【ディジュリドゥ虎の穴】 ブロンソンは僕がダーウィンで一番最初に出会ったアボリジナルのソングマンだ。どっしりとした体格と迫力のある歌声、そして一癖ありそうな顔(かなり迫力あり)で、 マーケットの人ごみの中でも存在感抜群である。 僕とのりくんは最初の数週間、彼のとなりでディジュリドゥを吹くことになる。 彼はマーケットにほぼ毎週来る。そして歌う。歌いまくる。 まだ日の高い5時ごろから、マーケットが終了する前までとにかく歌い続ける。 彼の歌とクラップスティックの音は、ある意味マーケットの顔のようになっていた。 ブロンソンは僕らを見つけるとニマッと笑い「ここに座って吹け!」と必ず声をかけてくる。 そして横に座ってディジュリドゥを出そうとすると・・・もう歌いはじめてるやん! 僕らは急いでディジュリドゥを取り出して必死に彼の歌についていこうと努力をはじめる。 そこからは、まるで「ディジュリドゥ虎の穴」といった感じの猛特訓がはじまるのだ。
「Brother! You've got it! やったじゃねえかブラザー(みたいな感じ?)」 ブロンソンはニヤリと笑い、大きなゼスチャーをまじえながらそう言ってくれた。アボリジナルの人が歌ってくれる歌にあわせて、ディジュリドゥを吹ける。そして「うまくいったな!」とか、「今のはおしいな、ブラザー」とか、 そんな何気ないやり取りができるということに純粋に感動できた。 そしてマーケットも終わりに近づき、今日のバスキングが終了する。 「ブラザー、来週も来るんだろ?また俺のために吹いてくれ」 僕は最初ブロンソンと吹くのがとにかく楽しく、毎週木曜日が楽しみでしょうがなかった。ただ、ある事件をきっかけに僕は複雑な思いを抱くことになるのだが・・・。そのエピソードは【俺のために吹け事件】を読んでみてください。 |トップへ|
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