【脱出】 ・・・ 「・・・ん・・・で・・」 「出口・・ん・丈・夫で・・?」 「出口さーん!!大丈夫ですかー?」 誰かが僕の名前を呼んだような気がしてフッと我に返った。確かに目を開けたはずなのに真っ暗でなにも見えない・・。一体ここはどこだろう??僕は自分の身になにが起こったのか、まだ理解できないでいた。その時、また誰かが僕の名前を呼ぶのがはっきりと聞こえた・・。 「出口さん!出口さーん!大丈夫ですかー??動けますかー?」 「のり・・くん??」 のりくんの呼ぶ声に、すこしづつ意識がはっきりとしてくる。そういえば、うたた寝から目が覚めたとき叫び声が聞こえて、車がブッシュにつっこんでいって、ハンドルにしがみつくGoriくんが見えて、それから・・・それから・・・。必死に思い出そうとしてみるが、それ以上の記憶はなかった。ただ、僕たちは事故を起こしたんだ、ということはボンヤリと理解しはじめていた。そして僕はまだ事故車のなかに閉じ込められているんだ・・。 「出口さん!!大丈夫ですか??」 「あ、ああ・・大丈夫・・・やと思うけど・・」 「こっちの窓、見えますか?ここから外にでれるんですよ!」 そういわれて無理やり顔を動かしてみると、反対側から外の光が差し込んでいるのが見える。
「あかん・・なんかがひっかかってこれ以上体動かへんわ・・」 「みんなで引っ張り出しますよ!せーーーのっ!」 みんなが僕の体を思い切り引っ張り出した瞬間、着ていたTシャツがビリビリビリッと派手な音をたてて破れていった。どうもTシャツがどこかに引っかかっていただけらしい。 「よ、よかったあああ・・、足でも挟まれてるんちゃうかって心配しましたよお。」 のりくんがホッとしたような表情でそうつぶやいた。僕はのりくんに大丈夫、大丈夫と声をかけながら、他のメンバーを見回してみる。みんな埃と泥にまみれ、まるで戦場から帰ってきた兵士のようなひどい顔をしている。そして辺りを見回すと、そこには想像を超えた惨状が広がっていた。 そこらじゅうに散乱する窓ガラスやミラーなどの車の部品。あたり一面に飛び散った食料や飲料、バックパック。そしてイダキたち・・。足元を見るとボロボロになったカメラが転がっている・・。そして今僕が這い出してきた車は、さらに凄まじい状況になっていた。
僕たちは外に出ることができなかっただろう・・。そこまで考えた時、いままで忘れていた恐怖が一気に襲いかかってきて、僕はその場にペタリと座り込み、しばらくの間動くことができなかった・・。 |トップへ|
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