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Research 林 Jeremy Loop Roots
ヤス(カラキ ヤスオ)|在豪イダキ奏者
ブラブラ日記 -スピリチュアル・ツアー編 1-

【きっかけは突然に】

それはダーウィン郊外にある「Museums & Art Gallaries of Northern Territory」で毎年開催されている「Telstra National Aboriginal & Torres Strait Islander Art Award(※政府のオフィシャル・サイト:英語)」というアボリジナル・アートの展覧会のオープニングに参加していた時だった。

どこかで見かけたことのある男性がいきなり僕に声をかけてきた。

「ハイ!マイッ(Hi Mate)! おまえハルだろ?」
「えっ?そうだけど・・?」

「Walking with Spiritsフェスティバルで会ったマルコスだ。覚えてるだろ?ユウジから聞いたけどお前、Wadeye(旧名:Port Keats)コミュニティに行きたいんだって?」
「え?う、うん。機会があれば行きたいと思ってた。」

「誰か会いたい人がいるのか?」
「えっ?あーっと、前に人から教えてもらったClaver Demmuっていうディジュリドゥ職人に会いたいと思って。」

一方的に畳み掛けるように話す彼に対して僕は戸惑いながらもそう答えた。すると彼は驚いたような顔を見せながらこういった。

「それなら話は早い!まさにそのClaver Demmuに会いに行くんだ。よし、じゃあ三日後に出発するから準備しといてくれ。また会おう!」
「えっ?あっ。ちょっと・・・」

彼はそう言い残すと、あっけにとられている僕を置いてアッという間に人ごみの中に消えて行った。彼が去っていくのを目で追いながら僕は少しずつ頭の整理を始めた。

マルコス Walking with Spiritにて

彼がマルコス。彼に出会ってスペイン人と日本人の考え方の違いを痛感させられた。

僕に声を掛けてきた男性の名前はマルコス。 前回紹介したWugularr(Beswick)で開催された「Walking with Spirits」フェスティバルの会場で出会ったスペイン人ディジュリドゥ奏者だ。

もともとはユウジの知り合いで、スペインでディジュリドゥ教室を開いたり、ライブをしたりして生活しているらしい。ユウジの話では凄腕のコンテンポラリー奏者らしいのだが、僕はまだ一度もその演奏をきかせてもらったことがなかった。というのも今彼がどっぷりとはまっているのはアボリジナルの伝統的な演奏スタイルであり、僕たちの前でコンテンポラリースタイルを演奏することがなかったからだ。

WadeyeはDarwinの南西、「Merrupen Art フェスティバル編」で紹介したNauyiuコミュニティからDaly Riverという川を渡り、ダートロードを延々250kmほど西に走り続けてやっとたどり着く海岸沿いにあるコミュニティだ。
BelyuenコミュニティのNicky Jorrokが素晴らしい演奏を披露しているCD「Rak Badjararr」の影響で、かねてから興味があったWanggaスタイル。そのNickyたちが深い関係があるんだと語っていたのがこのWadeyeコミュニティの人たちだった。そういったこともありオーストラリア滞在中にぜひ一度訪れたいと思っていた。しかしそこはダーウィンから遥かに離れているだけでなく、一切知り合いもおらず、どう許可をとったらいいのかもわからなかった。半ばあきらめかけていたこのコミュニティを訪れるチャンスが突然めぐってきたというわけだ!

今回のArt Awardのために特別設置された舞台ではダーウィンに程近い島、Tiwi島から訪れたグループが伝統的な踊りを披露していた。何度も繰り返される単純な歌と踊り、そして足踏みが独特の雰囲気を作り出す。そのシンプルなリズムに呼応するかのように僕の気持ちは少しずつ盛り上がっていった。

「Wadeyeへ行くんだ!!」

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