【出発】 これまでオーストラリアには、ワーキング・ホリディと観光を合わせて1年3ヶ月程滞在し、その間いくつかのコミュニティを訪れる機会もあった。自分で言うのもなんだけれど、オーストラリアには慣れている方だと思う。それにもかかわらず、いざ出発となると「砂漠での生活って?」、「アボリジナルの人達と上手くやっていけるんやろか?」、「一体、仕事って何すんねん?」、と頭をよぎるのは不安な事ばかりだ。唯一安心できる物といえば、これまでにオーストラリアの旅を共にしてきたバックパック。相棒とも呼べるバックパックを背負い一路、空港へと向かう。 数ヶ月前に航空チケットを購入した時には気が付かなかったのだけれど、今回のフライトは「11月1日の11時00分」。これから先に何か起こるような気がする数字の並び!「これで席番号が11番やったら最高やわ!」とたわいもない事を考えながらチェック・インしたのだが、残念ながらその座席番号は取れなかった。
手荷物の整理を終え、ある人との待ち合わせ場所に向かう。その人とは、以前にノーザン・テリトリー内のコミュニティを一緒に訪れた事のあるデグチさんだ。彼は、アボリジナルと同じ家で数ヶ月間生活を共にしたという貴重な経験を持つ大先輩だ。砂漠でアボリジナルと生活する僕の身を案じてか、空港まで奥さんと見送りに来てくれた。
と、誓いにも似た別れの言葉をかわすと、なにやらデグチさんがカバンの中をゴソゴソと漁り始めた。そして、1冊の本と1枚の邦楽のCDが入った袋を手渡してくれた。袋を開けCDに目を落とすと、タイトルは、オフコースの「ベスト・セレクション」。そういえば、一緒に旅をしていた時に確かに聴いた事のある懐かしいタイトルだ。けれども、機内では絶対に聴かないと心に決めていざ搭乗ゲートへ。さすがにオーストラリアに向かう旅路で「さよなら」は聴けないッスよ!デグチさん!!! |トップへ|
|