【スピード狂の遺伝子】 老人介護施設のキッチンでフェイと一緒に夕飯の準備をしているときだった。カウンシルで働いている白人男性のマークが、 「今からジェイミー達とロックホール(水場)に行くけどお前も来るか?」 とたずねてきた。夕飯の準備が終わっていなかったけれど、 「後のことは私がしておくから、行っておいで」 フェイがこころよく言ってくれたのでマーク達とロックホールに行くことにした。
思ったよりかずっしりと重いその袋を手に、自分が「歓迎されているんだ」という思いと、マークの初対面とも思えないような気さくな性格に、「ありがとう。これからもよろしく」 と、彼になにかお礼をしなきゃなと思いつつ、しばられたヒモをほどいておそるおそる袋の中をのぞき込む。すると、茶色いまだら模様を身にまといほっそりとしたヘビがチロチロと舌を出して僕をみつめ返してきた!
話を戻して、ロックホールに行くことになったので準備を整えるために一度グラニスの家へと戻った。そして準備を終えてマークの所に行くと、彼は4輪バギーにまたがり、 「サンダルで行けるような所じゃないぞ!」 ちょっとしたハイキング気分で戻ってきた僕に半ばあきれ顔をしている。あわててクツをはきかえに行く僕に向かって 「水もちゃんと持ってこいよ!」 なぜか水を用意してなかったことまでお見通しみたいだ。 再び準備を整えて戻るとタバコを吸いながら、いつまで待たせるんだ?というオーラをムンムンと発しているマーク。そして早く乗りな!といわんばかりに笑みをうかべてエンジンをブイブイふかしている。その光景を見てグラニスが僕を空港に出迎えにきてくれたときのことをふと思い出した。さらに隣ではジェイミーも、もう一台のバギーに乗りエンジンをブイブイ吹かしている!「もしかしてこれってレース!?」おそるおそるマークのバギーの後ろに乗ると、 「しっかり持っておかないと振り落とされるからな」 と、つかむ場所を教えてくれた。僕がしっかりとバーつかむのを見終えると、バギーをけたましく唸らせて急発進。落ちそうになる体をなんとか両手で支え「無事にロックホールにたどり着けるんやろか?」と一抹の不安を感じながらコミュニティーをあとにした。
シートベルトは無いし、身を守れるモノと言えば両腕だけである(ちなみにノーヘル)。はっきり言って周りの景色を楽しむような雰囲気はまったくなく、ひたすら僕の悲痛な叫びが響きわたる。 だんだんと体重移動のコツをつかみかけてくると、周りの景色にもようやく目を向けることができるようになってきた。そしてマークの運転をみているとなぜか隆起の多い道や、スリップしそうなデンジャラスな道を選んで走っているように感じてきた。バギーのエンジン音でほとんど会話など出来ない状態なのだが、
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