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Research 林 Jeremy Loop Roots
ヤス(カラキ ヤスオ)|在豪イダキ奏者
ブラブラ日記 2 -アーネム・ハイウェイ - Yirrkalaへの750km 後編 2-

【中央アーネムを駆け抜けろ!】

次の日の朝早く、僕たちは紆余曲折を経てたどり着いたMainoru Shopを出発した。 走り出してすぐに見えてきたのは、昨晩、暗闇の中で恐ろしいと感じた川だ。しかし太陽の光の下で見てみればサラサラと流れる穏やかな川にしか見えなかった。前日溜まったストレスを発散するかのように、ランドクルーザーは臆することなく勢いよくその川に突入する。

朝日を浴びるアーネム・ランドの川
暗闇の中と光の中とでは川の印象はガラリと変わる。
「ウッヒョオオオオオ!!」

ザバアアアッと勢いよく上がった水しぶきと僕達の歓声がキラキラと光る川に吸い込まれていった。さあ、新しい一日の始まりだ!今日は一気にYirrkalaを目指そう!!

アーネム・ハイウェイの全長は約750km。そのほとんどが未舗装路だ。これまでにも紹介してきたように、その路面の状況はさまざまだ。

そんななかで特に運転している時間が長かったノン君が「一番怖い」と話していたのは、踏み固められた道の表面にうっすらと砂が敷き詰められている路面。

道がしっかりとしているのでスピードを出しやすいのだが、それが落とし穴。一度滑り始めると二度とグリップが戻ることはなく、そのままブッシュに突っ込んでいく可能性がある。滑り始める前兆がほとんどないということもあり、ある意味、前回痛い目にあったコルゲーション・ロード(詳しくは「キャサリン回想編 - Hells Gate Creek(地獄の門川)」をご覧下さい)より怖いと言える。

頻繁に変わるこれらの路面状況を適切に判断しながら、何百キロと運転し続けていたノン君の顔は、いつしか「熟練の職人」のようになっていた。

最年少でありながら、頼りない30代3人を乗せて走り続けるノン君は偉いっ!!これだけ運転できるのなら、アーネム・ランドの研究チームの運転手を仕事にしてはどうだろう、という話まで飛び出した。

仕事なので給料もでるし、好きな運転も出来てしかもアボリジナル・コミュニティをまわれるのだ!一石二鳥とはまさにこのことかもしれない。

Manymak Driver ノン君
メンバーのなかで最年少でありながら、いちばんオッサンくさいのは気のせいか? 頻繁に飛び出すオヤジギャグはとても20代とは思えない。

走り続けること数時間、道の右側にポツポツと建物のある場所を通りがかった。コミュニティの名前を示す看板などもなく、ひっそりとした雰囲気だったので、小さなアウト・ステーションだと判断しあまり気にせず走り抜けようとする。すると左側にポツリと立てられた赤い看板が目にとまった。そこに書かれていたのは・・・

「この先420km、グラベル・ロード(砂利道)。滑りやすいので注意」

んんっ?ちょっと待てよ?なぜか420kmという距離に見覚えが・・・。 この瞬間、僕の脳裏にノーザンランド・カウンシルでもらった地図に書かれていた言葉がよぎった。

「最終給油ポイントBulmanコミュニティを過ぎると420km給油できません。」

ということは、まさか、この静かな村がBulmanコミュニティ・・・ つまり・・ここで給油しないと・・途中で・・ガソリン切れ!?

「ちょ、ちょ、ちょっと待ったあああ!!戻って、戻ってええ!!」

Bulmanコミュニティはガソリン・スタンドやスーパーがあり、地図にも名前が載っているぐらいなのでもっと大きな村を想像していた。しかし実際は車なら3分ほどで通り過ぎることができるとても小さなコミュニティだったのだ。この規模の小ささは想定外だった僕たちは、またしてもアーネ・ランドのイタズラに翻弄されるところだった。

BULMANの看板
このなにげない看板が、ここが最後の給油地、Bulmanであることを示す唯一の手がかりだった。もっとしっかり「最終給油ポイント」とか書いてくれよ!!
BulmanコミュニティはキャサリンとYirrkalaのほぼ真ん中、つまり、まさに中央アーネム・ランドに位置している。Djaluファミリーの暮らす北東部アーネム・ランドや、David BlanasiとWhite Cockatoo Performing Groupで有名な西部アーネム・ランドに比べて、中央アーネム・ランドは過去の音源や資料等が極端に少なく謎に包まれている地域。

給油している間、スーパーの店員さんなどにこの地域のディジュリドゥ事情について聞いてみたものの、明確な答えを得ることはできず空振りに終わった。

現実問題として、これだけひっそりとしたコミュニティで、いまだに大規模なセレモニー等が行われているとは考えにくい。すでに伝統文化は失われはじめているのだろうか・・。

滅多に入ることのできない中央アーネム・ランドに位置するコミュニティなだけに、できればいろいろな情報がほしかったのだが・・。後ろ髪を引かれる思いを残しながらも、僕たちは先を急ぐことにした。

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