2. すばらしい音源を聞く
アボリジナルの伝統音楽の世界ではディジュリドゥは歌の伴奏に使われる。そのため、たくみに唇、口腔、舌、喉、声帯、横隔膜を使ったその複雑な倍音成分の多くは、歌やクラップスティックにかき消され、はっきりと聞き取ることができない録音物が多い。だが、今まで録音された音源の中にはすばらしいバランスで録音されている音源もあるし、ディジュリドゥ・ソロのみで構成されているアルバムもあるので下記にその一部を紹介しておきたい。この章では「ディジュリドゥのサウンドの良い音源」を中心に様々なアルバムを紹介しています。
●ディジュリドゥ・ソロのみを収録したアルバム
ディジュリドゥは伝統的にソロで演奏される事はないが、これらのアルバムでは北東アーネム・ランドのヨォルングのイダキ・マスター「Djalu Gurruwiwi」によるバリエーション豊かなリズムと卓越した演奏技術が惜しむことなく披露されている。またその曲のリズムをマウス・サウンドで収録しており、ヨォルングの演奏スタイルを学ぶ人はもとより、音楽構造やリズム的にも興味深い。
●ディジュリドゥ・ソロを含んだアルバム
ここで紹介されているアルバムは主に60年代に録音された音源で、録音状態は最高ではないが、オープンリールのテープで録音されたよりリアル感の強いフィールド録音です。当時のディジュリドゥ・マスター達のすさまじい演奏に圧倒される内容です。パワフルで即興性の高い倍音に満ちあふれた、東西アーネム・ランドのディジュリドゥの名手のサウンドを聴くことができます。
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Aboriginal 
Sound Instruments 
CD 1963-68年録音/1996年CD化 AIATSIS-1CD | 
| アボリジナルの音楽学者Alice M. Moyleによって録音されたオーストラリアの様々な地域の音楽が収録されている。地域差がわかるように様々なディジュリドゥ・ソロとマウスサウンドなどが収録されているのも魅力の一つです。 | 
 
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Australia 
-Songs of Aborigine- 
CD 1963年録音 Lyrichord/Albatros-King LLST 733 /KICC 5774 | 
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 北東アーネム・ランドで当代一のイダキ奏者と言われていたWiriyiによる演奏がすさまじいオールド・スタイルの超絶的な演奏を聞くことができる。 
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●西アーネム・ランドのディジュリドゥの名手の作品
'60年代頃から現在までディジュリドゥ・ソロが収録されているといえば、北東アーネム・ランドのヨォルングの音源か東アーネム・ランドのNumbulwar周辺のものが多かった。これはトゥーツ(ホーン)やコールがリズミックに入り混じる複雑なリズムと演奏スタイルのため、着目されやすいという事がその一つの原因かもしれない。ここで紹介されているのは南西アーネム・ランドに位置するWugularrコミュニティのディジュリドゥの名手「David 
Blanasi」の1stアルバムです。これはディジュリドゥ奏者の名義で発売された初のCDです。有名なソロも数曲収録しています。そしてWANGGAのディジュリドゥで最高の演奏者Nicky 
Jorrockのサウンドを聴くことができる名盤「Rak Badjalarr」です。トゥーツを使わない演奏スタイルで、倍音豊かなサウンドです。
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Didjeridu 
Master  
CD 1968年製作 Big Ban | 
| Kunbjorrk(KUNBJORRK(GUNBORG))スタイルの天才的Mago(ディジュリドゥ)奏者デビッド・ブラナシの大地をひきずるような倍音に溢れた、全世界必聴の一枚! | 
 
●ディジュリドゥのサウンドがすばらしい歴史的名盤
過去には、民族学者達がリサーチのためにアーネム・ランドを訪れ、録音した音源が多数LPレコードやカセットなどで販売された。それらの録音は、目を閉じればアーネム・ランドのブッシュが目に浮かぶような、素朴で力強く、生き生きとしたフィールド録音です。その一部はCD化され現在でも聴くことができます。いずれも歴史的名盤です。
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Arnhem 
Land Popular Classics 
CD-R(LPからのリマスター盤) 1961-62年録音 WATTLE WD-5  | 
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 デビッド・ブラナシの最古の音源(3曲)を含む、西アーネム・ランドBeswick Creekで録音された激烈にすばらしい激レア・レコードを奇跡のオフィシャルCDーR化! 
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Songs 
from the Northern Territory vol.1, vol.2, vol.3, vol.4, vol.5 
CD 1962-63年録音 AIATSIS  | 
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 伝統的なアボリジナル音源のバイブル的な5枚組LPをCD化。地域ごとにスタイルをわかりやすく解説、そして何よりも60年代初頭の生き生きとしたサウンドが心を打つ名盤中の名盤! 
 
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Songs 
of Aboriginal Australia 
カセット 1961-64年録音 AIATSIS  | 
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 B面全部にGoulburn島の音楽を収録しており、GUNBORGスタイルのディジュリドゥを伴奏にした非常にポップでユニークな歌がすばらしい!そして貴重な内容です。R.Berndt教授の録音。 
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Tribal 
Music of Australia 
CD-R(LPからのリマスター盤) 1953年録音 Smithonian Folkways 0D SF 4439  | 
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 LPのみで発売されたものをオフィシャルCDーR化。多数のDjatpangarriなどの北東アーネム・ランドの歌とGUNBORG、WANGGAも収録してある名盤。音質は悪いが好内容。 
 
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 まず最初にすばらしい演奏を含んだ音源を聞く、もしくはすばらしい演奏者の生の演奏を聞くという事が伝統的なアボリジナルの音楽への「とっかかり」としては最高の手段だと思います。上記に紹介されている歴史的名盤はそれらのエッセンスが複合的につまった非常に濃い内容で、特に上記であげられた三人のディジュリドゥ・マスター「Djalu 
Gurruwiwi」、「David Blanasi」、そして「Nicky Jorrock」は、世界にその名を轟かせるディジュリドゥ奏者で、僕個人としては彼等の音については言葉にして説明するよりも一聴すればそのすばらしさがわかると思うのです。