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Research 林 Jeremy Loop Roots
ヤス(カラキ ヤスオ)|在豪イダキ奏者
ブラブラ日記 2 -大陸縦断 後編 3-

【揺れるメーターに一喜一憂】

キャサリンのココズの風景
このとき僕はココズ・バックパッカーズでの平和で静かな1日を思い浮かべていた・・。写真はバックパッカーズのキャンプ・グラウンド。
翌日の7月29日、まだ漆黒の空にモーニングスター(明けの明星)が輝くなか、アリス・スプリングスの街を出発した。

1,200kmを一気に走り抜けるという強行手段に出たため、車に過度な負担をかけるのではないかと思っていたが、さすがランドクルーザー!今までと同じように順調に走り続けてくれていた。

キャサリンに着いてしまえば明日1日ゆっくりと休息をとることができる!これはただ黙々と走ることに疲れきった僕たちにとって、なににも換えがたいすばらしい響きだった。

この日は交代で休まずに走り続け、太陽が地平線に隠れる頃にはキャサリンまであと20kmという所までたどり着いていた。

日が沈むと、一気にアウトバックの暗闇がやってくる。その闇はとても濃く、ライトをつけなければ辺りはほとんど何も見えない。僕は鳥目なので暗闇は大の苦手だ。こんな時頼りになるのがノンくん。彼は暗闇の中に潜むカンガルーを見つけることができるのだ!僕なんか赤茶色のダートロードとカンガルーの区別がまったくつかないため、何度カンガルーを轢きそうになったかわからない。必然的に夜の運転はノンくん中心になり、この時も彼が運転していた。そして暗くなるのに合わせてライトをつけてしばらくしてからだった・・。

「アッ、アレッ? ちょっとアレッ? なんかこの車、おかしなってる!!」

「エッ? エェッーー!! マジでっ? なにがっ?」

このノンくんの不安そうな声を聞いた瞬間、ここまで順調だった旅に急に暗雲が立ち込めたように感じた。ノンくんがおかしいと気づいたのはオイル・プレッシャーのゲージ。ライトをつけたことで表示が光り、はっきりと確認できるようになっていた。そしてよく見るとゲージの針が1番下まで下がってるじゃないか!!

あきらかにおかしい!僕は焦る気持ちを抑えながら、整備手帳をバサッバサッとめくり、その表示が何を表しているのか必死で確認した。そして見つけた文章は、僕の頭を真っ白にするのに充分な恐ろしい内容だった。
美しい夜空が広がる

暗闇に光るメーター類が不安を掻き立てる。

「警告・・このゲージが通常より下がっている時は、直ちに車を路肩に止め、エンジンを切り、修理業者に速やかに連絡してください。さもなければエンジンに深刻なダメージを及ぼす可能性があります・・・・・・・。」

「デグッさん!なんて書いてあったん?? どうすんの?」

「・・・・・」

この内容をみんなに説明するのはさすがに気分が重かった。

一瞬シーンとなるメンバー。街までは残す所たった20km。

あと少し、あと少しなのに・・、と気持ちは揺れる。

しかし、このまま走り続ければエンジンに深刻なダメージが残るかもしれない。そうなると修理できる可能性は低い。できたとしても莫大な費用がかかるだろう・・。そうなれば僕たちの壮大なアーネム・ランドの旅は、終わりを告げることになる・・。

筋トレのノン様
暗闇の中でエンジンルームを確認する。ライトがなければなにも見えなくなる。

「とりあえず、車を止めよう!」

そう決断して車を路肩に寄せた瞬間、ボンネットの隙間から白い煙が立ち昇るのが見え、僕は「もう終わった」と覚悟を決めた。エンジンが焼きついたのかと思ったのだ。

しかし煙の原因を確認するため最初に車を飛び降りたノンくんが・・
「大丈夫、大丈夫!! これ砂煙ですよ!」
「よ、よ、よかったああああああ・・」

ホッとしたのもつかの間、急いでボンネットを開け中を確認してみる。まず異臭等は一切なく、エンジン・ルームも旅の最初の頃と変わらずきれいな状態。次にエンジン・オイルも減っていなかった。そしてその他の重要そうな部分を確認していく。しかし一見して問題と思えることは見当たらなかった。考えられる原因とすれば「ゲージの故障」。

これだけなら走行にはなんの支障もないのでこのまま街まで走り、明日、修理屋に持っていけばいいことになる。しかし・・さっき読んだ整備手帳の文章が頭をよぎる。もしエンジンになにかトラブルがあるとすれば・・不安はある。

「僕、ずっと運転してたけどゲージ以外に違和感なかったんですよ。キャサリンの街までは走りきれると思います!」

「・・・。そうやな・・。 よしっ! 行こう、街まで!」

そこからの20kmがどれだけ長かったかわからない。暗闇の中にぼんやりと光るオイルゲージをジッと見つめる。そしてフラフラと上下に揺れる針に気持ちを翻弄されながらも必死に走った。そして精神的な限界が近づいたころ、僕たちは無事キャサリンの街にたどり着いたのだった。

キャサリン回想編へ続く
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