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Research 林 Jeremy Loop Roots
ヤス(カラキ ヤスオ)|在豪イダキ奏者
ブラブラ日記 -ミンディルビーチ・マーケット編 5-

【信頼関係】

僕はブロルガ(豪州鶴)のソングマン、マークと出会ってから彼といっしょにバスキングすることが多くなった。 僕はマークの歌声が本当に好きだったし、彼の人柄も大好きだった。 彼はいつも緑のリュックでふらふらとマーケットに現れる。 僕が彼を見つけ声をかけるといつもうれしそうな笑顔で迎えてくれた。

「さあブラザー、今日もブロルガだよ。この前の歌は覚えているかい? それの(リズムが)速いほうからだ」

ユージ&マーク

ミンディルビーチマーケットでマークと一緒に吹くユウジ

彼はいつもブロルガを歌った。というかブロルガの歌以外は一切歌わなかった。そしていつもブロルガがどれだけ大切な鳥であるのかを話してくれた。彼はブロルガ・ソングを歌うことに誇りを持っていたのだと思う。 そしてその歌は何度聞いても決して飽きることはなかったし、 それどころか聞けば聞くほど深く僕の心に響いていった。

そしていつしかマークと僕の息も合うようになっていき、彼は僕をパートナーとして認めてくれるようになった。

「わしの歌の、ブロルガの歌のディジュリドゥ・パートナーなんじゃ」

そう通りかかる人たちに紹介してくれた。別のアボリジナルの人が「俺にディジュリドゥを吹かせてみろ」と言ってくることもしばしばあったのだけれど、彼はいつも「もうパートナーがいるから必要ないよ」と断ってくれていた。

僕はそんなマークといて不思議な気持ちが沸き起こってくるのを感じていた。それは「マークのブロルガの歌のために吹きたい」という気持ちだった。

それまで僕はディジュリドゥを吹かせてくれるなら別に誰と吹いていてもよかった。

ミンディルビーチでもアボリジナルのソングマンがいれば貪欲に声をかけていた。それは自分の演奏テクニックの向上や情報の収集など、つねに自分中心だったと思う。だけどマークに対しての気持ちはベクトルがすこし違っていた。そのことに気付いてから僕の音はすこし変わったように思う。いま思えばこの気持ちの変化はとても重要だったのかもしれない。彼との間に生まれた信頼関係が新しい扉を開いてくれたのだ。マークに会っていなければ今の僕はなかったかもしれない。

ノンアボリジナルの日本人の僕をパートナーとして認め、いつも真剣に歌を教えてくれたマークに感謝。

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