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Research 林 Jeremy Loop Roots
Gori|ディジュリドゥ奏者
アボリジナル・ミュージックを聞く

1. ディジュリドゥとその他のアボリジナルの楽器
観光ビジネスが進む現在のオーストラリアでは、各地のおみやげ屋ではもちろん空港でもアボリジナルの伝統楽器ディジュリドゥがみられる。では実際ディジュリドゥがオーストラリア全土のアボリジナルの人々によって伝統的に演奏されてきたかというとそうではない。

Thompson Mako
Gunbalanya(Oenpelli)のディジュリドゥ
オーカー(顔料)でペイントされた素朴な見た目で、寸胴で木の厚みは薄く作られており、内部の空洞の大きさが比較的大きく、長さは短い。形状・サウンドともに西アーネム・ランドの伝統的なディジュリドゥです。

民族学者達の研究によると、ディジュリドゥが伝統的に演奏されるのは西オーストラリア州北部のキンバリー地方からノーザン・テリトリー州北部のアーネム・ランドと呼ばれる巨大なアボリジナル・ランド、そして南東はクイーンズ・ランド州のBorrolooraあたりまでである(南回帰線の北側だと言われている)。しかし1960年にはキンバリーのはるか南西のRoebourneでもディジュリドゥが演奏されるようになり、現在では上記の領域を越えた地域のアボリジナルがディジュリドゥを演奏することがある。

オーストラリア北部地図

それ以外の地域ではどのような楽器が使われるかというと、ケープ・ヨーク半島ではパプア・ニューギニアやトレス海峡の文化により強い影響を受けたPoiとよばれる砂時計型の片面太鼓や、植物の種子を使ったササラなどが使われたり、中央・西砂漠地域ではクラップスティックや、ブーメラン・クラップスティック、ヤリ投げ器にキザミを入れ、スティックでこする楽器が使われたりと彼等の音楽の多様性はその広大な地域に応じて様々である(ブル・ロアラーは特定の儀式で使われる儀式的道具であるため、楽器としての羅列はさけています)。こういった多岐にわたる音源を聞きたい方は、人類学者Alice M. Moyleが60年代に収集した『Aboriginal Sound Instruments』(CD : AIATSIS)に様々な地域の楽器とその現地録音が収録されているので、聞いてもらいたい。

Aboriginal Sound Instruments Aboriginal Sound Instruments
CD 1963-68年録音/1996年CD化 AIATSIS-1CD
アボリジナルの音楽学者Alice M. Moyleによって録音されたオーストラリアの様々な地域の音楽が収録されている。地域差がわかるように様々なディジュリドゥ・ソロとマウスサウンドなどが収録されているのも魅力の一つです。
Aboriginal Sound Instruments Instrumental Music of Asia & Pacific Series2-2
3本組カセット 1968年製作 ACCU(Asia Cultural Center for Unesco)

内容は他の音源からの抜粋だが、Alice M. Moyleの解説によるより詳しい楽器の説明の掲載されたブックレットが付属している3本組カセット。かなり詳しく幅広い楽器がとりあげられている。

Aboriginal Sound Instruments Instrumental Music of Aais & Pacific Series3-3
3本組カセット 1968年製作 ACCU(Asia Cultural Center for Unesco)

上記と同じシリーズのカセット。詳しい楽器の説明だけにとどまらず、オーストラリアの様々なエリアの多様なアボリジナルの音楽についても説明されている。非売品だが、その内容は必読。

ディジュリドゥを伝統的に使う地域というのは限られていて、アーネム・ランドを中心とした北部オーストラリアで伝統的に使われてきた楽器なのです。つまり、ディジュリドゥはオーストラリアの一部地域の伝統楽器なのです。だからアボリジナル・ミュージックを聞く時、そのミュージシャンの出身地は非常に重要です。そして四国と北海道を足した程の広さのアーネム・ランド内だけでも、かなり幅広い音楽性を持っている。

そのほんの少しの情報を知っているだけで、より深く彼等の音楽を楽しむことができる。それをふまえて以下のアーネム・ランドを中心としたアボリジナル音楽について進みたいと思います。

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