アーネム・ランドにはディジュリドゥをあらわす名称がいくつもあり、その名称それぞれに固有の特長と使われ方があることを前ページでのべた。ひるがえってディジュリドゥという呼び方についてふれてみたい。オーストラリアの音楽学者や民族学者がこの楽器の総称として最初に採用したスペルは「Didjeridu」で、逐語的に発音するなら「ディジェリドゥ」になる。 それが1993年にジャミロクワイのヒットソング「When You Gonna Learn」の曲中でディジュリドゥが印象的に使われ、その曲のタイトルには括弧して「Digeridoo」というサブタイトルが表記されたことによって、スペルに大きな差が生まれる。 全米のポップミュージックのメインストリームの中でディジュリドゥがピックアップされたことによって、90年代中頃から世界的にディジュリドゥを演奏する人が急激に増加する。その流れの中で、前述の「Digeridoo」というスペルから「Didgeridoo」というスペルが登場し、現在ではもともとの「Didjeridu」よりも、世界的に「Didgeridoo」という表記が一般化している。実際に、ドイツでは「Didgeridoo Magazine」という雑誌が発売され、ほかにも「Didgeridoo」というスペルでさまざまな書籍が出版されてきている。 ここで驚きなのは海外ではスペルの違いがあったとしても、「ディジェリドゥ」と発音され、「Didge(ディッジ)」と略して使われたり、場合によっては「Stick(棒)」という言葉が話し言葉の中で使われている。 たとえば、「Nice Stick(Didge)!」といった感じで。 そこでさらに不思議なのが日本における呼び方で、どこでどうなったか「ディジュリドゥ」と呼ばれていて、それが一般的に広まり、短縮した形では当然「ディジュ」と呼ばれることに.......。実際にオーストラリアで「ディジュ」と言っても首をかしげられてしまうだろう。 こういった呼び方やスペルの問題は、「Didjeridu/Didgeridoo」という言葉がその音色を聞いてノン・アボリジナルによってつけられたということに起因しているように思える。聴感上の非常にあいまいな感覚によってつけられた名称が、英語のネイティヴでもない日本人がその響きから「ディジュリドゥ」と呼ぶようになったとしても仕方のない話である。 |トップへ|
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