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Research 林 Jeremy Loop Roots
ヤス(カラキ ヤスオ)|在豪イダキ奏者
ブラブラ日記 -Walking with Spirits フェスティバル編 3-

【ブル・ダスト】

ダートロードに進入してから数十分後、僕らは猛烈に後悔していた。 最初の数キロはたいした起伏や難しい場所もなく快適に走れた。 僕らの気分も軽くなり、その口からは「結構余裕やん」などという言葉まで飛び出していた。しかしである、問題は道も半ばから登場し始めた「ブル・ダスト」と呼ばれるとんでもない砂地の道だった。

「ブル・ダスト」とは地元の人たちも恐れる「アリ地獄のような砂」、いやむしろ「粉」という表現が正しい。事実その感触はまるで小麦粉のようで手のひらがフワリとまったく抵抗を感じずに沈んでいく。そんな砂の上を車がまともに進むわけがない!

最初にその砂と遭遇した時の感じを一言で表現すると「あれっ?浮いた?」という感じ。一瞬、タイヤと地面の摩擦がいっさい無くなったような感じになる。ハンドルはフワフワとした感触で車のタイヤは左に右に振られ、まっすぐ進むのも容易ではない。アクセルを開けるとタイヤが空回りするのがわかる。そしてアッというまに砂はタイヤを包み込み、前にも後ろにも進まなくなるのだ。後で聞いた話だが、この砂は4WDですらスタックさせてしまうらしい。しかし僕らは事前にこんな砂の情報はまったく聞いていなかったのである。

日本で多少山を走った経験のあった僕はその危険にいち早く気づくことができた。タイヤが滑り始めたことに気づいた僕はシフトを一速に落とし、アクセルを微妙に調整する。それでもまるでアリ地獄に引き込まれるかのように、車は深い溝のほうへジリジリとすべり落ちていく。その溝に落ちてしまえば確実に動けなくなることはわかっていた。

ハンドルを握る僕の手のひらにはじんわりと汗がにじみ、しゃべる余裕など一切ない。助手席ではその気配を察したのか黙りこくるのりくんがいた。

そしてまったく車が動かなくなった。僕は必死にハンドルを左右に振り続ける。すると思い出したように車はまた少しづつ動き始める。これを何度繰り返しただろうか、疲れもピークに達した頃、やっとそのアリ地獄から這い出すことができた!

「だああああ!!!なんじゃこりゃあああ!!!ほんっまに危なかった!!」
「僕もうだめだと思いましたよ!デグチさん!!」

ここから先の数キロの長かった事といったらなかった。何度もこのブル・ダストや深い溝が刻まれた場所などがあり、道を迂回しようにもそこはブッシュ。ブッシュ・ファイヤーで焼け残った鋭い草の根が一面に残っているのでパンクの危険が常につきまとっていた。この草の根、どれだけ鋭いかというとサンダルの底を突き抜けて足に刺さることもあるぐらいといえばわかりやすいだろう。舗装路用のタイヤなど突き抜けてしまう可能性がある。

砂をかぶったレンタカー

ブル・ダストは僕らのピカピカのレンタカーを見るも無残な姿に変えていた。 もともとの色は前回の話の写真を参照してください。

途中何台かすれ違ったのはすべてランドクルーザーなどの4WD。その運転席から僕らのことを驚いたように見つめる人、あきれたように苦笑いする人、グッドラック的な励ましのゼスチャーを送ってくれる人・・さまざまな人たちがいたが、彼らから共通して感じたのは「おまえらアホやろ」という理解できないものを見る目だった。

一度もスタックせず無事会場に到着し、自分たちの車の色を見たとき、僕とのりくんはひとつの冒険を終えたような充実感をしみじみと感じていたのだった。でも帰り道は?という疑問には2人とも触れようとはしなかった・・・。
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