Numbulwarの影響を受けながらも独自の文化を育む、バックビート感がすさまじいGroote Eylandtの音源を集めた唯一の音源。本の付録としてCDがついてます。
■GROOTE EYLANDTの録音を含む音源
David H. Turner著の『Genesis Regained』という本に付属しているCD。購入は本とセットになっています。Carpentaria湾に浮かぶ島Groote Eylandtだけの録音をまとめたものとしては初のアルバムで、オーストラリア本土のNumbulwarコミュニティと近いため、演奏スタイルに似かよった部分もあるが、独自の文化圏を築き上げたこの島独自のサウンドを聞くことができる。特に超高速リズムを収録したトラック30は必聴!日本での取扱いは初!?
北東アーネム・ランドでは、ディジュリドゥを意味する言葉として広く「Yidaki」が使われていて、その意味は「Yiraki(エミュののど)」から来ていると言われている。しかし、Groote Eylandtには元来Emuがいないため、単なる「のど」を意味する「Yirga」が使われている。
ディジュリドゥのリズムは「・Dhign- Degeira」などのシンコペーションを多用したドローンのベーシック・リズムが多く、その基本リズムをミニマルに繰り返し、ブレイク部分でトゥーツという組み合わせが多い。ディジュリドゥと歌が裏拍にはいり、クラップスティックのみが表というレゲエな曲もあり、リズム・センスに独自性を感じさせる。
またブレイク部分は非常に短く、シンガー、シンガーの打つクラップスティック、ディジュリドゥ、ダンサーの全てがピッタリとブレイク部分でシンクロするのは、シンガーが発する曲毎に異なるある特別な言葉をきっかけにしているからだと言う。
ディジュリドゥのサウンドも独特で、あくまで推察の域だが主観的な観点で見ると、口腔を縦に狭くし、その中を舌を這わせてすばやいリズムを得るスタイルでドローンを、そしてトゥーツにいたっては、舌でアタック感を強く作らないちょっとした横隔膜の上下運動による吹き込みでおきるフワっとしたトゥーツと思われる。このすばやく、リラックスした舌の動きでドローンのリズムを得、唇の形の変化と軽い吹き込みだけでトゥーツを得るためには、高いプレッシャーを維持する必要があり、高い技術を要するのではないだろうか?
書籍とCDにはライナー・ノーツはなく、曲のタイトルのみが掲載されているため、ここでの各曲の解説はなく、下記には、特にすばらしいトラックのレビューのみが紹介されています。同じ著者による過去に発売していて現在絶版の『Tradition and Transformation : A Study of Aborigines in the Groote Eylandt Area, Northern Australia 』(David H. Turner 1974 : AIAS)にこのCDの録音内容が書かれているようだ。
一番ユニークな特徴はジャケットに見られるように2本のディジュリドゥで演奏されることがある点だ。この特徴はMornington島でも見られる。トラック12、17を聞くとよくわかるが、ステレオ録音した場所が悪いのか、2本のディジュリドゥの音量にかなりの差が出てしまっているのが惜しい。
トラック27のディジュリドゥはこの録音の中で一番リズミックで、トゥーツを多用した他ではあまり聞くことのできないレアな録音です。
トラック30、32は超高速リズム!!。これは今まで録音されてきた伝統的なディジュリドゥの録音の中では、至上最高の早さじゃないだろうか。
最後のトラックには驚きの一発がはいっている。このアルバムをはじめて聞く時、最後の最後のこのトラックでぶっとぶこと間違いなし。聞いてからのお楽しみです.....
Numbulwarを含めた東アーネム・ランドの南部というのは、様々な音楽のミーティング・ポイントであり、西アーネム・ランドと北東アーネム・ランドの両方のダンス・ソングの影響を受けていると言われており、その特徴的な音楽はディジュリドゥが使われるオーストラリア北部の他の地域とは一線を画している。
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