7. ダーウィン こうして1月中旬までイルカラで過ごしたのだが、実は今回の訪問は雨季のためにあまり期待していなかった。今まで乾季にしか訪れたことがなかったので、激しい雨で道路も陥没して地元の人たちは家に閉じこもっているのだろう、と勝手に想像していた。でも、天気はまずまずで、幸運にも数多くのヨルングの人たちとの再会と新たな出会いがあり、ヨルングの日常生活にも今まで以上に深く入ることができた。 雷雨のためゴーブ空港で2時間待たされたものの、無事ダーウィンに到着した。ここは、伝統のあるディジュリドゥを求めて、多くのディジュ吹きが訪れる場所としても知られている。バックパッカーに着いた時には日付が変わっていた。朝起きてからダーウィンの町中を散歩すると、全盛期に比べてアボリジナル・ショップの数がかなり減っているのに気がついた。生き残っている店を覗いたけれども、がっかりする品揃えだ。なんだ、パースや他の都市のアボリジナル・ショップと変わらないじゃないか。アーネムランドに入る前、出口君から聞いていた通りだった。土産用に作られたレベルのディジュリドゥばかりで、本物の力が感じられないのだ。以前からダーウィンでも本物はそれほど多くはなかったが、今はもう限りなくゼロに近い状態だ。土産屋にはバリ島産のディジュリドゥさえ並んでいる。 僕は、このホームページでもおなじみのグアン・リムが提唱する、地理的・文化的純度の徴候指数(CIインデックス)によるディジュリドゥの格付けに賛同している。これは、ディジュリドゥとその伝統的カストディアンを尊重するために、ディジュリドゥの評価を音質や物理的な質の良さではなく、伝統性の強弱で格付けしてみよう、と言うものだ。付け加えておくと、これは伝統性の無いものを否定しているものではない。 ディジュリドゥが人類学的背景をほとんど無視されたまま一人歩きして、これだけ世界に広まってしまった今、伝統性のあるものだけで世界の需要を満たすことは現実的に無理な話だ。仮に今の需要を満たしてしまったら、アーネムランドの環境が破壊されてしまうのは確実だ。でも、もしも幸運にも本物を手にする機会があったら、じっくりと文化の重さを感じてほしい、と思っている。日本は世界のどこよりも、質の良い伝統物ディジュリドゥを売っている国なので、本物を手にする機会は身近にあるかも知れない。 |トップへ|
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