【コミュニティの夜は別の顔】 街から離れたコミュニティで過ごす夜はとても静かだ・・と言いたいところなのだが、実際はそうでもない。深夜にいきなり一斉に吼え始めたり、突然テントに襲来してくる犬たち以外にも、僕らの安眠を妨げるものがあるのだ。 ある日の夜、僕は断続的に続くなにかを叩くような音で目が覚めた。 その音の正体は、隣の家の酔っ払いのおっさんが家に帰ってきたのだが、鍵が閉まっていて中に入れず、玄関の扉をドンドンと叩いている音だった。 「うおおおおい、帰ったぞおおお、ドンッドンッ!!開けろ〜おおいっ!!開けろ〜!!」 彼は時折ブチ切れたように声を荒げたり、かと思ったらちょっとお願い風になったりしながら延々と扉を叩き続けてる。 もういい加減にしてくれ〜とうんざりし始めたころ、今度は若い女性がヒステリックな叫び声をあげながら家の方へと近づいてきた。 こっちは声の調子からして更に深刻な内容のようだ。家ではその声に気付いた家族たちが起きだしてきてザワザワとし始めていた。 声の主が家に到着すると、それから激しい討論が始まった。内容はよく聞き取れないのだが、どうもお金関係のこじれが原因のようだった。叫ぶ人、いさめる人、泣き始める人などが入り乱れ、もうテンヤワンヤの大騒ぎ。 一方の僕らはというと、右の家では酔っ払い、左の家では激しい討論というステレオサウンドに挟まれながら、それぞれのテントの中でそっと息をひそめながら嵐の過ぎるのを待つのだった。 コミュニティの夜は別の顔。リアル・ヨォルング・ライフは甘くない。 |トップへ|
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