【Kumanytjayi】 Watiyawanu周辺に暮らすアボリジナルは、主にLuritja言語グループに属する。この言語グループでは、亡くなられた人の名前を呼ぶ事はタブーとしている。そのため、亡くなられた人の名前を呼ぶ時は「Kumanytjayi」と名前を変えて呼ぶ様になる。さらにそれは、似た名前を持つ、生存している人にも及ぶ。 例えば、「かずひで」という人が亡くなると、同じ「かずひで」という名前を持つ人は全員「Kumanytjayi」として呼ばれ、「かずひこ、かずひさ、かずみ、etc」といった、似たような発音の名前を持つ人や物は全て「Kumanytjayi」と呼ばれる様になる。僕が現地にいた時、「Kumanytjayi」と呼ばれている人が同時期に3人おられたので、会話が結構ややこしかった。 住民 「そういえば今朝、Kumanytjayiが町へ行ったぞ」 カズ 「えっ、なにも聞いてへんで。彼の分のご飯作ったんやけど」 住民 「お前の義理の兄弟のKumanytjayiじゃなくて、お前の叔父にあたる人の」 カズ 「あっ、そっちのKumanytjayiね。じゃあ僕の伯母さんにあたるKumanytjayiは?」 住民 「彼女はストアーで買い物しているよ」 といった具合だ。慣れない頃は、うっかり死者の名前を呼んでしまって怒られた事もしばしばあった。なぜ死者の名前を呼んではいけないかは詳しくは分からない。彼らに聞いてみたけれども、教えてはくれなかった。ただ、彼らが死者の名前を呼ぶ事を聞いた事が無いし、僕にも注意を促すという事は、タブー的な行為なんだろう。「レッド・センター」ではアボリジナルの法を尊重して、タブーとされている名前に触れる時は「Kumanytjayi」を使用させて頂きます。 *参考書籍 ・KC & LE Hansen「PINTUPI / LURITJA DICTIONARY 3rd Edition」 34p・松山 利夫「ブラックフェラウェイ」10p〜11p
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