【プールに噴水?驚きのWadeyeコミュニティ】 Wadeyeコミュニティはダーウィン南西部の沿岸、Timor Seaに接するようにして作られた大きなコミュニティだ。ノーザン・テリトリー州全体で見てもその規模は大きく、近隣の7つ以上の言語グループから人々が集まってきている。初めて足を踏み入れたときに感じたのもその規模の大きさと設備の充実度だった。 まずはじめに目を引いたのは噴水のある大きなプール。そこで多くの子供達が楽しそうに水浴びをしていて、いきなりビックリさせられた。プールの隣には木々に囲まれたきれいな学校がある。コミュニティを横切るように一直線に伸びる中央分離帯のある大通り沿いには、コミュニティセンターやATMのあるスーパーマーケット、さらには八百屋、ラジオ局などが並ぶ。そして僕たちの目的のひとつでもある「Wadeye Art and Cultural Centre」もその通り沿いにあった。
耳には遠くではしゃぐ子供達の声や木の葉の揺れる音、人々がしゃべる声などが聞こえてくる・・。まるで別世界にいるような浮遊感に包まれながら僕は眠りに落ちてしまった・・。 「ハル、そろそろいこうか」 誰かに声を掛けられてゆっくりと目を開けると、先に起きていたメンバーが食器などを片付けているのが見えた。ここはどこだろう・・そう思ってから記憶をたどるまでにすこしの時間が必要だった。そうだ、僕はWadeyeに来ているんだったな・・。 再びアートセンターを訪れてみると、すでにオープンしているらしく鍵はかかっていなかった。扉を開けると、中は薄暗くなっていて、突然の光の変化に目がついていけず視界がぼやける。すこしずつ目がなれてくるとこの地方独特のペイントが施された20本程度のディジュリドゥが飛び込んできた。 「おーーーーっ!!」 この光景にメンバーのアドレナリン分泌量が一気に高まった。我先にとためし吹きを始め、さっきまで静かだったアートセンターのあちらこちらにディジュリドゥの音がこだました。かれこれ1時間は吹いただろうか、最終的にユウジ、ノン君が1本ずつ、マルコスが2本購入してアートセンターは最初の静けさを取り戻した。僕はと言うと、並んでいたディジュリドゥからはこの地方の特色が掴みきれず、結局1本も購入することができなかった。 一通りの品定めが終わったあと、アートセンターの係員であるジャネットに僕たちの滞在許可がおりているかどうか確認してみた。彼女は早速カウンシルに電話をしてくれたのだがどうも様子がおかしい。後で聞くと僕たちが滞在するという件がカウンシルの担当者に伝わっていなかったようで、トラブルが発生したようだ。彼女は僕らにここですこし待つように言うとカウンシルへ説明に走ってくれた。
「なにも心配することはない。許可はきっとおりるよ。私はあなたたちがこのコミュニティを訪れてくれたことを歓迎する。」 その年配の男性は僕たちにこう言ってくれた。けれど、このあたりの土地の所有者は彼一人ではないため交渉は難航しているらしく、僕たちはしばらくの間アートセンターに足止めされることになった。 彼とジャネットの力添えがあったおかげで、なんとか滞在許可はおりることになったのだが、もし許可がおりなければ僕たちはすぐに帰らなければいけないところだった。ここで改めて許可申請の重要性を認識したのだった。 トラブルも一段落したところでジャネットに今回の旅の一番の目的であるディジュリドゥ職人Claver Demmuの所在を聞いてみた。すると予想だにしない答えが返ってきたのだ。 「あら?Claver Demmuなら朝からダーウィンに行っているわよ?」 なんと彼は僕たちと入れ違いに、目の治療のためダーウィンへ行っているというのだ。 フラフラと力が抜けるメンバーたち。なんでこう毎回ハプニングばかり続くのかわからなかった。ガックリとうなだれる僕たちをみてかわいそうに思ったのか、ジャネットがこの地域を案内できる人を紹介してあげるといってくれた。そして出会ったのがリチャードという画家の青年。僕たちは彼と明日から1泊2日のキャンプに出かける約束をしてアートセンターをあとにした。
「ここまで来てよかった」。全員がそう感じた瞬間に違いない。明日はどんな展開が待っているのかいまから楽しみでしょうがなかった。 |トップへ|
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