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Research 林 Jeremy Loop Roots
ヤス(カラキ ヤスオ)|在豪イダキ奏者
ブラブラ日記 2 -キャサリン回想 後編 3-

【長い1日が終わった】

まるで嵐が通り過ぎたかのような、悪夢のような一日がついに幕を閉じた。 感覚ではもう何日もすぎたような気がするけど、キャサリンを出発したのは今朝なのだ。ココズで簡単な朝ごはんをかきこんでいた時、まさかその日中にキャサリンに帰ってくることになるとは思いもしなかった。しかも飛行機で・・。しかも僕はいま救急病棟のベッドに横たわっているのだ。

夕日に似た明かり チンチンと 闇夜に浮かぶ メディカル・フライト
これが僕らが乗ったフライング・ドクター専用機。プロペラ機だけれど国際線のジェット機なんかよりずっと乗り心地はよかった。
ドクターの最終の診断では、「脊髄損傷の可能性があり、明日の診断で症状が重いと判断されればダーウィンの病院に転送されるかもしれない」ということだった。

脊髄損傷・・まさかこのまま半身不随などになってしまうのだろうか・・。

ガッチリと固定されたままの首は回すことができず、視界には病室の白い天井しか見えない。周りでは、救急で運ばれて来た他の患者のうめき声や叫び声、そしてドクターやナースたちの慌しい足音が聞こえ続けていた。

僕はなんともいえない不安に駆られ、何度も足や手の指が動くことを確認しながら「大丈夫、大丈夫」と自分を励ましつづけた。

長谷くんやユウジは大丈夫だっただろうか・・。
Roper Barで別れたGoriくんとのりくんは無事キャサリンにたどり着いただろうか・・。
日本に残してきた恋人や家族は、まさか僕が入院しているとは思っていないだろうな・・。

様々な事に想いをめぐらせながら、不安と痛み、そして疲れから、まるで気を失ったかのように眠った。

翌日の朝、新しいドクターが僕のベッドを訪れ、必要な項目をテキパキと確認していく。 足は動くか、手の指は動くか、背中を押して痛くないか、首の具合は・・などなど。日本なら行われているであろうCTスキャンやMRIなどの特別な医療機器等は一切使われることなく診断は進み、最後にドクターはこう言った。

「よろしい!君は今日退院だ。」

「へっ?」

ドクターはそう告げると、さっさと次の仕事へ行ってしまった。あっけにとられポカーンとしている僕に、ナースがもう一度念を押すように

「よかったわね。あなたは今日退院できるのよ。」と伝えてくれた。

昨日の不安はいったいなんだったのだろうか・・。
ほんまにこれでええの!?と疑いたくなるほど簡単な結末だった。

病室をでてみると待合室には誰もいなかった。 みんなまだ退院できていないのか・・。
ドサッと待合室のイスに倒れこみフーーと深いため息をついた。さて、これからどうするべきか・・。

と、そのときユウジと長谷くんが後ろの扉から現れた。

「あーー!出口さん!!大丈夫だったんですか?ダーウィンに搬送かもしれないっていうから心配してたんですよ!」

「なんと今日退院できてしまってん。2人とも大丈夫やったん?」

「僕らも退院です!Goriさんとのりくんも大丈夫。2人はココズにいますよ。」

大事故の後とは思えない笑顔が 安堵のせいか自然とほころぶ4人
病院の入り口の前で。全員1日で退院できるとは思っていなかった。

すこしするとのりくんが警察の車に乗って現れ、僕たちは全員の退院を喜びあった。そしてGoriくんが待つココズ・バックパッカーズへ向かった。

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