4. ダリンブイ キャンプから戻った後は、イルカラのヨルングの人たちと樹皮画用の樹皮やログを採りに行ったり、実際に絵を描くのを見たりして過ごした。樹皮の採取は皮が柔らかい雨季が適していると教えてくれた。滞在最後の週末は、ジェレミーとダリンブイ、グルムルの村を訪れる計画をした。 ダリンブイはイルカラから内陸に向かって車で1時間半程度、20件ほどの集落から成る小さな村である。バンガラ・ダンス・シアターの元ダンサー、ジャカプラの出身地でもある。そして、グルムルは更に内陸に入った村だ。ある日、ジェレミーに「この4年間のイルカラ生活で、ヨルングに関して人類学者も知らないような知識を、本が書けるほど得たんじゃないか。」と聞いたことがある。すると、「そうかも知れないけど、ヨルングが自分に話してくれたことは自分の心に留めておく。一部のヨルングはこうした知識が公開されることを望んでいないんだ。」との返事が返ってきた。彼は、本当にヨルングに敬意を払い、ヨルングに溶け込んで生活をしている。ダリンブイでは、それが良くわかった。土曜日の朝の村は、皆朝食をとっているところだったが、我々の到着を知ると迎えに出向いてくれた。皆、ジェレミーを本当に快く迎えていた。 世間話をしている傍らで、イダキ制作で有名なガイリの娘さんが、カセット・テープを聴いていた。まだ幼い娘さんが聴いていたテープの内容は、村の子供が伝統の唄を歌い、別の子供がイダキを演奏している、というものだった。これがイルカラだったら、子供たちは西洋音楽を聴いているのではないか、と思った。一般的に、小さな村はイルカラやスキービーチのような大きな集落よりも、伝統が強く残っているように感じられる。 |トップへ|
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