【アウト・バック!】
この時点でアボリジナル・コミュニティでの最初のイベントとなるWuglarr(Beswick)コミュニティでのWalking With Spiritsフェスティバルまで残り6日。メルボルンからキャサリンまでは約3,600kmあるため、単純に考えても1日600km以上走らなければ間に合わない。とにかく急がなければ!僕たちはメルボルンをまだ薄暗いうちに出発した。 車のワイパーを最速にしても視界がほとんどゼロという突然の大雨や、前の車のバックライトさえ消しさるような濃い霧などに悩まされながらも、なんとかその日中に次の大都市であるアデレードに到着。しかしゆっくりと休息する暇もないまま、翌日はひたすら先を急ぎ走り続けた。 アデレードから約350kmほど北に位置するポート・オーガスタ(Port Augusta)という港町を過ぎれば、ダーウィンまで一直線に続いているメインロード、スチュアート・ハイウェイ(Stuart HWY)へと入る。そこから先は通称アウト・バックと呼ばれる荒野。遥か遠い地平線へと消えて行く道路と、360度ほとんどなにもない風景は、シドニー、メルボルン、アデレードなどの都市では感じることのできない、まさに別世界だ。 アウト・バックを走っていると、僕たちの心についた余分なものがどんどんとそぎ落とされていき、身体が軽くなっていくような感じがする。五感は研ぎ澄まされていき、さまざまなことをクリアーに感じられるようになる。そして、空と大地が圧倒的な力をもって僕たちに迫ってくる・・。
「うおおおおーーー!!オーストラリアああああ!!」 「待ってろーーー!アーネム・ランドーーーー!!」 僕だけでなく、メンバーのみんなも同じ感覚だったのだろう、誰ともなく窓の外に広がる世界にむかって叫んでいた。そのとき僕たちの意識は数千キロという距離を超え、地平線の彼方へと飛んでいた・・。 |トップへ|
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