「Ma-yawa」とはMarri Ammu語でゴースト(祖霊)を意味する。このWANGGAのほとんどはCharlie Niwilhi Brinkenによる作曲だが、彼が唄っている音源は残存していない。このCDの唄のほとんどはMaurice Tjakurl Ngulkurによる歌唱です。
多くのWANGGAソングはゴーストの言語で唄われているため歌詞の内容を明確に追えないことが多かったり、後からソングマンをインタビューして内容を確認しても、その内容は「ゴーストはいつも私(ソングマン)に唄いかけてくる。それを止めることはできない」と言った宣言のような、なぜこういった内容を唄い上げるのか、文化的背景がないと理解できないようなものが多い。 しかし、Ma-yawa WANGGAの内容はMarri Ammu語の人々のドリーミングとドリーミングの場所について唄ったものが中心で、実際に人間が話すMarri Ammu語で描写されているため、歌詞の内容が具体的で物語的で、訳文を読んでいるだけでもおもしろい。 驚くことに、Ma-yawa WANGGAの多くはは歌詞(唄の種類)が変っても2種類のメロディーを使って唄われる。替え歌でもない限り、「歌詞とメロディーがワンセット」というぼくらの常識を覆す音楽的センス!! 唄のメロディーはディジュリドゥの音程に対してオクターブ上の「ミ」という高い位置からスタートする。そして、なだらかに降下するのではなく、一定の音程をキープしながらガクッ、ガクッっと下がっていくため、情緒的・感傷的に響くのではなく、かなり高いキーから始まっているにもかかわらず、どこかフラットで呪術的に聞こえる。 また、Ma-yawa WANGGAを引き継いだこのCDのメインソングマンMaurice Tjakurl Ngulkurの唄い方は、節ごとのアタックが強く荒々しく響くので、1本調子なメロディーラインと相まって、呪文のような独特な雰囲気になっています。 後半に収録されている「Watjen-danggi」と「Na-pebel」の2曲は、それぞれの唄に固有のメロディーが与えられているため、聞きやすく、ややわかりやすく感じられます。 現在、Marri Ammu語の人々の儀式の場ではMa-yawa WANGGAに取って変わってWalakandha WANGGAが唄われるようになっているそうで、Ma-yawa WANGGAは散発的なオープンな儀式で時折演奏される程度だという。現地でも失われつつあるMa-yawa WANGGAの現存する音源を全集的に集めた貴重な内容です。 ※1. このディスクは出版元ではCDと表記されていますが実際はCD-Rです。お手元でバックアップを取っておくことをおすすめします。 ※2. このCDは8枚組(7セットで1つは2枚組)の「Wangga Complete CD set」の一部です。単体での販売はしていません。 |
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