凸凹感が漂うメンバーでスタートした今回のWadeyeコミュニティへの旅。
闇にオレンジ色の光が揺れる夜のブッシュ・ファイヤーはとても美しい。 しかし同時に煙で前が見えないなどの危険も伴うことになる。
|
さまざまな理由でスタートが遅くなったため、その日は途中のDaly Riverで一泊することを決め、先を急いだ。それでもDaly Riverまで70km程度を残して、あたりは真っ暗闇。夜のアウトバックはいつカンガルーが飛び出てくるかわからず本当に怖い。
しかも途中から急に霧に包まれたように白い煙が視界を遮り5m以上先がまったく見えなくなってしまった。その理由はブッシュ・ファイヤーの煙だ。日本でいえば「濃霧」の時とほぼ同じ状況でライトをつけるとさらに視界が悪くなる。僕はスピードを落として恐る恐る走りつづけ何とか無事にDaly
Riverに到着。その日は早々と眠りについた。
|
翌日の早朝、僕はDaly Riverの状況を確認しに行くことにした。前回この川の状況を確認したのが雨季が終わってすぐの5月末、いまは乾季まっただなかの8月末。この約3ヵ月の間に川の状況がどのように変化しているのか気になっていたからだ。川の見える場所まで来てあたりを見渡した僕はその劇的な変化に心底驚いた。前回濁流だった場所には今やひざ下程度の水量しかなく、流れる水は透き通り、川底に作られた道がむき出しの状態になっていた。ボー然と立ち尽くす僕の視界を2WDのセダンが悠々と渡っていく。
まさかたった3ヵ月でここまで変化するとは思ってなかった。日本の常識では考えられないぐらいダイナミックなオーストラリアの自然の変化を実感した瞬間だった。
同時に「5人が川に流され助けを求めている映像」はガラガラと音をたてて崩れ去り、あとには高い車に変更させてしまったという申し訳ない気持ちだけが残った。みんなに謝らなければ・・。 |
これがDaly River。横一線に見えるのが川底に作られた道。Merrepen Artフェスティバルのときには濁流だった場所だ。
|
「No Worries Mate! 結果オーライさ。これで安心してWadeyeを目指せるじゃないか。」
川の状況を説明しながら過大な心配をしてしまったことを謝る僕にメンバーは笑顔でこう答えてくれた。みんなの気持ちに涙がこぼれそうになった。
アウトバックではみんな子供のように屈託のない笑顔になる。
|
それから気を取り直して澄み渡る青空の中、一路Wadeyeを目指しDaly Riverをあとにした。
乾いたブッシュを切り裂くように地平線まで一直線に伸びるダートロード。5mはあろうかという巨大なアリ塚がポツポツと視界に入る。時速100kmで疾走する僕達の前にも後ろにも車はなく、バックミラーには自分達の車が上げた砂煙だけが映る。これぞアウトバックという壮大な景色だ。 |
運転はローランド、僕とマルコスは窓から身を乗り出すようにして、ノン君とユウジは車の天井によじ登りその爽快な空気を満喫した。
その状態で走ること数時間、今夜のキャンプの許可申請のため、1つ手前のPalumpaコミュニティに寄ったあと、僕たちはついに念願のWadeyeコミュニティへと足を踏み入れた。