EarthTube  
Research 林 Jeremy Loop Roots
RG|ディジュリドゥ奏者
M.Mununggurrインタビュー3

3. Yothu Yindi時代〜現在

RG: Yothu Yindiはいつ頃はじまったの?
MIL: 1988年かな。
RG: ということはYothu Yindiの結成当時は21か22才ってことだね。
MIL: うん、それぐらいだったと思う。そう、Yothu Yindiと一緒に演奏したのが僕のはじめてのレコーディングだったんだ。ファーストアルバムの「Homeland Movement」を録音した88年だね。ちゃんとしたスタジオでの録音ははじめてだったんだ。
RG: イダキを演奏してきた中で、海外ツアー中の珍事件とか、こんな人に出会ったという話はあるかい?
MIL: アイルランドのダブリンで会ったWanggany Yolngu(一人のアボリジナル)のディジュリドゥ奏者の事を覚えてるね。彼のYaaku(名前)をラジオのニュース番組で聞いたんだ。シドニーあたりの出身だと聞いたけれど、その地域のアボリジナルがディジュリドゥを吹くなんて聞いたことがなかった。
RG: そのアボリジナルの人はアーネム・ランドの出身じゃなかったの?
MIL: そうさ、まぁ都会のアボリジナルだよ。その地域の人達もぼくらと同じようなイダキの吹き方なんだろうなぁと思ってたんだ。だから彼とダブリンで会うのが楽しみだったんだ。彼も僕らみたいにイダキを演奏するんだと思ってたんだ。というのも、そのラジオで彼が世界一のイダキ奏者だと聞いたからなんだ。
RG: ほんとに?
MIL: あぁそうさ。だから彼は僕よりもすごいイダキ奏者に違いないんだって噂してたんだ。彼が最高のイダキ奏者なんだから、僕の演奏なんてお遊び程度のレベルなんだろうなと思ってた。彼の事はラジオで聞いたり、雑誌で読んだことがあっただけで、彼の生演奏は聞いたことがなかったんだ。で、彼の演奏を聞きに行ったんだけど、なんというか.....思ってた感じとは違った。彼の演奏していたあのスタイルはどこから来たもんなんだろうかと不思議に思った、わかるかい?その時はただそう思ったんだ。で.....それは全部.....(ここでM.Mununggurrは首をふっていた)。ラジオ放送では、彼がもっともスピーディーな演奏をするプレーヤーだっていうのを話てたんだ。
RG: けどそれはただここ、頬をつかっているだけでしょ?
MIL: そうなんだ!彼が舌を使って演奏していると思ってたんだけど、(舌の動きは)なにもなかったんだ。すべてここ(頬を指さしながら)を使って演奏してたんだ。
MM: 海外ツアーのことを聞かせてくれませんか?ドイツで演奏をしましたよね?
MIL: そう、僕ひとりのイダキだけの演奏でね。Yothu Yindiでは世界中を旅したんだけど、その時はバンドとして動いてたからね。だからお客さんはイダキ奏者だけに会うというわけじゃない。ドイツの時は僕一人で、演奏はイダキだけだった。Yothu Yindiにいた頃、人々は西洋楽器じゃなくてイダキとビルマ(クラップスティック)に本当に興味があったんだね。「きみは現代的な楽器と一緒にイダキを演奏せずに、一人で演奏してみたら」ってたくさんの人に言われたよ。
RG: それってヨォルング?
MIL: Balanda(ノン・アボリジナル)だよBalanda。Ngaapaki(ノン・アボリジナル)の人々がこういった事を言ってた。彼らは「イダキそのものがわたし達の心に響く」と言ってたよ。だから一人で行ってみたんだ。
RG: 今後の展望を聞かせて下さい。もっと海外へ足を運んでイダキを教えたりしたいですか?それとも今はYirrkalaで腰を落ち着けたいですか?
MIL: イダキを教えるビデオを作りたいね。そして、ツアーもいつくかしてみたいよ。
CDを見るMilkayとNicky、そしてRandy

M.Mununggurr初のソロCD「Hard Tongue Didgeridoo」が届いて、はじめてパッケージを見たM.Mununggurr。左からNicky Yunupingu、M.Mununggurr、Randy Graves。

RG: CDを作るっていうのは?ヨォルングの伝統曲ではない、純粋に音楽という視点でイダキの入っているCDとか。
MIL: うんうん。そういう事をやってみたいよ。
RG: 他の楽器と合わせて? それともイダキだけで?
MIL: それはまた別の話だね。ドイツに行った時にパーカッションだけのバンドと一緒に演奏したんだ。そしてそれがすごく良かったんだよ。そのバンドのアルバムの録音に参加してほしいって頼まれた。
RG: それは今まで他のヨォルングがやったことのない事だね。
MIL: そうだね。
RG: Yothu Yindiみたいにポップ・ミュージックにイダキを加えるという形態はあるけれど、それ以外でヨォルングの伝統的な唄が無くてイダキの入ったCDっていうのは聞いたことがないね。
MIL: うん。それか他の国のその土地のミュージシャンとイダキの演奏とかね。ネイティブ・アメリカンの音楽とミックスするとかさ。
RG: このインタビューを読む人達、たとえばヨーロッパやアジアなど海外のディジュリドゥ奏者たちへのメッセージはあるかい?
MIL: ただイダキをリスペクトしてほしいって思う。それがどこから来たのか、もともとどこにあったのかって事をさ。悪い事のためにイダキを作ったり、使ったりしないで、ただイダキをリスペクトしてほしいんだ。イダキを軽んじちゃだめだよ。人を楽しませるために楽しんで演奏してほしい。イダキにいつも敬意を払いながらイダキを演奏して、イダキと共にあり続けてほしいんだ。
RG: 悪い事って例えばどんな事?
MIL: 魔術のために使う人もいるだろ?それは良くない事だね。そんな前の事じゃないけど、僕がドイツへ行った時には、「魔術にイダキを使ってもいいだろうか」と聞いてくる人がいた。もちろん「No」と言ったけどね。
RG: 人を癒したり、そういった事についてはどう?
MIL: ヒーリングはいいね、うん。人に病をもたらすとかそういった悪い事だけが駄目だね。そういった事がいいたいだけだよ。
RG: M.Mununggurr、長らくありがとう。きみの未来のプロジェクトを楽しみにしているよ!
(C)2004 Earth Tube All Right Reserved.