【揺れるメーターに一喜一憂】
この日は交代で休まずに走り続け、太陽が地平線に隠れる頃にはキャサリンまであと20kmという所までたどり着いていた。 日が沈むと、一気にアウトバックの暗闇がやってくる。その闇はとても濃く、ライトをつけなければ辺りはほとんど何も見えない。僕は鳥目なので暗闇は大の苦手だ。こんな時頼りになるのがノンくん。彼は暗闇の中に潜むカンガルーを見つけることができるのだ!僕なんか赤茶色のダートロードとカンガルーの区別がまったくつかないため、何度カンガルーを轢きそうになったかわからない。必然的に夜の運転はノンくん中心になり、この時も彼が運転していた。そして暗くなるのに合わせてライトをつけてしばらくしてからだった・・。 「アッ、アレッ? ちょっとアレッ? なんかこの車、おかしなってる!!」 「エッ? エェッーー!! マジでっ? なにがっ?」
「警告・・このゲージが通常より下がっている時は、直ちに車を路肩に止め、エンジンを切り、修理業者に速やかに連絡してください。さもなければエンジンに深刻なダメージを及ぼす可能性があります・・・・・・・。」 「デグッさん!なんて書いてあったん?? どうすんの?」 「・・・・・」 この内容をみんなに説明するのはさすがに気分が重かった。 一瞬シーンとなるメンバー。街までは残す所たった20km。 あと少し、あと少しなのに・・、と気持ちは揺れる。 しかし、このまま走り続ければエンジンに深刻なダメージが残るかもしれない。そうなると修理できる可能性は低い。できたとしても莫大な費用がかかるだろう・・。そうなれば僕たちの壮大なアーネム・ランドの旅は、終わりを告げることになる・・。
ホッとしたのもつかの間、急いでボンネットを開け中を確認してみる。まず異臭等は一切なく、エンジン・ルームも旅の最初の頃と変わらずきれいな状態。次にエンジン・オイルも減っていなかった。そしてその他の重要そうな部分を確認していく。しかし一見して問題と思えることは見当たらなかった。考えられる原因とすれば「ゲージの故障」。 これだけなら走行にはなんの支障もないのでこのまま街まで走り、明日、修理屋に持っていけばいいことになる。しかし・・さっき読んだ整備手帳の文章が頭をよぎる。もしエンジンになにかトラブルがあるとすれば・・不安はある。 「僕、ずっと運転してたけどゲージ以外に違和感なかったんですよ。キャサリンの街までは走りきれると思います!」 「・・・。そうやな・・。 よしっ! 行こう、街まで!」 そこからの20kmがどれだけ長かったかわからない。暗闇の中にぼんやりと光るオイルゲージをジッと見つめる。そしてフラフラと上下に揺れる針に気持ちを翻弄されながらも必死に走った。そして精神的な限界が近づいたころ、僕たちは無事キャサリンの街にたどり着いたのだった。 キャサリン回想編へ続く
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