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Research 林 Jeremy Loop Roots
ヤス(カラキ ヤスオ)|在豪イダキ奏者
ブラブラ日記 2 -大陸縦断 後編 2-

【さて、なにをしようか・・】

「オーストラリア大陸縦断」。こう書くと聞こえはいいけれど、現実は巧みに編集されたテレビの冒険番組のようにうまくはいかない。アウトバックに入ってから数時間。すでに対向車線をすれ違う車もまばらになり、たまにすれ違う車といえば、街ではほとんど見かけなかった埃と泥にまみれた汚い4WDばかり。ついには前にも後ろにも車の気配すらなくなっていた。窓の外を眺めてみても1時間前とどこが変わったのかわからない景色が広がる・・。かといって車内を見回しても、目に映るのはそこら中に散乱した荷物と、いつもと変わらないメンバーの顔だけ。

「フワァァァァー・・・ァァ。 フゥー・・・。」

つまり、これ以上ないほど「なにもすることがない!」のである。

その時、あまりに暇すぎたのか、ノンくんが突然おかしな行動を始めた。助手席の手すりを持って思い切り引っ張っているのだ。

「なにしてんの? そんなんしたら車壊れるで」と聞くと

「なにっ、て? 筋肉トレーニングですやん!」ときっぱり言い切った。

筋トレのノン様
これは手に持ったタオルを窓の外に突き出し腕を鍛えるというもの。効果のほどは定かではない・・。もし要望が多ければ「ブラブラ日記番外編‐ノンくんの筋トレ特集」を書くかも?
そう言われてよく見ると、彼の体はシートベルトで固定され、ある程度以上動かないため筋肉に力が入っているのがわかる。最初はアホらしいと思ったものの、時間が経つと「なるほど・・」と思えてくるからヤバイ。しまいには、暇もつぶせて体も鍛えられるなんて一石二鳥じゃないか、とまで思えてきた。

極狭スペースでの缶詰状態に正常な判断能力を失っていたのだろう。その後、この「車内筋トレ」は結構流行ることになる。みんなでさまざまな新しい筋トレを生み出したのだが、そのうちのひとつを写真入りで紹介しておこう。まあ、もう二度とすることはないと思うけど。

運転はGoriくん、ノンくん、僕の3人が担当。順番に交代しながら止まることなく走り続ける。運転を変わって後部座席に移動した人は、崩れ落ちそうな荷物の隙間に無理やり体をねじ込むようにして眠る。こんな体勢でゆっくりと休息が取れるはずもなく、頭も体もつねにぼんやりとした徹夜明けのような状態。少しずつ、けれども確実に回っていく距離メーターと、エンドレスに流れ続ける音楽だけが僕たちの楽しみだった。

7月27日・・・・・・・

約700km走破し、ボンボン・クリークという名前の道路に隣接した休憩所でキャンプする。 地平線に日が沈むと、360度広がる空が言葉では表現できないような色に変わっていく・・。

見ているとスゥーと吸い込まていきそうな空の色に、しばし心を奪われた。 久しぶりに体験する満天の星空の下でキャンプ。焚き火の炎で料理するのも久しぶりなので、奮発して買っておいた箱ワインがすすむ、すすむ!

そしてその夜、みんなが寝静まった頃、車のほうでゴソゴソ音がする。しかも突然クラクションが鳴った!まさか盗難か?と思ったけど、あまりの寒さに自称「南国志向」のGoriくんが凍えてテントから車の中に移動していただけだった。まぎらわしいことはやめてんかあ。
美しい夜空が広がる

日が沈むと暗くなった空に1番星が輝くのがはっきりと見える。 何千年も前の人たちも同じ空を眺めていたに違いない。

7月28日・・・・・・・

約800km走破し、アデレードとダーウィンのほぼ中間地点であるアリス・スプリングスに到着。その夜、アリス・スプリングスで僕たちは大きな決断をすることになる。その決断とは、Wugularrでのフェスティバルが31日にあるので、キャサリンまで残り約1,200kmを29日中に走りきり、そして30日まるまる一日キャサリンでゆっくりと休息をとろうということだった。ただ、この距離を1日で走ろうと思えば、時速90kmで走り続けても13時間以上走ることになり、体にも車にも大きな負担をかけることになる。

しかし最終的に僕たちはこの距離に挑戦することに決めたのだ!

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