【中央アーネムを駆け抜けろ!】 次の日の朝早く、僕たちは紆余曲折を経てたどり着いたMainoru Shopを出発した。 走り出してすぐに見えてきたのは、昨晩、暗闇の中で恐ろしいと感じた川だ。しかし太陽の光の下で見てみればサラサラと流れる穏やかな川にしか見えなかった。前日溜まったストレスを発散するかのように、ランドクルーザーは臆することなく勢いよくその川に突入する。
道がしっかりとしているのでスピードを出しやすいのだが、それが落とし穴。一度滑り始めると二度とグリップが戻ることはなく、そのままブッシュに突っ込んでいく可能性がある。滑り始める前兆がほとんどないということもあり、ある意味、前回痛い目にあったコルゲーション・ロード(詳しくは「キャサリン回想編 - Hells Gate Creek(地獄の門川)」をご覧下さい)より怖いと言える。
走り続けること数時間、道の右側にポツポツと建物のある場所を通りがかった。コミュニティの名前を示す看板などもなく、ひっそりとした雰囲気だったので、小さなアウト・ステーションだと判断しあまり気にせず走り抜けようとする。すると左側にポツリと立てられた赤い看板が目にとまった。そこに書かれていたのは・・・ 「この先420km、グラベル・ロード(砂利道)。滑りやすいので注意」 んんっ?ちょっと待てよ?なぜか420kmという距離に見覚えが・・・。 この瞬間、僕の脳裏にノーザンランド・カウンシルでもらった地図に書かれていた言葉がよぎった。 「最終給油ポイントBulmanコミュニティを過ぎると420km給油できません。」 ということは、まさか、この静かな村がBulmanコミュニティ・・・ つまり・・ここで給油しないと・・途中で・・ガソリン切れ!? 「ちょ、ちょ、ちょっと待ったあああ!!戻って、戻ってええ!!」 Bulmanコミュニティはガソリン・スタンドやスーパーがあり、地図にも名前が載っているぐらいなのでもっと大きな村を想像していた。しかし実際は車なら3分ほどで通り過ぎることができるとても小さなコミュニティだったのだ。この規模の小ささは想定外だった僕たちは、またしてもアーネ・ランドのイタズラに翻弄されるところだった。
現実問題として、これだけひっそりとしたコミュニティで、いまだに大規模なセレモニー等が行われているとは考えにくい。すでに伝統文化は失われはじめているのだろうか・・。 滅多に入ることのできない中央アーネム・ランドに位置するコミュニティなだけに、できればいろいろな情報がほしかったのだが・・。後ろ髪を引かれる思いを残しながらも、僕たちは先を急ぐことにした。 |トップへ|
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