【救急車で川渡り??】 西に傾き始めた太陽が、見事に潰れた愛車ナバロにあたり始めたころ、僕たちは事故現場から1番近いRoper Barという町にひとまず搬送されていた。 正確にいうとRoper Barは町ではない。一言でいうなら「オーストラリア版道の駅」といった感じ。アウトバックでは長距離にわたって町がない区間があるため、ところどころに宿と酒場が一緒になった「道の駅」のようなものがあり、ドライバーはここでしばし酒を飲んだり、食事をしたりして疲れを癒す。 必要最低限のものしかないRoper Barに、診察に必要な設備等があろうはずもなく、ここで簡単な診断を受けてから、さらに大きな町であり今回の僕たちの目的地であったNgukurrコミュニティへと搬送されることになっていた。 出してもらった冷たい水を飲み、痛む体をイスにあずけて、応急手当てをしてもらって、はじめてホッと一息つけたような気がした。
しばらく休憩したあと、再び普通のランドクルーザーにしか見えない「救急車」に乗り込み、あとに残される戦友?の2人としばしの別れを惜しみながらRoper Barを後にした。 しっかりとした診察施設をもつ病院があるNgukurrコミュニティまで約20km。今まで走ってきた数百キロのことを考えればすぐそばのように思えた。しかし、車が走り出すとすぐに、この20kmがどれだけつらい道のりであるかということに気がついた。
「ちょっとドクター、Ngukurrまでずっとこんな道なん??イタタッ!!」 あまりの揺れに耐えかねた僕がドクターに聞いてみると、さらに恐ろしい答えが返ってきた。 「もちろんよ!しかも大きな川を2本渡るわよ!あなたたち覚悟が必要ね(笑)」 「かっ、川って・・。しかも笑顔で・・。」
都市部から遥かに離れたアーネム・ランドのまっただ中の川に橋など架かっているはずもなく、川底には大きな石がゴロンゴロンと転がっていた・・。 川底の石にタイヤが振られるたびに、僕と長谷くんの悲痛な叫び声がブッシュに響いたことはいうまでもない・・・。 |トップへ|
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