【サプライズ!】 彼は自分が吹き終わると「つぎはお前たちの番だ!」と僕たちを煽った。最初にディジュリドゥを受けとったのはGoriくん。「よし、あれをやろう!」と合図を送る。実は僕たちはこの時のためにちょっとしたサプライズを準備していたのだ。 Goriくんの音に合わせて僕たちが歌い始めると、Nickyはすぐにそれがなにか気がついたようだ。 「バッファロー・ソング!!」 そう、僕たちが歌ったのはバッファロー・ソング。彼らが今でも歌い続けている、Belyuenではとてもポピュラーな歌だ。Alice M. Moile教授が60年代に録音した「Songs From the Northern Territory vol.1」の13曲目にこの歌が収録されている。僕にとっては初めてNickyと出会ったときに演奏してもらった思い出の曲でもある。ゆったりと流れるメロディがとてもきれいで、情緒のあるとてもいい歌だ。僕たちはこの旅の間、Nickyたちを驚かそうとすこしづつ練習を重ねていたのだ。 「そう、バッファローだ!バッファローが海を渡っていくんだ」 彼は僕たちと一緒に歌いながら歌詞の内容を教えてくれた。膝を打つ手にもだんだん力がはいり、そして曲の最後にはお決まりの首を切るゼスチャー。これは彼らがよく使うフィニッシュの合図だ。そして・・・決まった!このサプライズにはみんなとても喜んでくれたようだった。 次にディジュリドゥを受け取ったのは、去年Belyuenの人々から「Kenbi-Man」のニックネームを授かったノン君。披露したのは前日の夜Mitchinの家で練習していたRak Badjalarrの一曲目だ。時間が経つにつれて集まっていたみんなもどんどん盛り上がり始る。
ソングマンであるIan Bilbilがクラップスティックの代わりに叩いているのは、お決まりのVBの缶。VBとはオーストラリアならどこでも見かける有名なビールで、彼らはそれが大好きだ。空になった缶のぶつかり合う、カホン、カホン、という軽い音にも味があっていい。Ian Bilbilの歌は言語グループが違うのかNickyたちが歌うものとはすこし違う響きをもっていておもしろい。もちろん彼はすばらしいディジュリドゥ奏者であり、得意のブロルガ(豪州鶴)の曲を豪快に披露してくれた。演奏が終わるとみんな「うわーっ」と拍手で盛り上げる。久しぶりに感じる体の奥底から湧き上がる「楽しい!」という気持ち。 僕は旅の最後にこのすばらしい時間を持てたことに感謝していた |トップへ|
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