Wadeye出身でBelyuen在住という異色のソングマンBilly Mandjiのおだやかでハートウォーミングな唄声が、7曲も収録されている「Happy (Lerri) Song」にマッチする。名曲多数!
Billy MandjiはWadeye周辺のMarri Tjavin語のソングマンですが、Marri Tjavin語があまり使われないBelyuenコミュニティに長年住み続けていた。そのため、Belyuenコミュニティの前の世代のソングマンたちの唄を多数引き継いでおり、彼自身も多作家のソングマンでした。 Mandjiは、希代のソングマンJimmy Muluk(CD3)のバックアップ・シンガーとして活躍するなど、Tommy Barrtjap(CD2)、Bobby Lane Lambudju(CD5)など、20世紀のBelyuenコミュニティのWANGGAを牽引した錚々(そうそう)たるソングマンたちと同時代を生きた。 彼の唄をもっとも有名にしたのはAlice M. Moyleが60年代に録音したトラック6の「Happy (Lerri) Song」でしょう。この曲は「Songs from the Northern Territory vol.1(LP/CD)」に収録されており、メロディーラインの美しさ、牧歌的なハッピーなムードと同時に、サウダーヂ的な憧憬を感じさせる珠玉のWANGGAソングです。 このCDにはTommy BarrtjapやJimmy Mullukら他のBelyuenコミュニティのソングマン達のレパートリーでもある「Happy (Lerri) Song」が多数収録されており、そのバージョン違いが別の曲と思えるほど違うメロディーで唄われていています。 ライナーには「葬儀という厳粛な場であるのにハッピーなムードの唄が演じられるのは、葬儀に参列する悲しみに打ちひしがれている人たちを癒すためなのかもしれません。」とあり、このLerriソングの重要性を感じさせる。 彼の出自と実際に住んでいた場所とのギャップにMandji自身のライフストーリーがあると思われるが、ライナーでは明らかにされていません。言語も異なり、自分のホームランドからも遠く離れたBelyuenコミュニティで長い時間を過ごした彼が、その地のソングマンから多数の唄を引き継いでいることも非常に興味深い。 ソングマンとしての器量が認められ、しかもMandjiの人柄といった彼の個性が無ければそういったことは起らないでしょう。このCDを聞くと、Mandjiの唄から彼の人柄がにじみ出て来るような、やわらかく暖かい、そしてBelyuenのWanggaソング特有の切なさを感じます。 ※1. このディスクは出版元ではCDと表記されていますが実際はCD-Rです。お手元でバックアップを取っておくことをおすすめします。 ※2. このCDは8枚組(7セットで1つは2枚組)の「Wangga Complete CD set」の一部です。単体での販売はしていません。 |
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