Darryl Dikarrna:2番目の曲は「Manngalinj」だ。Manngalinjはブッシュ・フードで、地面を掘り起こして探し出す。スイート・ポテトだ。

ライナーの翻訳:この曲でもDarrylはシングル・ブレスを使って「Di Ta Mor」を演奏している。

13. Play along with Manngalinj

    Darryl Dikarrna:僕の音は入ってないので、君が演奏するんだ。シングル・ブレス「Di Ta Mor」をやってみてほしい。

ライナーの翻訳:トラック12と同じ曲ですが、Magoのサウンドは入っていません。

14. David and Darryl discuss the single breath. Song #3 Mimi Spirit

    David Yirrindili : [ここではMayali語と英語を交えて会話されている] 2種類の曲がある(シングル・ブレスとダブル・ブレスを意味している)。「Di Ta Mor, Di Ta Mor, Di Ta Mor.......」ワン・ウェイだ。これはストーレートなやつだね。「Di Ta Mor, Di Ta Mor, Di Ta Mor.......」(ドンという音と共に)ここで終わる。それが本当のバンブーってもんだ。まだここじゃ激しくならない。まだここでは「Di Ta Mor, Di Ta Mor」これだよ。(※3. )

    Darryl Dikarrna : これはダブル・ブレスじゃなくてワン・ウェイだ。ゆっくりと息をする。「Di Ta Mor, Di Ta Mor, Di Ta Mor.......」そしてリズム・スティックをフォローするんだ。リズム・スティックが止まったら、君も演奏をやめるんだ。

    David Yirrindili : この曲はね、足の短いMimiの唄だ。

ライナーの翻訳:シングル・ブレスを使った3つ目の曲です。この3例目の曲では、非常に速いテンポでシングル・ブレスが演奏されているのに注目したい。David Yirrindiliが言うように、シングル・ブレスは「激しくなるように」かなりストレートだ。

15. Di Ta Mor-Debor

    Darryl Dikarrna:ここではダブル・ブレスを演奏する。「Di Ta Mor-Debor、Di Ta Mor-Debor、Di Ta Mor-Debor.......」

ライナーの翻訳:「Di Ta Mor-Debor」は、Kunborrkの2番目の基本リズムで、ここではダブル・ブレスと表現されている。ドローンの演奏時に、2回短いブレスが行われています。「Di Ta Mor」を演奏し、鼻からすばやく息を吸う、そして「Debor」を演奏しまた鼻からすばやく息を吸う。このトラックではDarrylの鼻にマイクを近づけて録音されているので、ドローンの演奏時に彼がすばやく2回息を吸っているのがわかります。

16. The Double Breath

ライナーの翻訳:ゆっくりのテンポでダブル・ブレスが演奏されています。ダブル・ブレスを演奏するときのDarrylの舌の位置は下記のとおりです。

    Di:まっすぐストレートに前に舌が動く
    Ta:舌が上にあがる
    Mor:舌は降下し、前に出る
    Debor:ストレート

17.Song #4 Two Days' Sleep

ライナーの翻訳:この「Two Days' Sleep」は、Kunborrkの演奏で使われるダブル・ブレス「Di Ta Mor-Debor」を使った曲の一例です。Darrylは、最初シングル・ブレスではじめ、クラップ・スティックが入ってくるとダブル・ブレスを演奏しています。お聞きになればわかるように、ここではダブル・ブレスをかなりスピーディーに演奏していて、Magoの演奏技術のレベルは上がっています。このスピードで演奏するには、ある程度高いレベルの能力が必要とされます。

18. Play along with Two Days' Sleep

    Darryl Dikarrna:さぁ、これがダブル・ブレスだ。曲はTwo Days' Sleep。君が演奏する番だ。

ライナーの翻訳:同じ曲をこのトラックではMagoなしで収録されています。

19. Song #5 Muk Muk(The Owl)

    Darryl Dikarrna:ダブル・ブレスを使った2つ目の曲は「Muk Muk」だ。Muk Mukは夜の鳥「フクロウ」だ。Muk MukはMagoと同じような音を出すんだ。

ライナーの翻訳:Kunborrkの演奏で使われるダブル・ブレス「Di Ta Mor-Debor」を使った二例目の曲です。曲のはじめでは、やはりシングル・ブレスで演奏し、次にダブル・ブレスに移っている。この曲では、クラップ・スティックがはじまる直前に速いテンポのダブル・ブレスがスタートしている。

この曲では、曲中のダブル・ブレスにシングル・ブレスをミックスするという事が行われている(他の曲でも同様の演奏がみられる)。これは、曲の中程でクラップ・スティックがスローダウンする時と、曲の終わりで行われている。トラック23〜26でも、リズム・スティックがテンポを変えるのに合わせて、Darrylがシングル・ブレスとダブル・ブレスの両方のテクニックを自由に使っているのがわかる。

20. Play along with Muk Muk

    Darryl Dikarrna:ダブル・ブレスの「Muk Muk」ソングだ。ソングマンが唄うけど、僕の音は無い。次は君が演奏する番だ。

ライナーの翻訳:同じ曲をこのトラックではMagoなしで収録されています。

21. Double breath, varying tempi

    Darryl Dikarrna:ダブル・ブレスをゆっくり演奏したり、早く演奏したりすることがある。

ライナーの翻訳:ダブル・ブレスをまず最初にかなりゆったりと演奏し、少し速く、次にゆっくりと、そして最後にもう一度速く演奏しています。

22. Single breath and double breath mixed

ライナーの翻訳:シングル・ブレスに続いてダブル・ブレスが続き、またシングル・ブレスになり、ダブル・ブレスが続く。最後にシングル・ブレスになっている。

23. Following Mannbelinj(The Clapsticks)

    Darryl Dikarrna:ときに僕はMannbelinjと演奏する。Mannbelinjは僕らの言葉でリズム・スティックだ。僕はそのリズム・スティックの音に従う。次の曲「Gudek」でMannbelinjに従って演奏しているのを聞いてみてほしい。

ライナーの翻訳:このトラックに収録されているのは、「Gudek」ソングの最後の部分です。Kunborrkソングの中でもある特定の曲の中でしばしば使われる「曲の終止方法」の一例です。Darrylはリズム・スティックがテンポを変えるのに従って、シングル・ブレスとダブル・ブレスの両方を自由に使っているのがわかる。さて、様々な(リズム的な)要素が使われる複雑なパターンを編み込むには、基本であるシングル・ブレスとダブル・ブレスが使われている、という事が少しづつわかってきたのではないだろうか。

24. Di Ta Mor and Di Ta Mor-Debor, sung

    Darryl Dikarrna:リズム・スティックとMagoの無い状態で、Magoのリズムを唄ってみる。「Di Ta Mor、Di Ta Mor........」次にリズム・スティックと同じリズムを唄ってみる。「Di Ta Mor......」

ライナーの翻訳:MagoとMannbelinjなしで「Gudek」ソングの最後のパートを唄っている。

    Di Ta Mor- Di Ta Mor- Di Ta Mor- Di Ta Mor- Di Ta Mor- Di Ta Mor-
    Di Ta Mor-Debor- Di Ta Mor-Debor- Di-Di Ta Mor-Di
    Di Ta Mor- Di Ta Mor- Di Ta Mor-Debor Di Ta Mor-Di

25. Single breath and double breath interwoven

ライナーの翻訳:「Gudek」ソングの同じパートを今回は、MagoとMannbelinjの演奏つきで収録しています。

26. The Mago part sung and then played

ライナーの翻訳:「Gudek」ソングの同じパートを、少し違うバリエーションでDarrylが唄っています。その後にMannbelinjと一緒にMagoを演奏しています。

    Di Ta Mor- Di Ta Mor- Di Ta Mor- Di Ta Mor- Di Ta Mor- Di Ta Mor- Di Ta Mor-
    Di Ta Mor- Di Ta Mor-Debor- Di Ta Mor-Debor-Debor- Di-Di Ta Mor-Di
    Di Ta Mor- Di Ta Mor- Di Ta Mor-Debor- Di Ta Mor-Di

27. You got to listen to that Devil

    David Yirindilli:人々はドリーミングを持っていた。(Magoをたたきながら)こいつのため、スピリットのなぁ。前にも言った事だが、そのスピリット。新しい死体がある時にだね。その死体を運んで埋める。その人が年寄りのアボリジナルだと思ったら、その葬式に出て、一人で夜にその死体と共に過ごすんだ。月もなく、光もない。暗闇の中で過ごさなくちゃいけない。ディジュリドゥや唄のために、その男が埋められた場所で彼の言葉を聞かなくちゃいけない。おまえが彼から得ようとしている唄がどれなのかじっくり聞かなくちゃいけないんだ。彼は穴から起き上がるだろう。その時こそ、その男の言うことに耳を傾けるんだ。彼が見えるわけじゃない。スピリットなんだ。こういったスピリットがなんだかわかるかい?ありゃデビルだよ。昔の人はみなこうやってきたんだ。その男の言う事を聞くんだ。バンブーを追って。そのデビルを追って。そうすると、その男のためにその唄がどこにおもむくのかがわかるだろう。その唄とバンブーを選び出し、ここに入れるんだ。おまえの頭と心にね。すぐには唄うことはできない。一年まったらその唄をうたってもいいんだ。(ここでの会話もポツリポツリと語られており、正確な日本語訳ができているかどうか不確かであることをご了承下さい。)

28. Darryl talks about where the first Mago came from

    Darryl Dikarrna:最初のMagoはCroker島からきたんだ。大昔.....ドリーム・タイムだ。それはとてもパワフルで、雨を呼んだり、したい事なんにでも使えたんだ。Croker島には特別な泉があり、その水を飲めば知力を得るんだ。その知は英語がしゃべれるようになったり、ギターがうまくなったり、なんにでもきく。その水はとてもパワフルなんだ。MagoがCroker島から来たというのは、ドリーミングの頃、遠い遠い昔なんだ。大雨や大風がきたりするだろ?あれはMagoを使ってるんだ。そのMagoは木の棒じゃなくて岩なんだ。そのMagoを空に向けると、雨はとまり、風もやむ。とてもパワフルなんだ。

    最近サイクロン「イングリッド」というのが来たんだけど、すごい風だった。けれどCroker島でそのMagoを空に向けたから、僕らは雨も風もなかったんだ。そのMagoがあったおかげでね。

    潮が満ちてそのMagoに近づいてくる。長いやつだ。ドリーミングの頃からの。(この文章はDarrylがCDの中で語っていることを意訳したものです。抽象的な内容であるため、この日本語訳が正しいかどうか不確かであることをご了承下さい。)


【注釈】
※1. 僕の祖父
文中で「僕の祖父」と訳されている部分は、Darryl自身が英語で「My Grandfather」と言っている部分で、彼が直接的にDavid Blanasiという個人名をあげるのを避けて、「My Grandfather」と言っていることをわかりやすくするために、日本語訳でも「僕の祖父」という言葉を意図的に使用しています。>>戻る

※2. Magoを引く
David Yirrindilliは、ディジュリドゥを「演奏する」という言葉を英語で表現する時に、「Play」ではなく「Pull」を使っているため、それがわかるように日本語訳ではあえて「引く」という表現を使っています。>>戻る

※3. この段落の原文について
この段落の原文は「There's two kind of tunes... Di Ta Mor, Di Ta Mor, Di Ta Mor... One way. That's traight. That one. Di Ta Mor, Di Ta Mor, Di Ta Mor... He's down. That one we call realy bamboo. That one he still not gets up yet. Still play that Di Ta Mor, Di Ta Mor, Di Ta Mor... 」でジャスチャー付きで会話しているらしく、何の事を言っているのかわかりにくい。日本語訳はある程度の推測に基づいて行われていることをご了承下さい(後日変更される可能性があります)。>>戻る