謎に包まれていた西部アーネム・ランドの音楽ジャンルの一つ「Kun-borrk」がMurray
Garde博士による29Pにおよぶブックレットで解明される。そしてこの地域を代表するMako奏者Owen YalandjaのG#-Aというハイピッチでのプレイが聞ける97年録音。Kun-borrk決定盤がついにリリース!!
近年オーストラリアでは先住民アボリジナルの音楽のアーカイブ化が急速に進んでいて、「The National Recording Project for Indegenous Performance in Australia」という国家プロジェクトが進行している。その一貫としてリリースされたのがこのCDです。
Kun-borrkと言えば西部アーネム・ランドを代表する音楽ジャンルの一つとして広く知られている。過去には世界中を席巻したソングマン「Djoli
Laiwanga」と彼の唄の伴奏をしていたディジュリドゥ・マスター「David Blanasi」を輩出している事でも知られている。そして現在ではDavid
Blanasiの後をついだディジュリドゥ奏者Darryl DikarrnaもMago Masterとして活動している。
このようにKun-borrkの有名な演者とその録音物であるCDが世に出てはいるものの、その実Kun-borrkなるものが一体何なのか解き明かした書籍や、歌詞の内容を深く考察した音源はリリースされていなかった。
謎めいた音楽Kun-borrkが29ページものブックレット付きのこのCDで解き明かされる。録音内容は北部中央アーネム・ランドの中心的コミュニティManingridaの南西63kmに位置するMumekaアウトステーションで97年にMurray Garde博士によって録音されたものです。
ソングマンはKeven Djimarrで、Kuninjku(Eastern Kunwinjku)語族のKurulk言語グループ出身。この「Wurrurrumi Kun-borrk」は、ツル性の植物の名前から由来したもので、Kevin個人がし所有する唄です。KevinはKunborrkのソングマンとして知られているだけでなく、このエリアでヒーラーとして有名。
伴奏しているのはDarnkorlo言語グループのOwen Yalandjaで、Maningrida周辺で最も知られたディジュリドゥ奏者。「G#-A」というハイピッチなMako(Kuninjku語でディジュリドゥは「Mako」と呼ばれている)をダーティーかつルーズに演奏している。ライナーの写真にうつっているMakoは典型的なこのエリアのディジュリドゥのシェイプとサイズでめたくそに渋い!
Kun-borrkでは曲展開が完全に決まっていると言われている。そのためMako奏者は数多くある曲をはっきりと記憶しておかなければいけない。Owenはリズムチェンジが突然に行われても完璧に曲をフォローし、即興性よりも手堅いしっかりとした演奏で、彼の性格がうかがわれる。Owenの演奏はカセット「Maningrida
Music -Gunborrk」でも聞く事ができ、Darwin博物館では彼の作ったMakoが展示されている。
Owenの演奏するMakoのサウンドの中には、Kun-borrk独特の演奏スタイルが如実にある。Wanggaのハミングとはひと味違うざらついたダーティーなナザル・サウンドがパルス的にドローンのリズムを装飾しつつ、一般的にこの地域のマウスサウンドでいう「Ditamor/Lidumor」の頭がより強拍として演奏されている。
※1. このディスクは出版元ではCDと表記されていますが実際はCD-Rです。お手元でバックアップを取っておくことをおすすめします。
※2. このCDは8枚組(7セットで1つは2枚組)の「Wangga Complete CD set」の一部です。単体での販売はしていません。
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