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Research 林 Jeremy Loop Roots
ヤス(カラキ ヤスオ)|在豪イダキ奏者
リアルタイム・オーストラリア日記 1

5. ハンティング

約一時間後、ガイリ、イカキ、グレゴリーといったイダキ・クラフトマンを含めた総勢9人は狩りに向かった。最初、イダキ用の木を切りに行くはずだったのだが、狩りが優先されたのだ。そのためにグルムルには行けなくなったのだが、結果的に良い経験をした。途中、牧場(ステーション)近くの廃屋に荷物を取りに立ち寄ったが、そこでガイリがイダキを吹くのを聴くことができた。また、翌日姉さんに聞いて知ったのだが、この牧場はガラティヤというグマッジ族の土地で、僕のアボリジニ名の由来の場所であった。車中から横目で見ていたとき、何となく、この牧場はガラティヤなんじゃないか、という気がしていたのだ。ガラティヤから車で更に走ると海に出た。ここは僕とジェレミーにとって初めて訪れる場所だった。

マングローブの林での狩りは、鳥こそ撃ち損ねて逃したけど泥ガニ30パイにエイ1匹と大漁だ。これだけあれば、村人に分けることができる。ところで、ヨルングの人たちは狩りをすると基本的にその場で調理する。獲物を与えてくれた土地に感謝すると同時に、獲物となったものの魂が土地に戻り、そこで再び狩りができるようにするためだそうだ。また、ジェレミーによれば、ヨルングの哲学では、土地に初めて入る者がいると、土地が獲物を隠して狩りがうまく行かないことがあるとのこと。今回大漁だったのは、土地が僕ら2人を愛して受け容れてくれたからだそうだ。ここを離れるとき、エイの尻尾を輪切りにして指輪を作ってくれた。これは僕の宝物になった。

狩りの帰途、結局イダキ用の木も切りに行った。乾季でも大変な作業なのだが、雨季のイダキ切りはかなり堪えた。イダキの値段は高いかも知れないけど、実際に木を切って削ってペイントしてと、一連の作業を経験すると、決して高くないことがわかる。北東アーネムランド以外の、他のアーネムランドのディジュリドゥの値段はそれほど高くはない。伝統を守る人たちが皆、正当な報酬を受け取ることが出来るよう願いたいものだ。ジェレミーはイルカラのアートセンターでそれを実現した。


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